水瀬 文祐

小説の創作をしています。 創作ジャンルは特に問わず。ただしエンタメ寄り。職人のように小…

水瀬 文祐

小説の創作をしています。 創作ジャンルは特に問わず。ただしエンタメ寄り。職人のように小説を書いていきたいと考えています。 好きな作家は恒川光太郎、連城三紀彦、ポール・オースター等。

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固定された記事

写真小説家~歌姫の断片~

■あらすじ写真を撮るように、目の前の景色や出来事を書き記す「写真小説家」。それを生業とする私は、依頼人から依頼を受けて、様々な出来事を書き記そうとする。不思議な…

水瀬 文祐
2か月前
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あなたが思い出す言葉は、何に書かれていた?(読書記録17)

■はじめにサムネイル画像は「針がとぶ」でAI生成したものです。作品の内容とは関りありませんので、あしからず。 今回読書記録をつけるのは、吉田篤弘著、『針がとぶ』で…

水瀬 文祐
9時間前
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ゆうぐれあさひ~SIDEゲーテさん~

■前回のお話はこちら■本編 書店員の朝は早い。十時の開店に備えて、それまでにある程度の新刊を店に並べておかなければならないからだ。  正社員で朝の時間帯の責任者…

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四姉妹の話~緑(ヴェール)~

■前回のお話はこちら■本編 私は再び老人の家の戸口に立っていた。  相変わらずその住まいはひっそりと静まり返っていた。静かに降る雨の音だけが広がり、家はこうべを…

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幽世電車

 智臣は走っていた。  真夏のアスファルトの上を、息を切らし、頬を伝って流れる汗を拭いながら、線路沿いの道をただひたすら。  ぎらつく太陽の光が追い立てるように智…

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イステリトアの空(第6話)

■これまでのお話はこちら■本編 春洋は右に跳んで、右方向に走る。長曾根がそれを見て方向転換するために動きが遅くなった瞬間に春洋は懐から鋼の礫を出して投げつける。…

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麻薬読書者

 男は後ろをやけに気にしながら歩き、ある小路の入り口に立つと、殊更に警戒心を剝き出しにし、周囲を窺って見ている者がいないことを確かめて小路に入り込んだ。  うら…

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金色の霊獣~碧天の巫女外伝~

■前回のお話はこちら■本編 精霊の森のさらに奥にある霊峰、ストラ山。山の民の初代酋長の名を戴くその険しい山道の途上に、少年はあった。 「兄者、置いてくぞ」  少年…

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マガジンに追加していただいた作品について

■マガジン追加していただいたnoter様うちらぶ様の「お気に入り・おすすめ記事」に「波間に揺れる」を追加していただきました。 うちらぶ様、ありがとうございます。 ■…

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スパイ・オア・ストーリーテラー

 病室の窓から外を眺める。青空に無数の魚影のような雲が泳いでいる。  午後のロードショーを見終えて、余韻に浸りながら缶コーヒーを飲んで一息つく。 「ああ、水瀬さん…

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空色のダイヤモンド

 世界には空に穴の空く場所があって、その穴の中には空色をしたダイヤモンドが眠っている。  だからおれはそのダイヤを掘りに行かねばならない。  あなたはそう言ってこ…

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波間に揺れる

 波打ち際に貝殻が転がっていた。押し寄せては引く波に弄ばれ、ころころ、ころころと転がった。  僕は裸足のつま先でそれに触れると、波に逆らうように転がしてやった。 …

水瀬 文祐
10日前
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乙女と間の抜けた男、それから石板(読書記録16)

■男は叡智の図書館に、私は病院に今回読書記録を残しますのは、多崎礼著:「叡智の図書館と十の謎」、です。 ちなみに本日5月12日より私は病院に入院することと相成りま…

水瀬 文祐
11日前
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イステリトアの空(第5話)

■これまでのお話はこちら 殺すのも、殺されるのも怖い。だが、と春洋は弟がかつてしていた話を思い出す。弟の秋継は不思議な夢ともつかない白昼夢のようなものを垣間見る…

水瀬 文祐
12日前
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白露に映るものは

 顧問の黒田しづねが文芸部の部室を覗き込むと、鷺橋美織だけがいて、彼女は机や椅子を雑巾で拭いていた。 「なんだ、鷺橋さん、一人なの」  ああ、黒田先生。と美織は額…

水瀬 文祐
13日前
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イステリトアの空(第4話)

■これまでのお話はこちら■本編 その夜も犠牲者が出た。殺されたのは道場主で小学校の教師である山吹と、一緒に巡回していた二人の門下生だった。  山吹はさすが兵法家…

