服部孝洋(東京大学)

服部孝洋(東京大学)

記事一覧

デリバティブを勉強したい人向けのガイダンス

今、大学で講義している金融論がようやく債券理論に入りつつあり、折り返し地点に入るところです。講義の回数に制約があるため、基礎から中級レベルのデリバティブ知識を求…

本日(2024/5/23)発生した日銀オペの未達

今回も自分自身への簡単なメモですが、本日は日銀のオペが未達というかなり珍しいイベントがおきました。QQE以降初ということです。 日銀買い入れオペ、1年超3年以下が札…

財務省ファイナンス「齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(後編)」

本日、「齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(後編)」というタイトルで、財務省「ファイナンス」に文章を掲載しています。下記のリンクより読むこと…

通貨暴落(危機)の定義に関するメモ

最近、為替が大きく変動していて、通貨の暴落という表現が使われることが少なくありません。有名な書籍として、ロゴフとラインハートの「国家は破綻する」では、「数値で定…

本日(2024/5/13)実施された日銀によるオペ減額のメモ

日銀のオペが減額されて本日話題になりました。今回については既にたくさん報道も出ており、既知の内容ばかりだとおもいますが、自分自身への備忘録としてメモを書いておき…

日銀の金融政策決定会合(MPM)の基礎③:政府との関係

日銀の金融政策決定会合には政府関係者が参加しています。財務省の副大臣と内閣府の副大臣が1名ずつ、政府代表者として参加しています(日銀法では必要に応じて参加となっ…

外為市場における取引日に関するメモ:5月2日の介入との関係

先週は為替介入が日本時間の5月2日の早朝(未明)に実施されたということで市場で大きな話題になりましたが、その際、早朝に介入が疑われ、その日の夕方には為替介入の有無…

5月2日の朝に3.5兆円程度の為替介入か

今回も介入関係に関する簡単なメモです(これも私の備忘録です)。下記に記載してあるとおり、5月2日の朝に大きく円高になり一時、153円台になるということがありました。 …

2024年4月29日における為替介入:5兆円規模か(ラフな推定)

昨日、介入の規模について簡単にメモを記載しましたが、今日結果が発表されたので、簡単にメモをしておきます。 (2024年4月29日)為替介入規模の推定に関するメモ|服部…

(2024年4月29日)為替介入規模の推定に関するメモ

本日、為替が160円にタッチしてから大きく円高へ動き、為替介入があったのでは、と指摘されています。神田財務官は「ノーコメント」としており、介入があったとすれば、い…

本日(2024/4/26)の決定会合のメモ:公表物のシンプル化(アップデイト)

今回も注目された決定会合であったため、メモを記載しておきます。必要に応じて、加筆修正しますが、今回のポイントは、日銀による公表物が圧倒的にシンプル化したという点…

「オルカン」という表現が流行した時期や理由に関するメモ

今回は自分自身への簡単なメモです。今、「インデックス・ファンド革命」という書籍の書評を書いていて、いわゆる「オルカン」という表現がいつから普及しはじめたのかな、…

財務省ファイナンス「齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(前編)」

本日、「齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(前編)」というタイトルで、財務省「ファイナンス」に文章を掲載しています。下記のリンクより読むこと…

カバーなし金利平価で今の円安を説明できるか

昨日、カバー付き金利平価とカバーなし金利平価について説明しましたが、その簡単な続きです。 フォワードによる理論価格とカバーなし金利平価のメモ|服部孝洋(東京大学…

フォワードによる理論価格とカバーなし金利平価のメモ

昨日、下記のツイートについて、私の周りで少し話題になりました。 私は上記を一読した時には、「理論値とも解釈できるのかも」と思いました。というのも、「カバーなし金…

基本ポートフォリオにおける為替リスクの取り扱い:GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ⑤

今回もGPIFの基本ポートフォリオについての簡単なメモです。今回は、GPIFにおける為替リスクの取り扱いですが、GPIFは(私の理解では)基本的に為替リスクをとる、というス…

