SHIFT INNOVATION #54 「マインドセット3」(無意識的思考・意識的思考編)
新たなアイデアを生み出すための「SHIFT INNOVATION」の事例を紹介します。
SHIFT INNOVATION #53 「マインドセット2」(事象シフト編)において、目的を転換(再定義)させるためには、解決すべき視点が転換(シフト)したのち、排除することが困難である固定観念に対して、本質探究の問いを発することにより、想定外の新たな機会を抽出することによって、不便益から便益に反転させることができることから、目的も転換(再定義)させることができることを説明しました。
一方で、解決すべき視点が転換(シフト)せず、固定観念を抽出することができない場合、比較的解が容易な事象に対して、事実確認の問いを発することによって、事象は反転するものの、反転した事象は想定内の事象であり、新たな機会を抽出するまでには至らないことから、目的も転換(再定義)するまでには至らないとも説明しました。
今回は、抽出した想定外の新たな機会に基づき、目的が転換(再定義)した場合、「課題解決フェーズ」において、どうすれば転換した目的を今までにはない発想へ導くことができるのか、説明することとします。
【無意識的思考・意識的思考】
それでは、ひねって、妄想する DESIGN #4 「アイディエーション3」(ひねる編)において紹介した「簡易検診オムツ」の事例とSHIFT INNOVATION #39 「イノベーション5」(検証編)において紹介した「ビッグデータオムツ」の事例(下記事例参照)に基づき、転換した目的を今までにはない発想へ導くプロセスを説明することとします。
はじめに、「大腸がん検診」という新たな機会を抽出したのち、無意識的に思考した事例である「簡易検診オムツ」の事例と意識的に思考した「ビッグデータオムツ」の事例とを比較した内容に関して説明することとします。
「大腸がん検診」という新たな機会を抽出したのち、無意識的に思考した事例である「簡易検診オムツ」の事例の場合、「便」から「大腸がん健診」を導き、さらに、「便」を意識し続けたことにより、便には多くの健康情報が含まれていることから、便に含まれる多くの健康情報を活用できないか検討しました。
そして、センサー(デバイス)で健康情報を入手することにより、常時健康管理できるのではないかと考えたことから、定期的に病院へ行き、長時間待たされることがない「簡易検診オムツ」を導出することができました。
このように、無意識的に思考した場合、便とは無関係の事象は無視されるため、便に関係する事象を想像することとなることから、目的は転換(再定義)したものの、想像する事象は想定内の範囲の事象に帰結する可能性が高まることとなります。
一方で、「大腸がん検診」という新たな機会を抽出したのち、意識的に思考した「ビッグデータオムツ」の事例の場合、「大腸がん健診」に対して、意識的に抽象化(概念化)を試みたことにより、「不要物を有効活用する」から「便」とは無関係である「古着」が抽出されたことによって、「古着を集めて海外へ輸出することにより、社会貢献する」という事象を想起しました。
そして、「古着」から「便」へ収束させることにより、「多数の健康情報を収集することにより医療課題を解決する」という事象を抽出したことから、便の健康情報をビッグデータ化することによって、医療課題を解決する「ビッグデータオムツ」を導出することができました。
このように、意識的に思考した場合、あえて「便」とは無関係な事象を連想することにより、目的が転換(再定義)したことにあわせて、想像する事象とは異なる想定外の範囲の事象に帰結する可能性が高まることとなります。
これらのことから、抽出した想定外の新たな機会に基づき、意識的に思考した場合、例えば、「ビッグデータオムツ」の事例の場合であれば、新たな機会である「大腸がん検診」に関わる「便」を、単純に「便」と捉えるのではなく、「不要物」へと概念化することによって、「不要物」から「古着」へと転換し、「古着」を有効活用する方法として、「古着を集めて海外へ輸出することにより、社会貢献する」という全く異なる事例を適用することとなりました。
ここで、「便」を単純に「便」と捉えた場合、「病院へ定期的に行く必要があることにあわせ、長時間待たされるのは大変である」という課題に対して、「個々の赤ちゃんごとの健康情報を有効活用することにより、定期的に健康診断を受診する必要がなく、常時、赤ちゃんの健康管理をすることができるオムツ」というアイデアを導出することとなります。
