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【ネタバレ感想】『オビ=ワン・ケノービ』が対峙した過去

ディズニー・プラスのドラマ『オビ=ワン・ケノービ』が完結した。

おそらくドラマのテーマは「過去との対峙」だろう。オビ=ワン(ユアン・マクレガー)はアナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)を殺めた(と思っている)過去に、文字通り悪夢のように囚われている。

『シスの復讐』でオビ=ワンがアナキンに「弟のように愛していた」というのは当時唐突な感もあったのだが、ドラマではオビ=ワンには記憶のない弟がいる(ジェダイは物心つかないうちに親と引き離され訓練に入る)ことが示され、アナキンを弟に重ねていたであろうことがわかる。

ダース・ベイダーとなったアナキンはオビ=ワンに倒された過去、尋問官として表向きベイダーに仕えるサード・シスターことリーヴァはベイダー=アナキンにパダワンの仲間を殺された過去にそれぞれ妄執している。

老いて力の衰えたオビ=ワンは幼いレイア(ヴィヴィアン・ライラ・ブレア)との旅を通し、そこに『新たなる希望』を見出し力を取り戻した。

最後にリーヴァがルークを狙った理由はいまひとつ判然としないが(ベイダーを止められなかったオビ=ワンへの復讐心か)、己の元々の出自から手を下せず、その優しさをオビ=ワンに諭される。

ベイダーに至ってはオビ=ワンとの戦いを経て、アナキン自身の弱さゆえに自らアイデンティティを失ってしまったことを認めるのである。

ここからはメタ的な話だが、本ドラマはスター・ウォーズのある作品に構造が似ている印象がある。シークエルの『最後のジェダイ』である。

老いたルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)はベン・ソロ(アダム・ドライバー)のカイロ・レンへの転向を招く事態を止められず、オク=トーの孤島に引きこもる。

だが『最後の〜』と本ドラマが異なるのはルークとオビ=ワンの行動の違いである。オビ=ワンは不承不承ながらもタトゥイーンを飛び出し、旅の過程で未来は自ずと拓けることを悟る。そして彼は本来の力を取り戻し、ベイダーをも圧倒する。これは『最後の〜』のルークに期待された役割にも思える。

ベイダーが語る「自らを殺したのは自分」というのは、穿ったみかたをすればシークエル制作当時のルーカスフィルムと思えなくもない。本ドラマが対峙したのはその過去ではないだろうか?

物語の最後にオビ=ワンがやっと出会う人物は、「ずっと見ていた。先は長い」と言う。これはスター・ウォーズをリビルドしようとしているスタッフや、ファンの言葉を高らかに代弁しているように感じた。

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