水瀬 文祐
2週間前
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写真小説家~歌姫の断片~

写真小説家~歌姫の断片~

■あらすじ写真を撮るように、目の前の景色や出来事を書き記す「写真小説家」。それを生業とする私は、依頼人から依頼を受けて、様々な出来事を書き記そうとする。不思議な魅力を兼ね備えた歌手のライブ。最後の舞台に挑もうとするヒーロー。そして、その写真小説家自身。
写真小説を通じて浮き彫りになってくる、「私」の抱えた問題。出会った人々に触れて、「私」の問題への意識は変わっていき、それと向き合おうと決心すること

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あなたが思い出す言葉は、何に書かれていた?(読書記録17)

あなたが思い出す言葉は、何に書かれていた?(読書記録17)


■はじめにサムネイル画像は「針がとぶ」でAI生成したものです。作品の内容とは関りありませんので、あしからず。
今回読書記録をつけるのは、吉田篤弘著、『針がとぶ』です。こちらは以下の話が収録された短編集になります。

針がとぶ

金曜日の本――『クロークルームからの報告』より

月と6月と観覧車

パスパルトゥ

少しだけ海の見えるところ1990ー1995

路地裏の小さな猿

最後から二番目の晩

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ゆうぐれあさひ~SIDEゲーテさん~

ゆうぐれあさひ~SIDEゲーテさん~

■前回のお話はこちら■本編 書店員の朝は早い。十時の開店に備えて、それまでにある程度の新刊を店に並べておかなければならないからだ。
 正社員で朝の時間帯の責任者である僕は、出勤すると店舗裏手にあるスタッフ用の通用口の警備を解除し、鍵を開けて中に入る。このとき大体七時半頃だ。
 ユニフォームに袖を通し、売上管理用の端末を立ち上げ、各種システムの電源を入れてスタンバイにすると、売り場に出る。
 その日

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四姉妹の話~緑(ヴェール)~

四姉妹の話~緑(ヴェール)~

■前回のお話はこちら■本編 私は再び老人の家の戸口に立っていた。
 相変わらずその住まいはひっそりと静まり返っていた。静かに降る雨の音だけが広がり、家はこうべを垂れた老人そのもののように、疲れ切って見えた。
 雨の日、老人は散歩に出ない。戦争の古傷が痛む、とかで外出したがらず、安楽椅子の上で終日を過ごす。
 今日はリュヌも来ていないようだった。娘と見紛う老人の孫の男は、甲斐甲斐しく老人の世話を焼い

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幽世電車

幽世電車

 智臣は走っていた。
 真夏のアスファルトの上を、息を切らし、頬を伝って流れる汗を拭いながら、線路沿いの道をただひたすら。
 ぎらつく太陽の光が追い立てるように智臣の背を焼く。その熱が背中を中心に全身を走り、体温を、それどころか血の温度さえぐつぐつと煮立つように高めている気がした。
 制服のスラックスとワイシャツは走るには窮屈だ。智臣は第二ボタンまでシャツのボタンを外し、息を吐いた。
 高校の数学

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イステリトアの空(第6話)

イステリトアの空(第6話)

■これまでのお話はこちら■本編 春洋は右に跳んで、右方向に走る。長曾根がそれを見て方向転換するために動きが遅くなった瞬間に春洋は懐から鋼の礫を出して投げつける。
 長曾根はたたらを踏んでよろけ、やっとのことで礫を仕込み杖の柄で受けて弾く、その間に春洋が間合いを詰め、低い姿勢で刀の刃を返して上向きにし、長曾根の懐に潜り込むと刀を振り上げる。だが、長曾根の革靴の底がその刃を受け止める。
 春洋は舌打ち

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麻薬読書者

麻薬読書者

 男は後ろをやけに気にしながら歩き、ある小路の入り口に立つと、殊更に警戒心を剝き出しにし、周囲を窺って見ている者がいないことを確かめて小路に入り込んだ。
 うら寂しい小路は、夜の闇を凝縮したような影をそちこちに抱え、降りしきる雨の冷たさと臭いが充満していた。人気はないのに何かの気配で満ちていた。
 切れかけたネオンの看板がじりじりと音をたてて明滅し、風が吹くと居酒屋の古い引き戸ががたがたと鳴る。看

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金色の霊獣~碧天の巫女外伝~

金色の霊獣~碧天の巫女外伝~

■前回のお話はこちら■本編 精霊の森のさらに奥にある霊峰、ストラ山。山の民の初代酋長の名を戴くその険しい山道の途上に、少年はあった。
「兄者、置いてくぞ」
 少年、名をカズラという。岩が転がり草木も絶えた山肌を登りながら、後ろでぜいぜい喘いでいる三つ年上の兄を振り返りながら呆れたように言う。
 少年には兄が五人いた。長兄のアルバは文武に秀でた山の民一の剣の使い手だったが、今後ろを歩いている四番目の