一方で、「便」を「不要物」へと概念化したことにより、「集める」という要因が加わったことによって、「今、多くの赤ちゃんは様々な病気に悩まされている」という課題に対して、「多数の赤ちゃんの健康情報を収集し、ビッグデータ化することにより、医療課題を発見し解決することができるオムツ」というように、より高いレイヤーにおけるアイデアを導出することができることとなりました。
よって、新たな機会に対して、意識的に概念化したことにより、新たな要因が加わることによって、想像する事象とは異なる想定外の範囲の事象に帰結する可能性が高まることとなることから、「課題解決フェーズ」においては、発散した思考内容を収束させる上で、意識的に思考することが有効ではないかと考えます。
【結果としての潜在的課題の発見】
それでは、目的が転換(再定義)したことにより、今までにはない発想へ導くことができた結果、検討すべき事象とは異なる事象における潜在的な課題を(結果として)発見し解決することができることとなります。
例えば、前々回紹介した「アラートオムツ」の事例の場合、「赤ちゃんが便をした際、便を漏らさないようにする」という検討すべき事象における顕在的な課題に対して、赤ちゃんが夜中に便を漏らすことにより、「赤ちゃんは良い睡眠がとれないことで健やかに成長できない」という検討すべき事象における潜在的な課題を抽出しました。
そして、赤ちゃんが不快に感じないようにする上で、オムツの中に便があることを寝ている親に知らせるため、「赤ちゃんが夜中に便をしたとき、センサー(デバイス)が便を感知し、寝ている親のスマートフォンに赤ちゃんが便をしたことを知らせるオムツ」という「枠内」のアイデアを導出することとなりました。
一方で、「簡易検診オムツ」の事例の場合、「赤ちゃんは良い睡眠がとれないことで健やかに成長できない」という、検討すべき事象における潜在的な課題に対して、「オムツ」から「便」へ転換し、「大腸がん検診」という新たな機会を抽出したことにより、「便は臭くて汚いもの」から「便は役立つもの」へ反転しました。
そして、新たな機会である「大腸がん検診」に対して、無意識的に「便を有効活用する」と抽象化(概念化)したことにより、「便」から「便には多くの健康情報があるのでオムツは情報の宝庫ではないのか」と連想したことによって、「センサー(デバイス)で便から健康情報を収集することにより、定期的に健康診断を受診する必要がなく、常時、赤ちゃんの健康管理をすることができるオムツ」という「枠外」のアイデアを導出することとなりました。
この結果、「病院へ定期的に行く必要があることにあわせ、長時間待たされるのは大変である」という、検討すべき事象とは異なる事象における潜在的な課題を結果的に抽出することとなりました。
また、「ビッグデータオムツ」の事例の場合も、「赤ちゃんは良い睡眠がとれないことで健やかに成長できない」という、検討すべき事象における潜在的な課題に対して、「オムツ」から「便」へ転換し、「大腸がん検診」という新たな機会を抽出したことにより、「便は臭くて汚いもの」から「便は役立つもの」へ反転しました。
そして、新たな機会である「大腸がん検診」に対して、意識的に「不要物を有効活用する」と抽象化(概念化)したことにより、「不要物」から「古着」を連想し、「古着を集めて海外へ輸出する」という事例を適用したことによって、「多数の赤ちゃんの健康情報を収集し、ビッグデータ化することにより、医療課題を発見し解決することができるオムツ」という「枠外」のアイデアを導出することとなりました。
この結果、「今、多くの赤ちゃんは様々な病気に悩まされている」という、検討すべき事象とは異なる事象における潜在的な課題を結果的に抽出することとなりました。
一般的には、検討すべき事象における潜在的な課題を検討する中で、検討すべき事象とは異なる事象における顕在的な事象を抽出し、そして、この顕在的な課題に対する潜在的な課題を抽出した上で、この潜在的な課題を解決することとなると考えます。
一方で、「簡易検診オムツ」の事例および「ビッグデータオムツ」の事例の場合、検討すべき事象における潜在的な課題を検討する中で、最終的に導出した新たなアイデアにおける課題が、結果として検討すべき事象とは異なる事象における潜在的な課題であったということとなります。
よって、特に事象が「転換」「反転」する場合は、顕在的な課題を抽出した上で、潜在的な課題を発見し解決するのではなく、導出したアイデアにおける課題を分析した結果、新たに潜在的な課題が判明するというものとなります。
【「簡易検診オムツ」「ビックデータオムツ」の事例における思考プロセス】
「簡易検診オムツ」 ※課題発見・課題転換・課題解決
【「ビッグテータオムツ】 ※課題発見・課題転換・課題解決
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