若林明良

わかばやしあきら と読みます。

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  • NHK俳句・短歌・文芸選評、💢没った💢エッセイ

    NHK俳句・短歌・文芸選評投稿作や、没になった300字のエッセイです。 自分の記事の中ではそこそこ人気です。

  • 創作短編・短歌・俳句・川柳・詩

    恋愛あり、ナンヤコレ?っていうのもあり。短めです。

  • エッセイの数々

    日々思うことのつれづれ。短歌・俳句もたまに入ってます。

  • 140字小説

    140字の小説を3編づつ掲載しています。

  • 音楽に寄せる愛シリーズ

    音楽に寄せる愛を、短歌・俳句・エッセイなどで綴りました。

最近の記事

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余白の神様 #短編小説

 夏。僕は「豚の警察」という本をお母さんに買ってもらった。読んでいて、僕はだんだん腹が立ってきた。話のすじ自体は面白いのだが、余白があまりにも多すぎるのだ。上下、左右、そして段落の間の余白が。 「なんだよ、これ。1760円もするけど、ぼったくりじゃん。余白をぎゅっと縮めたら、半分になるよ。そしたら880円で買えるのに」  僕は本の最後に印刷されている出版社の電話番号に電話した。 「はい、夏耳社でございます」 「こんにちは。中学一年の近藤貴志といいます。あの。『豚の警察

    • こんな選択

      観光ガイドのひとりが菖蒲の花束を持ってやってきました。 庭で咲いたから飾って、と。 観光案内所には花瓶を置く場所があります。 さっそく先輩が活け、その場所に置きました。 きれいに活けられた菖蒲をみてガイドは満足し、活動に出かけました。 午後になり、所長の奥様がみえました。 薔薇の花束を抱えています。 庭で咲いたから飾って、と。 奥様は急いでいたかで菖蒲が目に入らなかったのでしょう。 花瓶を置く場所はそこしかなく、複数の花瓶を置くほどの広さはありません。 そこは誰からもよく

      • 心づけ #SS #公募ガイド選外佳作

        本日発表の「小説でもどうぞ」選外佳作いただきました。 公募ガイド様、スタッフ様ありがとうございます! 三ヶ月前も載せてもらったし、どうしたん自分! 採ってはいただけなかったものの、高橋源一郎氏に読んでいただけて光栄です。 よろしければ、読んでやってくださいませ🙇 掲載作品を全部読みました。最優秀作、深見将さん「Y字路」は高橋氏が仰るように超傑作です。 皆さんそうですけど、まず文章がめちゃくちゃ巧い。改行が少なくて画面が黒っぽい作品は自分がオコサマのせいで笑、読みにくいと

        • NHK文芸選評への投稿作・5月

          5/4 短歌 選者:東直子先生 兼題:お茶 カタカタと小さくゆれる席いつも本と紅茶と小さなノート ウーロン茶で割ると何でも飲めそうなまるでつまらぬ貴方の愚痴も 微細丁寧よしと限らず目の粗い茶漉しのおかげで茶柱の立つ 手作りの伯母が淹れたるどくだみ茶その下に埋めた記憶の銭亀 「お茶しよう」とお店のなかで向かい合いふたり無言でゆるしあってた 千葉県 田村ひよ路さん どんなに嫌いな相手でも喧嘩してても、直接会って言葉をかわせば仲良くなれるものだと読んだことがあります。ほんとう~

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        記事

          NHK俳句への投稿作・5月号

          選者:夏井いつき先生 兼題「蛙」 藪医者の触診了る昼蛙 何もなき日々の幸福遠蛙 雨明けの朝や蛙の死のにほひ 夕蛙あしたになれば遠き街 京都府 草夕感じさん(5月号) 句の前になんですかこの変な俳号は笑。「くさゆうかんじ」さん? 雑草について調べた後ばーっとテキスト見てて、草のイメージが残ったままだったので目につきました。以前から思ってましたが組長選句欄はおもしろい俳号が多いですね。川柳の人のような。 白状しますが作品の内容よりもまず筆名の変さに惹かれて選を入れたことがあり

