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SHIFT INNOVATION #60 「ワークショップ(KYOTO Design Lab編6)」

SHIFT INNOVATION #59において、「シフトイノベーション」の方法論における解決困難なコンセプトを設定することにより、認知心理学的側面および脳科学的側面における事象が影響または排除されることによって、自然に「究極的状況の想起」「固定観念の知覚」「本質探究の問いの発信」「固定観念の排除」という思考プロセスを経ることから、異なる課題であるにもかかわらず、一定の思考プロセスを経ることになることを説明しました。

それでは、異なる課題であるにもかかわらず、一定の思考プロセスを経る上で、「シフトイノベーション」の方法論とあわせて重要となる要因として、コンピテンシーとマインドセットがあります。今回は、思考プロセスから外れた場合であっても、ゴールに向けて軌道修正することができるコンピテンシー、コンビテンシーを発揮するためのマインドセットについて説明することとします。


【マインドセット「妄想的姿勢」「限界的姿勢」「批判的姿勢」】

はじめに、異なる課題であるにもかかわらず、一定の思考プロセスを経るよう導く上で、「シフトイノベーション」の方法論において必要となるコンピテンシーとして、解決困難なコンセプトに基づき、限界まで思考を繰り返し、その限界を乗り越えることが重要であり、そのためには、解決困難なコンセプトを設定するための「妄想力」、限界まで思考を繰り返し続けるための「思索力」、達した限界を乗り越えるための「批判力」が必要となります。

また、乗り越えた限界に対して、異なる視点で捉えた事象を構造化した上で、構造化した事象に適切な事例を適用することが重要であり、そのためには、異なる視点で捉えた事象を構造化するための「抽象力」、構造化した事象に適切な事例を適用するための「類推力」が必要となります。

そして、適用した事例に対して、はじめに設定したコンセプトと関連付け、それを実現するために新たな機能を結びつけることが重要であり、そのためには、コンセプトに帰結するための「収束力」、新たな機能を結びつけるための「結合力」が必要となります。

これらの中でも、異なる課題であるにもかかわらず、一定の思考プロセスを経るようにするため、特に、解決困難なコンセプトを設定するための「妄想力」、限界まで思考を繰り返し続けるための「思索力」、限界を排除するための「批判力」が重要であると考えます。

そして、これらのコンピテンシーを発揮する上で必要となるマインドセットである「妄想的姿勢(妄想力)」とは、「面白いことをしたい」「これってあり得ない」という姿勢、「思索的姿勢(限界力)」とは、「あともう1個考えられないのか」「まだ他の方法があるのではないのか」という姿勢、「批判的姿勢(批判力)」とは、「本当にそれは事実なのか」「思い込みじゃないのか」という姿勢など、姿勢(マインドセット)を意識し習慣化させることによって、異なる課題であるにもかかわらず、一定の思考プロセスを経ることができるものであると考えます。

そこで、「トップダウン情報処理」における「無関係と認知された事象は無視される」「恒常性を求める」という原則は、今までとは異なる視点により事象を捉える上で、制約となる原則であることから、上記で説明した「妄想的姿勢(妄想力)」「思索的姿勢(限界力)」「批判的姿勢(批判力)」というマインドセットを意識し習慣化することにより、「無関係と認知された事象は無視される」「恒常性を求める」という制約を排除することができるものと考えます。

一方で、「恒常的な特徴を抽象化する」「特定の事象と過去に生じた事象を比較する」という原則に関しては、「抽象力」「類推力」というコンピテンシーとの親和性があり、事象を構造化すると共に様々な事象を比較する中で、適切な事例を類推し適用されることとなることから、「恒常的な特徴を抽象化する」「特定の事象と過去に生じた事象を比較する」という脳機能における「トップダウン情報処理」の原則に基づき、無意識に処理されるものと考えられます。

(マインドセット)
妄想的姿勢
「面白いことをしたい」「これってあり得ない」という姿勢を意識する
思索的姿勢
「あともう1個考えられないのか」「まだ他の方法があるのではないのか」という姿勢を意識する
批判的姿勢
「本当にそれは事実なのか」「思い込みじゃないのか」という姿勢を意識する


【解決困難なコンセプトを設定するための「妄想的姿勢」】

それでは、脳機能における「トップダウン情報処理」の「無関係と認知された事象は無視される」「恒常性を求める」という原則に関して、「妄想的姿勢(妄想力)」「思索的姿勢(限界力)」「批判的姿勢(批判力)」というマインドセットを意識し習慣化することにより、制約を排除することができるのではないかと説明しました。

ここで重要となるのは、「洞察問題解決」のインパスの発生フェーズであり、インパスの発生、つまりは、手詰まりの状態となることが重要であり、もし、手詰まりの状態には至らず、その途中で解決策を閃いた場合、脳機能における「トップダウン情報処理」に基づき「無関係と認知された事象は無視される」「恒常性を求める」が機能することによって、今までと同じ視点により事象を捉えることとなることから、今までと同じアイデアが導出されることになると想定されます。

それでは、インパスをどのようにすれば発生させることができるのでしょうか。「シフトイノベーション」の方法論においては、解決困難なコンセプトをあえて設定する「妄想的姿勢」が重要であり、例えば、今回のワークショップのテーマである「プレゼント体験をリデザインする」の場合であれば、「プレゼントができないプレゼント体験」、「検診不要薬」の場合であれば、「検診が不要となる世界」、「簡易検診オムツ」の場合であれば、「365日コネクトし社会貢献する」など、すぐに解決策を閃くことができないようなコンセプトを設定することにより、インパスを発生させます。

