GW読書感想文④幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門~自分だけの「価値」の見出し方~

 どうもみなさん、ちゃんでらです。緊急事態宣言、延長されますね。またしばらく家に引きこもる日々が続きそうです。個人的には買い物はAmazonなどを使えば何とかなると思う一方で、伸びに伸びた髪をいつ切ってもらおうかタイミングに苦慮しております。せめて前髪だけでも自力で切りたいですが、お粗末な事になりそうなので止めておきます。
 さて今回は第4回として「幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門」という本を紹介します。この本は、ネガティブな性格に苦しんでいる人、特にそのネガティブさを必死に変えようとしたけど、変えられなくて苦しい思いをした人にお勧めできる本です。

➀概要

 この本は2007年に出版された「The Happiness Trap How to Stop Struggling and Start Living」という本が、2015年にジャーナリストでもある翻訳家の岩下慶一氏によって翻訳され、筑摩書房から出版されたものです。原著の作者はイギリス出身の医師であるラス=ハリス氏で、心理療法士としても活躍している方です。この本で紹介されている「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー」によって自らの不安を克服し、国内外問わずACTに関するワークショップを実施しているストレスマネジメントの権威です。
 ハリス氏はこの本以外にも、対人関係におけるマインドフルネスの重要性を説いた「相手は変えられない ならば自分が変わればいい マインドフルネスと心理両方ACTで開く人間関係」を出版しています。

 この本の主題としては「幸福であるのが当たり前であるという認識があるゆえに、幸せでない状態から脱しようとすることが不幸につながる」とし、そのような「幸福の罠」から脱し、有意義な人生を送るためにACTを実践する方法を紹介するという流れになっています。本は3章で構成されており、第1章では「何故幸福の罠をしかけてしまうのか?」として罠の構造について細かく解説しています。第2章では「あなたの内面世界を変える」としてACTを構成する6つの方法の内、マインドフルネスに深く関係している4つの方法を紹介しています。そして第3章では「生きるに値する人生を想像する」として、自分にとって価値のあるものは何か?それを追求するために何が必要か?について紹介する章となっています。第1章は40pほどで、幸福の罠について短く簡潔にまとめてあるので、読みやすいです。この本の本筋としてはACTをいかに実践していくかという事になるので、第2章以降は、実践的にどう行うか、具体的な方法が記してあります。従ってまとまった時間を設け、実際にACTの成果を実感しながら読むのが最適だと思われます。

 お話の本筋には直接関係ないのですが、この本における重要な考え「マインドフルネス」について簡単に説明します。簡単に説明すると「今、ここに集中して生きる事」を指します。人間は生きていると様々な不安や恐怖にかられ、過去を嘆いたり、未来を憂いたりすることがあると思います。そういった思考の奔流に対し、「判断をせず、あるがままにする」「今この瞬間に集中する」姿勢の事を指します。強い感情や思考に対して、あれこれコントロールしようと躍起になるのではなく、それはそれとして認め今自分がやるべきことをやる、という考え方ですね。ここから先この考えは良く出てくるので、覚えておいてください。

②幸福の罠とは?

 それでは第1章の内容から説明していきます。我々の身の回りにある「幸福の罠」は、以下の4つに分かれているとされています。

➀幸福は誰にとっても当たり前の状態である。
②幸福じゃないのは自分自身に欠陥があり、それを直す必要がある。
③幸福であるためにはポジティブ感情が不可欠で、ネガティブ感情は不要である。
④自分の思考や感情はコントロールできなければいけない。

