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【ネタバレ感想】『攻殻機動隊 SAC_2045』と『1984年』

Netflixにて『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン2鑑賞。メモ的に気づいた点をまとめておく。なお本作はジョージ・オーウェルの小説『1984年』をモチーフにしており、以下同作を「小説」とする。

米帝が作った人工知能1A84(=1984)がポストヒューマンを生んだ。この1A84は95年の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の人形遣いを想起させる。

ポストヒューマンが引き起こした世界同時デフォルト(経済的意味もあるが、おそらく「初期化」とのダブルミーニング)によりサスティナブル・ウォーが発生。小説では原因不明の戦争のための戦争が延々と行われ(つまりサスティナブル・ウォー)、人類は各国政府の意向に従っている。

小説の舞台である国家オセアニア政府のリーダーはビッグ・ブラザーと呼ばれているが、存在するかどうかすら不明。国民にダブルシンク(二重思考、「自由は屈従である」など相反する思考を受容する)を行わせて表面上平和な生活をさせている。

ダブルシンクの思想原理はニュースピークとよばれる。Nとはその頭文字で、ダブルシンクを行う者という意味ではないだろうか? Nでない者はNポとして、小説にも登場する思考警察(シーズン1で名前が出てきた「シンクポル」)に逮捕される。皆が恐れる101号室とは思考警察の拷問室である。

トグサが感染した郷愁ウイルスの名は「ミニラブ」で、思想警察を管轄する「愛情省」の略称。小説の主人公ウィンストンは体制に禁じられている日記や本を持っていた(過去の文化への郷愁があった)ことを利用され愛情省に逮捕される(=ウイルスに取り込まれる)。自閉モードに関わらずNとなった者はそれぞれ「郷愁アプリ=ミニラブ」をダウンロードしていた。

シマムラタカシは新しいビッグ・ブラザーとして、人類がダブルシンクを抱え矛盾を孕みながらも争いがない世界を創ろうとしていた(ディストピアであると同時にユートピアというダブルシンク)。草薙少佐はそれを人間らしい世界とは思えず、最終的にそれを阻止した。

ラストの少佐の「ネットは広大だわ」というセリフは95年の『GHOST IN THE SHELL』と同じだがニュアンスが異なり、過去作ではネットに繋がることによりよって新たな人間的自由が生まれるような幻想があった。

ただその後、実際のネット社会はどうなっただろうか? 現実的には息苦しい(それこそシーズン1で描かれたネットリンチみたいなことが多発する)不安定な社会になってしまった。

少佐はネットに散らばった人格を集めて新たなゴーストを得た江崎プリン(『GHOST IN THE SHELL』で人形遣いによってネットと同化し新たなアイデンティティを得た少佐の似姿でもある)に希望を託し、自身は思索のために再び広大なネットの海に潜る。

まだまだ考える余地がありそうだが、ひとまず以上とする。

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