          NHK俳句への投稿作・5月号

          投稿規定違反の扱いについて

          3月のNHK俳句全国俳句大会の特選で、残念ながら違反があったとのこと。全国大会のNHKニュースに以下の記載がありました。 3句目は掲載されてませんでしたが、燕の句ですよね。ド直球のそうや!と言いたくなる内容で、好きでした・・・。載せたかったけどNHKが載せてないので、やめます。作者はご高齢の方。つい、うっかりでやってしまわれたのでしょうか。 NHK全国俳句大会は、俳句やってる人にとっては盆と正月以上に大事なイベントです(言い過ぎ?)。Xでみんながピンクの封筒来た~! って

          投稿規定違反の扱いについて

          母のエプロン

           中学の家庭科でエプロンを作らされた。私がミシンを動かすと必ず糸が絡まったりと碌な事がない。だから何もしないで家庭科の時間はずっと友達としゃべったり、まじめに縫ってる人にしゃべりかけたりして邪魔していた。みんなごめんなさい。さすがに期限ぎりぎりになり、若林さんぜんぜん進んでませんねと先生にせっつかれた。  仕方なく母のミシンを借りて適当に作った。母は洋裁の内職をしている。エプロンをひとめ見て、縫い目を全てリッパーで解いた。こんなひどい出来を出す訳にはいかないと言う。そうだよな

          母のエプロン

          柿本人麻呂/岡井隆の説

          人麻呂は歌人集団あかあかと裏戸を照らす岡井の説は 「エッセイで楽しむ日本の歴史・上/文藝春秋」を読んでいて、岡井隆の稿「歌人団・柿本一族の長」に衝撃を受けました。柿本人麻呂は一人の人間ではなく歌人集団であっただろうと言うのです。略ばかりで申し訳ありませんが、引用します。 たしかに、同時代のたとえば山上憶良は貧乏人や弱者の味方、大伴家持は万葉集編者かつ左遷される物悲しい役人、と人物像を浮かべやすいのに比べ、柿本人麻呂は「歌がものすごく巧い宮廷歌人だった」らしいが、その生い立

          柿本人麻呂/岡井隆の説

          140字小説/広

          ジャンボで1億当たった。即ボロ1Rから1DKに引っ越した。運ぶのは机とPCと座布団だけ。買替えようと思ったが貧乏性が発動した。それに俺の手垢のついたこの机と尻の形に凹んだこの座布団でないと思考が働かないのだ。仕事は辞めた。だだっ広いリビングの隅の半径30cmで遊ぶここが俺の世界。 ていねいに掃除をしたリビングは今までより広く感じる。ルナがすり寄ってきた。瑤子さんは猫大丈夫なの? わからんが、置いていくしかないよ。アパートは駄目なんだろ。一人の時に連絡くれる? 彼の顔が一瞬、

          140字小説/広

          140字小説/深

          保育所の送迎は深緑色のホンダZだった。祖母の車。昭和五十年代。地元では運転する年配の女性が珍しかったし、深緑色なのも珍しかった。なんで深緑なん?深緑が好きやからや。…人気が無くて安うする言われたからや。ふうん。でも他が赤や白ばっかりやから一番目立ってるで。というかおばあちゃんが。 深海に横たわる一枚の鋼鉄。ぼこぼこに変形したその下にサメの子が潜んでいる。毎夜彼は夢をみる。ここをうんとうすくした青。火の球のぎらぎら。熱い、熱い。羽の生えたやつ飛んでった。四角い街遠ざかり。緑が

