(2024年4月29日)為替介入規模の推定に関するメモ

本日、為替が160円にタッチしてから大きく円高へ動き、為替介入があったのでは、と指摘されています。神田財務官は「ノーコメント」としており、介入があったとすれば、いわゆる覆面介入だとおもいます。

以前、下記にも記載しましたが、介入の有無や金額については財務省が事後的にアナウンスします。そのため、いずれは、今日介入があったかどうかは明らかになります。それが明らかにされるタイミングもすでに財務省のウェブサイトにより公表されており、下記に記載されている通り、2024年5月31日の19時予定です(これは月次ベースの公表であり、いずれ、日次ベースの公表もなされます)。

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/feio/index.html

もっとも、市場参加者は為替介入の有無や介入規模をすぐに知りたいことから、その規模を推定しようとします。このプロセスは下記にも記載しましたが、次のようなプロセスになります。
外為特会の基礎⑤:為替介入規模の推定|服部孝洋(東京大学) (note.com)

① まず、為替介入が実施された2営業日後の資金需給予測値を用います(資金需給予測値は短資会社が定期的に出しています。こちらには介入の影響が反映されていない点に注意してください)。
② 次に、介入が実施された2営業日後に、日銀が公表する「日銀当座預金残高要因と金融調整」による「財政等要因」を用います(こちらには為替介入の効果が反映されている点に注意してください)。
③ ①と②の差分を使って為替介入の効果を得る。

すなわち、介入がなされた2営業日後における
為替介入の規模
≒日銀公表分の財政等要因-短資会社による財政等要因の予測
で推定するということです。

現時点で、すでに2営業日後に相当する5月1日における「財政等要因」の予測をある短資会社が出しており、おおよそマイナス2兆円程度ということです。

注意すべき点は、2営業日後の「財政等要因」に反映されるわけですが、現時点(4月29日時点)で、1営業日後の予測(2024年4月30日)が日銀から公表されています。したがって、1営業日後の明日(2024年4月30日)には、(介入が疑われる日から2営業日後に相当する)5月1日の財政等要因が日銀より公表され、それを用いて推定するということになります。

https://www3.boj.or.jp/market/jp/menu.htm

すなわち、下記のような整理になります。

日銀による「日銀当座預金増減要因と金融調節(毎営業日更新)」についても発表のタイミングが公表されています。下記の通り、明日の午後7時頃(明日は月末)、5月1日における「財政等要因」が公表されます。

https://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/juq/index.htm#p01


なお、昨年は、介入があると指摘されながらも、介入が無かったこともありました。その内容は下記を参照してください(今回もこのようにメモを書いている目的は、今日あったこともいずれ忘れてしまうので、自分自身へのメモとして記載しています。市場参加者は将来の予測は頑張って書きますが、事後的な記載は少ないですし、その資料などはいずれさかのぼれなくなります。したがって、かつて何があったかがさかのぼれなくなるということがありがちです)。
2023年10月3日における為替介入の検証(介入なし?)|服部孝洋(東京大学) (note.com)

今回は簡単なメモですが、また必要に応じて加筆修正します。なお、今回の「円高→介入」というのはパターンは、(介入がなされていたとしたら)2022年9月の介入のパターンと同じです。すなわち、日銀決定会合があり、その後円安が進み、介入というパターンです。2024年4月の決定会合では、日銀が為替を考慮しないというメッセージが総裁会見で強く出された印象ですが、その内容については下記を参照してください。
本日(2024/4/26)の決定会合のメモ:公表物のシンプル化(アップデイト)|服部孝洋(東京大学) (note.com)

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