偉大なモフ

最近観た映画の感想です(備忘録も兼ねてます)。

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最近の記事

【ネタバレ感想】『オビ=ワン・ケノービ』が対峙した過去

ディズニー・プラスのドラマ『オビ=ワン・ケノービ』が完結した。 おそらくドラマのテーマは「過去との対峙」だろう。オビ=ワン(ユアン・マクレガー)はアナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)を殺めた(と思っている)過去に、文字通り悪夢のように囚われている。 『シスの復讐』でオビ=ワンがアナキンに「弟のように愛していた」というのは当時唐突な感もあったのだが、ドラマではオビ=ワンには記憶のない弟がいる(ジェダイは物心つかないうちに親と引き離され訓練に入る)ことが示さ

    • 【ネタバレ感想】『攻殻機動隊 SAC_2045』と『1984年』

      Netflixにて『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン2鑑賞。メモ的に気づいた点をまとめておく。なお本作はジョージ・オーウェルの小説『1984年』をモチーフにしており、以下同作を「小説」とする。 米帝が作った人工知能1A84(=1984)がポストヒューマンを生んだ。この1A84は95年の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の人形遣いを想起させる。 ポストヒューマンが引き起こした世界同時デフォルト(経済的意味もあるが、おそらく「初期化」とのダブルミー

      • 『クリーチャー・デザイナーズ』のビターな現在

        ものすごく楽しみにしていたドキュメンタリー映画。だが観賞後とんでもなくビターな気分にさせられるとは思わなかった。 70〜80年代にハリウッドを席巻したSF映画。その立役者たるSFXマンたちが生き生きと話し始める。レイ・ハリーハウゼンやロン・チェイニーといった映像作家に導かれ、新しい技術を生み出していったこと。 エポックとなった作品群は『スター・ウォーズ』『遊星からの物体X』『グレムリン』『ターミネーター2』などなど。特殊メイク、ストップモーション、アニマトロニクスのような

        • 「システム」への普遍的恐怖を描く『オフィサー・アンド・スパイ』

          試写会にて鑑賞。史実を基にした作品。 軍の近代化はとりもなおさず軍の官僚主義的なシステム化でもある。上位下達、前例主義などが蔓延る。本作はそんな軍のあり様を描いている。 普仏戦争の敗北後、ヨーロッパの覇権をドイツに奪われたフランス。そんななか兵器(大砲)などの情報をドイツに漏洩したスパイ容疑で、ユダヤ人のドレフュス砲兵大尉(ルイ・ガレル)が逮捕される。 反ユダヤ主義が広まるフランスでドレフュスは軍の防諜(カウンターインテリジェンス、スパイ狩りなども任務)担当部署の調査結

        【ネタバレ感想】『オビ=ワン・ケノービ』が対峙した過去

          それぞれの「世界」を繋ぐ『生きててよかった』

          鈴木太一監督のデビュー作『くそガキの告白』を以前観ていて、興味をもって鑑賞。 『くそガキ〜』は、今野浩喜さん演じる映画監督志望の青年が自分の「世界観」にこだわるものの撮りたいテーマをみつけられないという、鬱屈しながらもユーモラスな日常を描く。未見の方もいると思うので詳細は書かないが、青年はラストに撮りたいものを(やや破天荒な方法ながら)みつける。 同作の鑑賞後、鈴木監督のあるインタビュー記事を読んだところ作品と監督の実体験はかなりリンクしているようで、そのうえで思い返すと

          それぞれの「世界」を繋ぐ『生きててよかった』

          【ネタバレ感想】『カモン カモン』は誰に贈られた言葉か

          『カモン カモン』鑑賞。ジャーナリストのジョニー(ホアキン・フェニックス)がやむを得ない事情から9歳の甥ジェシー(ウディ・ノーマン)を預かることになる。これだけを切り取ればハートウォーミングな物語になると思いきや、曲者のような作品である。 やむを得ない事情というのはジェシーの父親が精神を病み(はっきりと言及されないが双極性障害:躁うつ病のようである)、母親ヴィヴ(ギャビー・ホフマン)が入院にしばし付き合わなくてはならなくなったため。事情が事情からか母親は疎遠だった兄ジョニー

          【ネタバレ感想】『カモン カモン』は誰に贈られた言葉か

          【ネタバレ感想】『ザ・バットマン』と『マインドハンター』

          『ザ・バットマン』だが今のところ映画館で4回も観てしまった。その間、削除されたシーンが公開された。バットマンとジョーカー(と思しきアーカムの患者)とのアーカムでの面接シーンである。 このシーンを観て『羊たちの沈黙』や『レッド・ドラゴン』のハンニバル・レクター博士とFBI捜査官のクラリス・スターリング、ウィル・グレアムとの面接シーンを思い出す人も多いかと思う。 『ザ・バットマン』は監督マット・リーヴスによると『マインドハンター FBI連続殺人プロファイリング班』(ジョン・ダ

          【ネタバレ感想】『ザ・バットマン』と『マインドハンター』

          【ネタバレ感想】「イヤーツー」の『ザ・バットマン』

          『ザ・バットマン』(以下、本作)。冠詞としてtheを付けることで固有名詞としてでの「バットマン」ではなく日本語訳では通称(というか渾名)としての「コウモリ男」のような意味だろうか。劇中、バットマンがその名で呼ばれるシーンはほぼ無い(口に出すのはアルフレッドだけで、後はリドラーの手紙と新聞記事に載っているだけだった、と思う)。バットマンは謎に満ちた、劇中のブルース・ウェインの独白を借りればまだ名前のない「影」のような存在なのである。 本作はバットマンが活動し始めて2年目である

          【ネタバレ感想】「イヤーツー」の『ザ・バットマン』