          140字小説/深

          140字小説/遠

          遠い昔、人類は箱であった。ときおり展開し光合成した。箱に戻る際、誤ってたびたび蝶を閉じ込めた。殆どは酸欠で息絶えたが、猛者は苦しみながら箱にぶつかり箱を凹ませた。脱出に成功した勇蝶もいた。これが盲腸と脱腸の名残である。勢い余り箱ごと移動する蝶。これは進化の道を逸れ、駝鳥となった。 この世界は私から遠ざかっている。ミントの浮かんだグラスも、グラスに反射する光も。翠のピアスとシャツの裾をゆらす風も。はるかかなたの星雲も、星雲を飲み込む黒い穴も。少しづつ、急速に。あなたが永遠に私

          140字小説/遠

          言葉の舟 140字小説

          ほしおさなえさんの「言葉の舟 心に響く140字小説の作り方」読了。後半のコンテスト入賞作品も含め、きらめく宝石みたいな、あるいは肌触りのよい布のような物語たちにうっとり。私は切手が好きなのですが(写真より手書きの絵のやつが好きです)、140字小説は切手に通じる魅力があります。小さな面積に精密描写をする点が同じに思えるからでしょうか。 第2章の140字小説実作講座では、言葉を省いて、移動して、省いた言葉を復活させて小説が締まってゆく様子はたいへん参考になります。講座の生徒さん

          言葉の舟 140字小説

          NHK短歌への投稿作・5月号

          選者:川野里子先生 題詠「ひとり」 不参加?の返事は明るく簡潔に「孤独を愛する人間なので」 班決めで一人あぶれた者同士一緒にされてカレーを作る 殺人の動機さまざまその一つぼっちと言われ言わせておけよ パソコンのファンがざあざあ音たてて私やっぱりひとりになりたい 愛知県 水谷文音さん(5月号) 一読、この人、自分じゃないかと驚きました。誰かと直接、あるいはネットで会話するのも楽しいけど、ふっと思う。私やっぱり、ひとりになりたい。ファンのざあざあ音は自分と外界を遮断してくれて

          NHK短歌への投稿作・5月号

          添削の魅力

          NHKテキストを読んでいて、おや?と思うことがあります。 NHK短歌2月号、誌上添削教室より。 死神と半分づつの新豆腐マンションの孤独なる死の現場 兵庫県 藤田晋一さん 藤田さんは短歌、俳句の色んなところで作品とお名前をお見かけする巧い方です。NHKテキストの読者のお便りエッセイや、最近ではよみうり時事川柳でもお見かけしました。 ええと、掲出歌。添削の必要、ないですよね? あえて言わせていただけるとすると、上の575だけで良句になっています。季語「新豆腐」を入れてくるあ

          添削の魅力

          米泥棒 #ショートショート

           夜通しで米泥棒の見張りをせよと両親から命じられた拓斗は倉庫内でこごえていた。十月半ば。横殴りの雨がシャッターを打ちつける音が響く。記録的な冷夏で極度の米不足に陥り、全国の農家で米泥棒が出没していた。しかも夏からの雨がいっこうに止まない。  米が傷むので倉庫の暖房使用は厳禁だ。寒い。寝袋から頭を出し、コンビニで買ったパンをかじりながらスマホを見ている。明日一時限目は出席必須の講義なのに。  ……ったく。米がなけりゃパンを食えばいいではないか。って、どこかのお姫様が言ってたっ

          米泥棒 #ショートショート

          句会ライブ in 寝屋川市立市民会館

          昨日、夏井組長の句会ライブに初めて行ってきました。組長がすごいのは、お客さんと会話しながら面白くなる方向へ話をひっぱっていってくれるところ。鬼のように当意即妙です。もう、むちゃくちゃ笑わせていただきました! 上沼恵美子の代わりにクギズケ!の司会よゆうで出来はると思います。 「いつき組の中にかたまって俳句を研究してるややこしいグループがいて、独特な空気をかもしだしている。だまっていても誰がグループの人間か私にはわかる。そのオーラがむんむん出ている」 という意味のことを仰って

          句会ライブ in 寝屋川市立市民会館