デリバティブを勉強したい人向けのガイダンス

今、大学で講義している金融論がようやく債券理論に入りつつあり、折り返し地点に入るところです。講義の回数に制約があるため、基礎から中級レベルのデリバティブ知識を求める方向けに簡単なメモを買いておこうとおもいます。

デリバティブとは金融派生商品であり、先物・フォワード・スワップ・オプションで構成されます。私が大学院生のころはオプションばかり勉強していたのですが、実際の実務経験を経て、学生時代はバラン

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本日(2024/5/23)発生した日銀オペの未達

今回も自分自身への簡単なメモですが、本日は日銀のオペが未達というかなり珍しいイベントがおきました。QQE以降初ということです。
日銀買い入れオペ、1年超3年以下が札割れ-異次元緩和以降で初 - Bloomberg

本日(2024/5/23)の日銀のオペでは、日銀が市場参加者から国債を買うのですが、現在、下記のようにオファーされています。今回問題となった1-3年の国債については、3750億円の購入

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財務省ファイナンス「齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(後編)」

本日、「齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(後編)」というタイトルで、財務省「ファイナンス」に文章を掲載しています。下記のリンクより読むことができます。
202405g.pdf (mof.go.jp)

我が国における国債制度を理解しようとするにあたり、特別会計についての理解が必要になることが少なくありません。実際、「特別会計ガイドブック」を除き、入門書もないということで理解に

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通貨暴落(危機)の定義に関するメモ

最近、為替が大きく変動していて、通貨の暴落という表現が使われることが少なくありません。有名な書籍として、ロゴフとラインハートの「国家は破綻する」では、「数値で定義できる危機」の中に、インフレ危機、通貨暴落、通貨の品位低下などを挙げています。

ロゴフとラインハートの書籍では、下記のように、ドルなどの基軸通貨に対して、通貨が年15%を超えて下落した場合を通貨暴落として定義しています(p.35)。

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本日(2024/5/13)実施された日銀によるオペ減額のメモ

日銀のオペが減額されて本日話題になりました。今回については既にたくさん報道も出ており、既知の内容ばかりだとおもいますが、自分自身への備忘録としてメモを書いておきます(今はどこにでも書いてあるようにおもうのですが、こういうメモは例えば1年後にこのイベントを思い出すのに役に立つのです)。

日銀による国債購入(オペ)については、いわゆる「オペ紙」を通じて、その購入のタイミングやレンジが示されます(オペ

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日銀の金融政策決定会合(MPM)の基礎③:政府との関係

日銀の金融政策決定会合には政府関係者が参加しています。財務省の副大臣と内閣府の副大臣が1名ずつ、政府代表者として参加しています(日銀法では必要に応じて参加となっていますが、実態としては恒常的に参加しています)。

典型的には、政府関係者は決定会合に出て意見を表明しています。その内容は、決定会合当日には外部からはわかりませんが、決定会合から1週間ほどして公表される「主な意見」でわかることになります(

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外為市場における取引日に関するメモ:5月2日の介入との関係

先週は為替介入が日本時間の5月2日の早朝(未明)に実施されたということで市場で大きな話題になりましたが、その際、早朝に介入が疑われ、その日の夕方には為替介入の有無・その規模が算出されました。そのメモは下記で記載しました。
5月2日の朝に3.5兆円程度の為替介入か|服部孝洋(東京大学) (note.com)

上記のnoteで記載したロジックは、2営業日後に、日銀当座の財政等要因に反映されることを利

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5月2日の朝に3.5兆円程度の為替介入か

今回も介入関係に関する簡単なメモです(これも私の備忘録です)。下記に記載してあるとおり、5月2日の朝に大きく円高になり一時、153円台になるということがありました。

今回の介入は、日本時間の5月2日の早朝(未明)に実施したようですが、5月1日の介入取引の決済日にあたり、この影響は、この2営業日後である5月7日の資金需給(財政要因)に反映されます。今回の経験でわかったのですが、日本時間の深夜から朝