このような思い込みが、「感情や思考に善悪の判断を下し、悪いものは排除し、良いものだけが必要である。」「コントロールできて当然だ」という考えを生んでしまい、何が何でも感情をコントロールし幸せであり続けようとさせてしまうとしています。しかし、コントロールすることは長期的には効き目が薄く、何より追い払った感情はまた戻ってくるため、自己嫌悪の悪循環に巻き込まれてしまいます。その結果、長期的に健康を損ない、自分が本当になすべきこと、価値のある事に取り組むことが出来なくなると言っています。つまり、「幸福になるために嫌な感情を排除することで、その感情がかえって増幅し、より幸福から遠ざかってしまう」これこそが幸福の罠の招待であるとしています。その上で、思考や感情との関係を改め、自分にとって価値がある事を中心にした行動をとることの必要性を説いています。
感情をコントロールしようとするがあまり、それによって結果的に不幸になってしまうという逆説的な真実をこの章では提示しています。

③内面世界を変える方法

 続く第2章では、幸福の罠から抜け出すためのACTの6つの方法の内、マインドフルネスに関する4つの方法について説明しています。順に紹介していきます。

➀脱フュージョン
脱フュージョンとは、思考と実際の出来事を切り離して考えることを意味しています。この章では、思考はあくまでもただの物語の1つであり、必ずしも現実を反映していたり、絶対に従うべきものではないとしています。
仮に思考と現実の出来事がフュージョンしてしまうと、思考が第一と考え、盲目的に従うようになり、自分の意思なく行動するようになってしまう、としています。ここから脱するためには


・思考は「自分の価値につながる上で、役に立つか立たないか」で考える。
・思考はコントロールできないが、行動はコントロールできるので、行動をどう変えるかにフォーカスする。
・不快な感情は排除せず、あるがままにしておく。
・「自分は~という考えを持っている」というに考え、客観的、違う視点からの声として考える。

事が必要だとしています。そして思考と戦うのをやめ、本当に大切な価値に向き合うために、脱フュージョンを行うべきであるとしています。

②拡張
自分の心の中の不快感に対して、排除するのではなく、心の中に居場所を作ることを指します。そのためには、身体感覚と密接にリンクし、心の平穏を保つことが必要とされています。この拡張は


⑴観察する(頭からつま先に注意を向け、一番不快な部分の感覚を観察する)
⑵息を吹き込む(ゆっくりと深呼吸し、体の至るところに息が吹き込まれるような感覚を感じること)
⑶感情の居場所を作ってやる(感情の周囲にスペースを作り、自由に動き回れるような場所を作る)
⑷容認する(生じた感覚に対し、排除せずにそのままにさせる事

これら4工程からなるとされています。日常のちょっとした場面で不快感を感じた時などに実施して、能力を鍛える必要があるとしています。

③接続
→今この瞬間に起こっていることに集中し、「つながる」ことを意味しています。この節では、思考は自分自身を今現在から引き離してしまう「タイムマシン」でしかないとしています。そこから脱するために、自分自身が見たり聞いたりするもの、1つ1つに注意を向け、その過程で湧き出る思考をそのままにすることが大切であるとしています。実践の為には、毎日実行すること(料理を作る、シャワーを浴びる、洗濯物を干す)時や、退屈だと思う事をしている時に、思考に注意を向けるのではなく眼の前の事に集中する訓練を通して習得できるとしています。

 また、接続するためには「呼吸」を整えることも必要であるとしています。ネガティブ感情に覆われている時、浅く短い呼吸をしてしまうようになるので、体内のホルモンバランスに乱れが生じるとしています。これを解消するためにも、意識的に深呼吸し、現在と「つながる」ことが必要であるとしています。

④観察する自己と思考する自己
→この節では、心を構成する2種類の自己について述べ、観察する自己の存在に気づくことの重要性を述べています。思考する自己とは今までに出てきた何かを考えている自分を指し、観察する自己はその思考する自己を客観的に見ているだけの自分を指します。観察する自己は自分の試行に対して一切の判断や価値基準を与えず、気づきだけを生じさせるものであるとしています。

 この章では、同時に「自分の自尊心を証明する」ことから抜け出る必要性も述べています。自分をすごい人だと証明することは、自分を高める行為を続けるだけでなく、「自分はダメなんじゃないか」という際限ない否定の気持ちとの闘いでもあるとし、まさに終わりのない戦いであるとしています。
そこから抜け出るために、自分であることを認め、他人に優しくするように自分に優しくする必要があると述べています。自分を大切にする重要性を延べているわけですね。

これら4つの考え、思考と現実を切り離し、心に感情の居場所を作り、目の前の事に接続し、自分を大切にすることが第一歩という事ですね。

④価値のある人生を創り出すためには?

