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読書メモ③科学的な適職

世の中にはさまざまなキャリアアドバイスがあるが、その大半が個人の経験や嗜好にしか基づいていない。統計的なデータや研究結果を現実に活かすには、自分の価値観ライフスタイルを組み込んだ自分だけの適職の選び方を編み出す必要がある。

最高の職業の選び方

就職と転職の失敗は、およそ7割が視野狭窄によって引き起こされるという。つまり、ものごとの一面にしか注目できなくなり、その他の可能性を全く考えられない状態にあることを意味する。ここから得られる教訓は、仕事選びについてもっと徹底的に考え抜くべきであるというシンプルなものである。大量の選択肢を前にし不安や混乱の感情に襲われる現代人が多い中、どのようにして適職を選ぶのか。ここで言う適職とは、個人の幸福が最大化される仕事を意味する。最大の目的は意思決定の精度を上げて、正しい仕事を通して人生の幸福度を上げるということ。

幻想から覚める

仕事選びにおける7つの大罪。仕事選びで陥りがちな幻想、すなわち誰もがハマりがちな定番のミスを知っておくこと。

①好きを仕事にする いかに好きな仕事であっても、現実には大量の面倒が起きる。「好きな仕事」を求める気持ちが強いほど、仕事に対するギャップを感じやすくなり疑念が生まれる。その仕事に情熱を持てるかどうかは、人生で注いできたリソースの量に比例する。つまり、過去に注いできた努力の量が多くなるほど情熱の量も増加する。仕事への情熱は、なんとなくやっていたら楽しくなってきたという感覚から始まる穏やかなプロセスである。

「天職につくことができた人の大半は、事前に人生の目的を決めていなかった。彼らが天職を得たのはほとんどが偶然の産物だった。」

②給料の多さで選ぶ お金で幸せは「ある程度までしか」買えない。その理由として、お金を持つほど限界効用が下がること、お金の幸福は相対的な価値で決まることにある。現実的には年収400~500万あたりから幸福度が上がりにくくなる。

③業界や職種で選ぶ 専門家だろうと有望な業界を予測することはできない。そもそも、人間は自分の変化すら正しく予想できない。大半の人は現在の価値観や好みがもっとも優れていると思い込み、過去に起きたような変化が未来にも起きる可能性を認めない。世界は目まぐるしく変化していき、その状況に応じて好みも価値観も変わり続ける。

「未来の状況は分からないが、少なくともわれわれが想定しているものとはまるで違うことははっきりしている。そうした認識に沿って計画を立てるべきだ。」

④仕事の楽さで選ぶ 適度なストレスは仕事の満足度を高める。仕事の負荷が低いからと言って、必ずしも精神的に楽になれるわけではない。良いストレスは仕事に取り組むモチベーションを高め、身体の疲れも取り除く働きがある。

⑤性格テストで選ぶ そもそも解釈が主観的なため、性格診断によって適職が見つかる保証はどこにもない。

⑥直感で選ぶ 常に直感で考える人の人生は自己正当化に終わる。人生の選択において、論理的に考えて選択し合理的な精神を貫く人のほうが、人生の満足度や客観的評価が高いと言われている。

⑦適性にあった仕事を求める 自分と同じような強みを持っている人が周囲にいる場合、その強みの相対的な市場価値が下がる。つまり、強みを生かして満足度を上げるかは、周囲の人との比較で決まるため、強みを生かせば仕事がうまくいくというわけではない。

未来を広げる

仕事の幸福度を決める7つの徳目。発想の幅を広げるための手がかりとなる幸福な仕事に必要な条件を知り、多くの可能性に目を向ける。すべては視野を広げることから始まる。たいていの人は「この仕事は良さそうだ」と思った直後から思考が狭まり、それ以外の選択肢に目を向けられなくなってしまう。

