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#ホラー小説が好き

ホラー小説への愛や、好きな作品・作家を語ってください!

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幽世電車

 智臣は走っていた。  真夏のアスファルトの上を、息を切らし、頬を伝って流れる汗を拭いながら、線路沿いの道をただひたすら。  ぎらつく太陽の光が追い立てるように智臣の背を焼く。その熱が背中を中心に全身を走り、体温を、それどころか血の温度さえぐつぐつと煮立つように高めている気がした。  制服のスラックスとワイシャツは走るには窮屈だ。智臣は第二ボタンまでシャツのボタンを外し、息を吐いた。  高校の数学の授業を抜け出してきて二十分、走り通しだった。中学時代は陸上部だったとはいえ、高

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職場に復帰する直前に読んでいた本

こんにちは、ぱんだごろごろです。 お蔭様で、職場復帰しました。 仕事を再開しました 先週の月曜日に、職務復帰可能の診断書を整形外科医院で書いてもらい、水曜日に産業医面談を受けました。 その後、係長に挨拶をしに行き、4月の残りのシフトを決めました。 7週間(約2ヶ月)まるまる休んでいたので、業務内容をすっかり忘れていたらどうしよう。 おそるおそる職場に入りましたが、幸いなことに、仕事の手順は身体が覚えていました。 勝手に身体が動くので、それにつられて自分が一つひとつ仕

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掌編小説 | 白い靴

 白い靴を履いて出かけると、どこまでも行けるって噂だよ。 だけどね、そんな怪しい説を本気で信じるやつなんていないんじゃないか?俺以外には。だはは。  いやね、白い靴なんて履くのは本当に久しぶり。たぶん、ファーストシューズ以来じゃないかな。 それだって、写真に一枚残っているだけだし、嫌がって大あばれしていたようだから、履いていたかも定かじゃないよ。 だから、きっと、これこそがマイファーストホワイトシューズ。合ってる?  でね、ファーストシューズとホワイトシューズと聞いて思い

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掌編小説 | 家族

 インターホンのカメラに映らないように顔を隠した。 「だれ?」と姉が訝しむ。 「わたし」とわたし。 「くだらないことやっていないで、上がってらっしゃい」  勝手に上がれないからインターホンを押したんじゃないか、とつぶやきながらエントランスのドアを通過した。  姉が住むのはマンションの三階フロアだ。廊下を歩きながら、ひとつひとつ、家の表札を読む。 「しばた…かなもり…にしだ…キム…さかもと……」  姉の苗字がなんだったかわからなくなってきた。姉は三回も離婚と再婚を繰り返している

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再録:重ね夢

■まえがき今回は1月に公開した「重ね夢」の再録になります。 こちらの作品は私も気に入っている作品で、書き慣れない時代物の割にはよく書けたかなあと思っています。 フォロワーさんの中でもこちらを好きな作品に挙げてくださる方がいたりして、最初の頃の作品だけに嬉しかったりします。 初期の頃だけに、きっとまだ読んだことがない方もいらっしゃるだろうなと思いまして、今回再録でアップさせていただきました。 繰り返される悪夢の中に堕とされた経験はおありですか? もしおありの方がいらっしゃれ

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グルーブ・ドレジング

 第三次世界大戦は阻止された。だがそれは、けっして人類が望んだ方法によってではなかった。  大戦の火蓋が切って落とされようとしたまさにそのとき、世界各国の空に竜が現れて、都市を、街を焼き払った。それは白銀に輝く、飛行機ほどもある竜だった。その竜が無数に、夕刻の雁の群れのように空を悠然と泳ぎながら、口から熱線を放射して世界を焼き尽くしたのだ。  各国は大戦のために備えていた軍備を竜に向けた。皮肉なことに、竜という脅威が大戦を止めただけではなく、国同士の繋がりを強化した。団結した

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【読書コラム】平和に見えて、最後の最後でゾクっとくるタイプのホラーが好き! - 『脳髄工場』小林泰三(著)

 わたしは気になる本があったら、とりあえず買ってしまう人間なので、積読が尋常ならざることになっている。平均して3日で1冊読んでいるけれど、2日に1冊買っているので、どう頑張っても増えていく一方。  しかも、積読とは名ばかり。ポンッ、ポンッとそこら辺に放っているので、さながら我が家は坂口安吾の部屋みたいになっている。  だから、次はなにを読もうかなぁと探すとき、地面をガサガサ掘り起こすような感覚で、フィーリングの合う一冊を見つけたときは世紀の大発見をしたかのような感動がある