 この章では今までのACTを踏まえ、自分自身の大切にしている価値を見つけ、そこを目指すための目標づくりの方法などを説明しています。

⑤価値の確認
→ここにおける価値とは、心の中にある根源的な最も深い欲望であり、人生を通して私たちを動機付ける主要な原理のことを指します。この価値を持つことで、目の前の事1つ1つに主体的に取り組み、「今ここ」に集中できるとしています。ではどのようにすれば価値を見つけられるか?この節では以下の過程で探すべきであるとしています

➀仕事・家庭・友人などの人間関係で、どのような関係を築きたいか。どうふるまい、どんな個性を磨いていくか?
②仕事・教育の場においてどんなスキルを発揮したいか、どんなふうに活躍したいか、どんな人間関係を築きたいか。
③個人的な健康、成長に関して。何をしたいか?どんなグループに入りたいか?自分のライフスタイルをどう変えたいか?
④余暇について。どんな趣味・スポーツ・レジャーをしたいか。もしくはどんな活動をしたいか?

という4項目について紙に書いてまとめ、自分がどこにいるかを考えます。その上で、自分が何を重視し、何を伸ばしたいか、逆に何を伸ばす必要がない思っているのか?をまとめます。その要素の集合体が「価値」であるとしています。

 この節において大切なのは、自分を縛り付けるものが無い、自由な状態だを仮定した上で考える事が大事だとしています。生きていると人の価値や基準に合わせて、自分の持つ価値観がわからなくなる事は往々にしてあると思います。そうならないように、全ての制約から解き放たれることが必要だとしています。

 何故価値を大切にするか?についてですが、価値を追求することで、それに至るまでの過程も楽しむことが出来るとしています。山登りで言うと昇道中すらも楽しみに変えられるのでよいという事です。また、目標はあくまで通過点に過ぎず、その存在意義を考える必要があるとしています。

⑥目標に向かっての行動
→価値について理解したら、今度は計画を立てて行動していくことが必要だとしています。自分が取り組みたい事に対し、➀今すぐできる小さな事を決め、自身を付ける②数日~数週間の間で、価値に一致することをを細かく決める③中期(数週間~数か月)の中期④長期間(数年)で何を成したいか考え、実行する必要があるとしています。

 目標を達成するためには、そのステップを細かく分け、何が必要か、いつ行動を起こすべきか考える必要があるとしています。それすら難しい時は、目標の焦点を変えたり、準備のための行動を増やすことが必要だとしています。


⑤感想

 この本を読んだ感想としては、今まで自分が行ってきた、感情との闘いは意味がないという事を実感したことです。自分は他人と比べたり、実力がなく落ち込むことが多い学生時代でした。そしてそのつらさをわかってほしい気持ちが強すぎて他人に疎まれ、さらに落ち込んでしまったという経験がありました。いま考えると、それも自分の感情をコントロールしようとしすぎて、本来すべきことが出来ず幸福の罠に陥っていたと思います。感情や思考と戦うのはきりがないので、それと戦うことをやめ、受け入れて生きることを実践していきたいです。
 また、価値と目標を取り違えず、根本にある価値観を大切にしていきたいとも感じました。目標はあくまで通過点でしかなく(お金持ちになる、家を買いたいなど)、その先にある自分が大切にしているものを明らかにする重要性を学びました。

⑥最後に

 いかがでしたでしょうか。かなり時間がかかり、正直大変でした・・・
一旦GWの感想文シリーズはこれで終了になりますが、読んだ本のレビューは続けていこうと思います。ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

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