①自由 自由ほど仕事の満足度を左右する要素はない。労働時間や仕事のペースの裁量権がどれだけあるのか。どこまで自分が自分の上司でいられるかという観点。

②達成 人間のモチベーションが最も高まるのは、物事が前に進んでいる感覚小さな達成の重要性。仕事のフィードバックがどのように得られるか。

③焦点 目標を達成して得られる利益に焦点を当てて働く攻撃型、目標を責任の一種としてとらえ、競争で負けないために働く防御型。前者は進歩や成長を、後者は安心と安定を実感しやすい仕事。自分のモチベーションタイプに合った働き方を選ぶ。

④明確 信賞必罰とタスクの明確さ。会社に明確なビジョンがあるのか、そのためにどのようなシステム化を行っているか。個人の貢献と失敗を目に見える形で判断できる人事評価のしくみは整っているか。

⑤多様 人間はどのような変化にもすぐに慣れてしまう性質があり、日常の仕事でどれくらい変化を感じられるのかが重要となる。自分が持つスキルや能力を幅広く生かすことができ、業務の内容がバラエティに富んでいる職場ほど良い。プロジェクトの川上から川下まで関与できるか。

⑥仲間 助けてくれる仲間がいるだけで幸福度がまるで違う。職場での人間関係の悪化が、健康におよぼす影響は計り知れない。組織に自分と似た人がどのくらいいるのか。

⑦貢献 その仕事がどれだけ世の中の役に立つか、どれだけ他者の生活に影響を与えられるかというタスク重要性。他者への親切により、自尊心親密感自立性の欲求が満たされる。ヘルパーズ・ハイ。

悪を取り除く

最悪の職場に共通する8つの悪。悪は善より強い。ネガティブな経験はポジティブな経験よりも心に残りやすい。仕事から安定して満足感を得るためには、職を選ぶ前にできるだけネガティブな要素を排除してから選択肢を絞り込んでいく必要がある。

①ワークライフバランスの崩壊 仕事がプライベートを侵食すれば当然ストレスは激増する。休日に仕事のことを考えるだけでも心身は削られるが、本人はそのストレスになかなか気づけない。

②雇用が不安定 フリーランスや個人事業主などは特に、不安定な賃金や勤務スケジュール、次の仕事が見つからない不安などがストレスとなり、長く続けるほど溜まっていく。

③長時間労働 働きすぎが体に悪いのはもはや常識。データによると、週の労働が40時間を過ぎたあたりから体が壊れ始める。

④シフトワーク シフトワークは体内時計のリズムを破壊し、睡眠の質が下がすなど、精神と身体の両方に甚大な悪影響を及ぼす。

⑤ソーシャルサポートがない 最高のチームに必要なのは心理的安全である。職場の同僚との関係性の影響力は大きい。

⑥組織内に不公平が多い 人間は、自分の幸福を他人との比較で決める生き物であり、賃金の不公平感には特に敏感である。組織の信賞必罰やタスクの明確さが重要となる。

⑦長時間通勤 通勤時間が長くなるほど、ライフスタイルがむしばまれていき、結果的に不幸になりやすい。

歪みに気づく

全ての人間が生まれ持つ偏ったものの見方(=バイアス)とほどよく距離を置く。自分で自分を騙し続けるセルフ詐欺の悪循環から抜け出さない限り、いつまでも適職は見つからない。

確証バイアス 自分が一度信じたことを裏付けてくれそうな情報ばかりを集めてしまう心理。同じような考えをして成功を収めた人の情報ばかり集め、同じような考え方をする仲間とばかり付き合う。最後は自分と違う生き方を好む人たちを批判し始める。

アンカリング効果 選択肢の掲示のされ方によって、全く異なる決定をしてしまう心理。最初に提示された数字や条件が基準となり、その後の判断が無意識に左右される。

真実性の錯覚 繰り返し目にしたという理由で、その情報を真実に違いないと感じる心理。数字やデータの裏付けがなくても事実だと思い込む。

感情バイアス 自分の考えが間違っているという確かな証拠があっても、ポジティブな感情を引き出してくれる情報に飛びついてしまう心理。

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