感謝ばかり
ひさしぶりに目覚まし時計が不要な日だった。目が覚めるともう10時は回っていた。ボーッと天井を見上げる。一度も夜中に起きることは無かったけれど、なんだかスッキリしない目覚め。思ったよりあさい眠りだったのかもしれなかった。なんだか悔しくて、寝返りを繰り返す。
ふと足音が聞こえ、直後に扉の開閉音がした。たぶんトイレの扉だ。ずりずりとベッドの上で体を動かし、180度体の向きを変える。枕側に足が向いた。隣のダイニングキッチンが見えて、のぞき込んでいると彼が現れる。
近づいてきた彼が、冷凍コロッケを使ってホットサンドを作ろうと思うと言うので、あら、いいねえ、と返すと、すぐにキッチンへ立った。
何時に起きたの? 8時半くらいです。なにか食べた? 食べてないですよ。お腹空いてる? 空いてますよお。
のんびりとした回答に、思わず、「食べればよかったのに!」と大きな声が出た。後ろ姿から聞こえてくるのは、ふふ、という笑い声、そのあと「まあまあまあ……」という小さな声。ゆるいし、おだやかだ。
どんどん材料を冷蔵庫から出していて、ああ、作ってくれている……と、なんだか横になり続けていることが申し訳なく、ようやく意を決して起き上がる。
まだカーテンは閉まっていた。開けてみると、ぼんやりとした白い光が一気に目に飛び込んでくる。思わずうなり声を上げながら、掛け布団をたたむ。
タイマーが鳴る音がした。もうホットサンドメーカーを火にかけて、パンの片面を焼き終わったことに気づく。あとはひっくり返して4、5分ほど焼けば完成だろう。自分の体感よりも、どんどん早く時間が過ぎている。
スリッパを履き、洗面所へ移動し、顔を洗う。一連の動作の中で、母親に今日中に電話しよう、などと考える。
この前日に、家族からの大量のLINEが届いた。そこに書いてある事実を、わたしはどこか知らない人のネットニュースのように眺めた。読み終わってしばらくそれを思い返していると何度か気が抜けてしまい、会話の一部、相手の話がすっぱ抜けてしまう、と言うことを繰り返してしまった。
眠りが浅かった(であろう)要因の一つは、それなんだろうと思う。「今日電話できる?」。母にそうメッセージを送って、ホットサンド完成間近の彼に近づいていった。きっと美味しいですよ、というゆるく、おだやかな人にいつも感謝ばかり。
2024/09/30 曇り
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