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マガジンに追加していただいた作品について

マガジンに追加していただいた作品について


■マガジン追加していただいたnoter様うちらぶ様の「お気に入り・おすすめ記事」に「波間に揺れる」を追加していただきました。
うちらぶ様、ありがとうございます。

■追加していただいた作品はこちら

こちらの作品は完全に行き当たりばったりで、プロットも何もなく書き出したものでした。「貝」というアイテムだけがぽんとアイデアにあって、それ以外の登場人物なんかは書きながら考えていったものになります。

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スパイ・オア・ストーリーテラー

スパイ・オア・ストーリーテラー

 病室の窓から外を眺める。青空に無数の魚影のような雲が泳いでいる。
 午後のロードショーを見終えて、余韻に浸りながら缶コーヒーを飲んで一息つく。
「ああ、水瀬さん、また体に悪そうなもの飲んでますね」
 巡回の女性看護師の鹿屋さんは眉を顰めながらそう言った。
「何か楽しみがないと、長い入院生活は耐え難くて」
 そう言って点滴のチューブを持ち上げて肩を竦めてみせる。
 鹿屋さんはああそうですか、と呆れ

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空色のダイヤモンド

空色のダイヤモンド

 世界には空に穴の空く場所があって、その穴の中には空色をしたダイヤモンドが眠っている。
 だからおれはそのダイヤを掘りに行かねばならない。
 あなたはそう言ってこの街を出ていった。もう十年前のことになる。
 十年前というと、わたしはまだ女子高生で、あなたの話す夢のようなホラ話を無邪気に笑って聞いていられる年頃だった。
 百匹のテントウムシがスズメバチを撃退する話とか、示したところを掘ると必ず財宝が

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波間に揺れる

波間に揺れる

 波打ち際に貝殻が転がっていた。押し寄せては引く波に弄ばれ、ころころ、ころころと転がった。
 僕は裸足のつま先でそれに触れると、波に逆らうように転がしてやった。
「意地悪ね」と彼女が手で庇を作りながら眩しそうに目を細めて言った。
「死んだ貝だよ」と僕が口を尖らせて言うと、彼女は諭すように「死んでいるからこそよ」と言ってしゃがんで貝殻を拾い上げた。
 彼女は手のひらの上にその巻き貝を載せ、まるで生き

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乙女と間の抜けた男、それから石板(読書記録16)

乙女と間の抜けた男、それから石板(読書記録16)


■男は叡智の図書館に、私は病院に今回読書記録を残しますのは、多崎礼著:「叡智の図書館と十の謎」、です。

ちなみに本日5月12日より私は病院に入院することと相成りました。
旅人は叡智の図書館を目指して謎を解きますが、私は身体の中の謎を解くべく入院するわけです。

なので、パソコンが使えないため、数日間は更新は簡易なものになると思います。
小説なんかも書ければいいのですが、点滴が始まると腕をあまり

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イステリトアの空(第5話)

イステリトアの空(第5話)

■これまでのお話はこちら 殺すのも、殺されるのも怖い。だが、と春洋は弟がかつてしていた話を思い出す。弟の秋継は不思議な夢ともつかない白昼夢のようなものを垣間見ることがあった。
 それは、ここではない、どこか遠くの世界の話。
 その世界の街では、西洋風の建築物と日本風の建築物が混在しており、中にはそのどちらにも属さないであろう奇抜な建物もあるという。街は発展する一方で街の周囲は広大な原野だったり森林

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白露に映るものは

白露に映るものは

 顧問の黒田しづねが文芸部の部室を覗き込むと、鷺橋美織だけがいて、彼女は机や椅子を雑巾で拭いていた。
「なんだ、鷺橋さん、一人なの」
 ああ、黒田先生。と美織は額の汗を腕で拭うと、「そうなんです。でも、部長もすぐ来ると思います」と笑いかけた。
 黒田はこの高校の卒業生で、ベテランの多い教師陣の中では三十代前半と比較的若いことと、愛嬌のある顔立ちで、馴染みやすい気さくな性格から「しづちゃん」と呼ばれ

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イステリトアの空(第4話)

イステリトアの空(第4話)

■これまでのお話はこちら■本編 その夜も犠牲者が出た。殺されたのは道場主で小学校の教師である山吹と、一緒に巡回していた二人の門下生だった。
 山吹はさすが兵法家であったと見え、正面から斬り結んだ跡が見受けられた。門下生二人は背中をばっさりと斬られているところから、逃げようとして斬られたのだと窺える。
 人気のない村外れだった。一本砂利道が東西に走っているだけで、周囲は雑草が繁茂している。少し道を外

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