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2024年4月29日における為替介入:5兆円規模か(ラフな推定)

昨日、介入の規模について簡単にメモを記載しましたが、今日結果が発表されたので、簡単にメモをしておきます。

(2024年4月29日)為替介入規模の推定に関するメモ|服部孝洋(東京大学) (note.com)

下記の通り、昨日(4月29日)、為替が大きく円高に動き、為替介入がなされたという議論がなされていました。

まず、2024年5月1日(介入が疑われる4月29日の2営業日後)について、資金需給

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(2024年4月29日)為替介入規模の推定に関するメモ

本日、為替が160円にタッチしてから大きく円高へ動き、為替介入があったのでは、と指摘されています。神田財務官は「ノーコメント」としており、介入があったとすれば、いわゆる覆面介入だとおもいます。

以前、下記にも記載しましたが、介入の有無や金額については財務省が事後的にアナウンスします。そのため、いずれは、今日介入があったかどうかは明らかになります。それが明らかにされるタイミングもすでに財務省のウェ

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本日(2024/4/26)の決定会合のメモ:公表物のシンプル化(アップデイト)

今回も注目された決定会合であったため、メモを記載しておきます。必要に応じて、加筆修正しますが、今回のポイントは、日銀による公表物が圧倒的にシンプル化したという点だとおもいます。主な公表内容は下記の通りです。

時事通信によるQTの記事があったため、脚注などの記載が変わったり、あるいは、オペ紙が変わるのだと勝手に想像(妄想?)していました。

今回の公表分をみて、あまりにシンプル化し、驚いたのは私だ

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「オルカン」という表現が流行した時期や理由に関するメモ

今回は自分自身への簡単なメモです。今、「インデックス・ファンド革命」という書籍の書評を書いていて、いわゆる「オルカン」という表現がいつから普及しはじめたのかな、と感じました(気づいたら一気に流行していたという印象です)。

「オルカン」については、「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」というインデックスをトラックするインデックス・ファンドを想像されるかもしれません。もっとも、「オ

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財務省ファイナンス「齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(前編)」

本日、「齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(前編)」というタイトルで、財務省「ファイナンス」に文章を掲載しています。下記のリンクより読むことができいます。
202404g.pdf (mof.go.jp)

我が国における国債制度を理解しようとするにあたり、特別会計についての理解が必要になることが少なくありません。もっとも、特別会計は複雑であり、独力での理解が困難だと指摘されるこ

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カバーなし金利平価で今の円安を説明できるか

昨日、カバー付き金利平価とカバーなし金利平価について説明しましたが、その簡単な続きです。
フォワードによる理論価格とカバーなし金利平価のメモ|服部孝洋(東京大学) (note.com)

たまに、今の円安をカバーなし金利平価で説明する人がいますが、個人的には困難であると思っています。まず、多くの国際金融のテキストでは、カバーなし金利平価は成立していないと説明されます。例えば、手元にある教科書だと、

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フォワードによる理論価格とカバーなし金利平価のメモ

昨日、下記のツイートについて、私の周りで少し話題になりました。

私は上記を一読した時には、「理論値とも解釈できるのかも」と思いました。というのも、「カバーなし金利平価」(Uncovered Interest Parity, UIP)という「理論」によれば、一年後の為替レートは、フォワード価格になると期待されると解釈することもできます。どの国際金融のテキストをみてもらってもよいですが、例えば、永易

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基本ポートフォリオにおける為替リスクの取り扱い:GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ⑤

今回もGPIFの基本ポートフォリオについての簡単なメモです。今回は、GPIFにおける為替リスクの取り扱いですが、GPIFは(私の理解では)基本的に為替リスクをとる、というスタンスで運用を行っています。このことはGPIFの説明でも明言しており、例えば、youtubeで植田CIOが下記のスライドを用いており、「基本的には為替ヘッジなし」と説明しています。

基本ポートフォリオの計算ロジックは下記にも記

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