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絵描き、ソフトなホラー小説?に挑んでみる

ずっとホラーが書きたかった。 でも、いつもほんのちょっぴりホラーじみた背景をちらりと入れるくらいで、ホラーとは呼べない。 たとえば……前に書いたストーカー男の話 ↓↓↓ とか。 今回のお話は、noteかアルフォポリスか悩んだけれど、連載であまり日を開けずに出すことに挑戦しようと思って、アルファにしました。 (絵を描かなくてはならないのに、そういう時に限って他の創作をしたくなる悪い癖汗) ストーリーの冒頭を考えついただけで、思い切りの見切り発進(汗) 書きながら考えなが

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蟹壺

 バスを降りた先に広がっていたのは、どこか懐かしさを感じる田舎道だった。  閉じるバスの扉を振り返ったときに、運転手の袖口に数珠のようなものが覗いているのが象徴的で、僕は全身の毛がぞわっと瞬時に逆立った気がした。  バスは終点の先も道を進んでいき、やがて山間に消えていった。  残された僕はリュックを背負い直すと、結んだカラビナの束がかちゃかちゃと鳴った。  一車線しかなくて、道の両側には田んぼが山の麓まで続いて見える。バス停の錆びて変形したプレートの曲がり具合さえ、ノスタルジ

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降霊の箱庭 ~序~

こっくりさん、こっくりさん。 どうぞおいでください。 とある中学校でその日、秘密の儀式が行われていた。 儀式というのは大抵、人目を忍んで開かれるものだ。この小規模な儀式も例に漏れず、校舎の最上階・最奥にある空き教室にて開かれていた。 おまけに時は放課後。大多数の生徒は部活動に向かい、そうでない生徒も帰路についた後だ。 カキーン、と。 野球部のバッティングの音が、グラウンドの方角から聞こえてくる。 プァーン、と。 吹奏楽部の合奏の音が、反対側の校舎の中で響いている。 妙

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【読書】 そんなつもりは・・が地獄の入り口。 ~ 懲戒の部屋 自選ホラー傑作集1 筒井康隆 ~

筒井先生の作品は好きで、高校から20代前半くらいにハマって短編中心に色々と読んでいました。 それはそれはグロいものからファンタジーまで幅広い作品。 「宇宙衛生博覧会」は、表題の「衛生」がそれはそれは・・だったと記憶しています。 風刺が効いているお話が多く、今のご時世だと厳しい表現が多いかもしれません。 それが醍醐味なのですが(笑) こちらの短編集は、筒井先生の自選が10篇収められています。 表題通りに「懲戒」されてしまう人々は、ほんのちょっとだけふざけたばっかりに

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もとい #SS

 塾の古文の横山先生は、しゃべる時にしばしば「もとい」という言葉をつける。でも、なんだか変なのだ。 「では先週の続き。サ行変格活用は、もとい、せ、し、す、する、すれ、せよ」 「ひさかたの、は光にかかる枕詞です。もとい、ひさかたの光のどけき春の日に……」  「もとい」を辞書で引くと「言い間違えて訂正する時に発する語」とある。つまり、 「方丈記の作者は吉田兼好、もとい、鴨長明」 「源氏物語の作者は清少納言、もとい、紫式部」  この使い方が正しいのだ。先生のもといは全然関係ないと

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君に幸あれ 第6話 朴訥が故に

君に幸あれ 第6話 朴訥が故に 第5話はこちら 「あのねぇ! あんた社員なんでしょ?そんな基本的な事も出来なくてどうすんのよ? いい加減成長したら? 全く進歩の欠片もないんだから! あぁ!ちょっと休み取っただけで、こんなになるんなら、あたしゃ一生休めないんですけど!」 奈央が店に入るや否や、ヒステリックな女性の声が店内に響き渡った。 店内の他の客もその声の大きさに、一瞬ざわついたが、皆、我関せずで、それぞれの買い物カゴに目を戻す。 奈央はよもやと思い、その怒声の