普通であれば、「プレゼントができないプレゼント体験ってどういうこと」、「検診機関において検診が不要となる世界を検討するってあり得ない」、「オムツのようなプロダクトで365日コネクトし社会貢献するって不可能」となるのではないかと考えます。

これらのように、インパスを発生させることができる解決困難なコンセプトを設定するためには、「これってあり得ないけど、面白いかもしれない」というようなコンセプトを妄想することができる「妄想的姿勢(妄想力)」というマインドセットが重要になると考えます。


【究極的状況を想起するための「思索的姿勢」】

それでは、妄想的姿勢により解決困難なコンセプトを設定した場合であっても、究極的状況を想起することができない場合があり、この場合、インパスを発生させる上で、「思索的姿勢」が重要となります。

今回、解決困難なコンセプトとして、「プレゼントできないプレゼント体験」という意味不明とも言えるコンセプトを設定しましたが、すぐに究極的状況を想起することによって、インパスを発生させることができませんでした。

「プレゼントできないプレゼント体験」というコンセプトに対して、はじめに想起したのは、リアルとバーチャルという概念であり、リアルではあげたプレゼントは実在するが、バーチャルではあげたプレゼントは実在しないということを、「プレゼントできないプレゼント体験」から想起しました。

しかし、これによりインパスは発生することはなく、ここで、バーチャルにおけるコンテクストに関して、限界まで思考を繰り返し続ける「思索的姿勢」が機能することとなりました。

これにより、コンテクストとして想起したバーチャルにおける「服」から「人生」に転移し、バーチャルとリアルでは全く異なった人生を送ることができるものの、バーチャルで成功した場合であっても、それをリアルに置き換えることはできないというように、限界まで思考を繰り返し続けるための「思索的姿勢」が機能することとなりました。

これらのように、解決困難なコンセプトを設定できた場合であっても、すぐには究極的状況を想起できない場合もあり、この場合、限界まで思考を繰り返し続けるための「思索的姿勢」が機能することによって、インパスを発生させることができる場合があると考えます。


【本質探究の問いを発するための「批判的姿勢」】

それでは、「妄想的姿勢」「思索的姿勢」により、究極的状況を想起し、固定観念を知覚することができた場合、「批判的姿勢」が機能することによって、本質探究の問いを発することとなります。

「プレゼントできないプレゼント体験」に関する事例の場合、「服を変えることにより、今の自分とは異なる性格の人物になれるのではないか」と発想したことにより、「バーチャルの世界で、リアルとは全く異なる人生を送る」という究極的状況を想起したことによって、「バーチャルで成功した場合であっても、リアルの人生とは交換できない」という固定観念を知覚することとなりました。

そして、知覚した固定観念は、実現不可能であると認識したものの、「批判的姿勢」が機能したことにより、「本当に服を変えるだけで人生は変わるのか」と本質探究の問いを発したことによって、「服を変えるように自分の考え方を変えることによって、人生も変えることができるのではないのか」、つまりは、「思考を変えると、物事の捉え方を変えることができる」というように固定観念を排除することができました。

これらのように、実現不可能であると認識した場合であっても、固定観念を知覚することにより、固定観念に対して「批判的姿勢」が機能することによって、心的制約が緩和されると共に問題空間が切り替えられる場合があると考えます。


【半自然発想に関する思考プロセス事例】

解決困難なコンセプトの設定
「プレゼントできないプレゼント体験」


「リアルではなくバーチャルでプレゼントするとリアルでは服が手元に残らない」
「バーチャルであっても、服をプレゼントされると嬉しいものである」
「バーチャルでアバターに服やグッズを購入することができる」
「バーチャルで購入したものと同じものをリアルで販売してくれると嬉しい」
「例えば、普段着ている服とは異なるタイプの服を着てみるのも面白いのではないか」
「服を変えることにより、今の自分とは異なる性格の人物になれるのではないか」

究極的状況の想起
「バーチャルの世界で、リアルとは全く異なる人生を送る」
固定観念の知覚 (インパスの発生)
「バーチャルで成功した場合であっても、リアルの人生と交換できない」
本質探究の問いの発信 (心的制約の緩和)
「本当に服を変えるだけで人生が変わるのか」
固定観念の排除 (問題空間の切り替え)
「思考を変えると物事の捉え方を変えることができる」

「実は失敗したと思っていたことが、異なる視点から見ると成功であった」
「他人のために買ってプレゼントしたものを使ってくれなかったが、今は自分が使っている」
「自分が欲しいものをプレゼントとして買うと、どちらに転んだとしても失敗はない」
「コンテクストによって、成功と失敗はあるが、全体から見ると失敗はない」
「同じテクストを絶えず成功する側面から捉える」

反転事例の適用 (類推の利用)
「ロウソクであれば平常時は癒しとして利用し、非常時は明かりとして利用する」
適用事例の構造化 (類推の利用)
「利用できる、利用できないということはなく、いつでも利用できる状態にある」
関連事象への収束 (類推の利用)
「複数の人が利用したい時に利用し、全体として特定のものを利用している」
新機能の適用 (類推の利用)
「プレゼントでものをあげるのではなく、シェアリングサービスをあげる」
新アイデアの導出
「シェアできるモノやコトを無償で提供する」

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