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青写真2 #青写真 #シロクマ文芸部 #小説

青写真を表示したガラケー。 ピンクのキラキラしたデコレーションと ガラケーよりも大きいぬいぐるみ。 画面には『青池』が写っていた。 元カレと行った時、 天気が凄く良くて 綺麗に写っている青池は、 透けて池の底までハッキリと見えた。 数年後、夫と『青池』に 行った時は 天気が悪くグレー色の沼だった。 まるで、今後の事を 案じているかのように思った。 自分の下腹部を撫でる。 新しい生命の誕生。 夫に子育てが出来るのか 不安だった。 グレー色の青池のように 私の心もどんより

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読むのは、ファッションとミステリー

こんにちは、ぱんだごろごろです。 大好きnoterさんのすず太郎さんからすすめて頂いた、内藤了先生の『猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』シリーズ全11冊を、読み切りました。 1冊目の『ON』を読んだのが4月17日で、間に並行して色々な本を読みながら、11冊目の『BURN(下)』を読了したのが5月9日。 二日に一冊の割合いで読んでいました。 いやぁ、もう、面白かったですね。 ジャンルはサスペンスホラーのようですが、そんなに怖いわけではありません。 少々グロいのですが、だんだ

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降霊の箱庭 ~第五話~

<前話> また夜がやって来た。 ベッドの上で布団にくるまって、鈴木ゆうはじっと耐えていた。 あの日……空き教室でこっくりさんをした日から、一体何日が経ったのだろう。学校に行かず家に引き籠りっぱなしで、日付や曜日感覚はとうに失われていた。 いやそもそも、そんなことを気にする余裕など、今のゆうには全くなかった。 二つの「恐怖」に苛まれていたからだ。 一つは、非難されるかもしれない恐怖。 奈々絵の通夜にも葬式にも、結局出席することができなかった。できるはずがない。奈々絵の死

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降霊の箱庭 ~第九話~

<前話> ガシャァン!! という大きな音が体育館の方から聞こえてきたのは、達季がちょうど四時間目の授業を受けている時だった。 次いで、大勢のざわめきや悲鳴が、かすかに。 「何だ?」 隣の席の間宮颯志はじめ、音に気付いた何人もが窓の外に目をやる。 授業をしていた英語担当の教師は、様子を確認するため教室から出ていき、しばしの後に深刻そうな表情で戻ってきた。 「皆さん。急ですが、本日の授業は四時間目で終わりです」 えっ、と数名から声が上がる。 「給食の時間は設けますが、昼休みを帰

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生きたまま背骨を握られる

 怖い話を書くからか、先週から体調を崩しています。  スルーしようとしていたのに、創作大賞の応募が始まったと聞いたら、話を考えるようになりました。今までなら、書き始める事からしていたと思うのです。それから筋を考えて、筋を思いつかないから、また書いて、どうしようもなくなって途中でやめてしまう。  そのやり方をやめて、今回はクライマックスとエンディングから考えたのです。そしたら体調を崩しました。熱が出るわけでなく、寒気と倦怠感が身にまとわりついて、ふらふらしているのです。  怖

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降霊の箱庭 ~終~

<前話> 一時間が経過して、約束通り空き教室にやって来た神山は、達季たち三人が教室のあちこちを調べているのを見て、目を点にした。 「あれ? どんな大きなことをしでかすかと思ったら、大掃除? アタシはもっとこう、能力バチバチのバトルみたいなのを期待してたんだけど」 「もう終わりましたよ」 まどかが呆れた調子で言った。 「それより先生も手伝ってください。一並君曰く、この教室のどこかに、大事な手紙が隠されてるそうです」 「え~……?」 何が何やらといった様子の神山だが、危ないこと

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ザ・恐怖(ホラーとは?) / 20240512sun(400字)

ホラー小説は、恐怖を主題として、読者に恐怖感を与えるため(恐がらせるため)に書かれた小説。恐怖小説あるいは怪奇小説などとも呼ぶ。 書き始めのころ「地下に繋がれる裸の女は時間になると陰部に覚醒剤を打たれる」女の地獄の極限を描いた。批評家の先生に「これは寓話だ。ジャンル小説を書きたいのか?」と言われた。後に冷静になれば「ぼく(筆者)が勝手に思いこんだザ・女の恐怖」だった。 恐怖は読者(あるいはキャラ)によって違う。ADHDで同僚の会話が恐怖だったり、子どもで親がネグレクトで継

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