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エンタープライズ情報システムの障害 傾向と対策に関する研究 要旨

題目:エンタープライズ情報システムの障害 その傾向と対策に関する研究
~ インシデントデータベースによる障害事例分析 ~
 
情報システムの障害過去事例について数量分析を行った先達の知見はシステム管理の教科書で述べる内容にも満たないものだった。エンタープライズ情報システム(大規模情報システム:大企業および国家・自治体向け)の現場で必要としている知見は、効果が見込めかつ具体的な行動がとれる内容である。

本論文は様々な現場で役立つ知見を提示するべく、数量分析を行っている現場について明らかにし、参照者が同様の分析活動を実践できるようにすることを1つ目の目的に据えた。またそれに続いて行う分析の方法や分析結果について明らかにし、現場で必要な知見の提示を行うことを2つ目の目的とした。

先行研究をレビューした結果、システム障害について一次データを扱っている研究が無いことが分かった。そこで、本研究は、フィールド研究によって一次データを収集し提示したことにオリジナリティがあると言える

収集した一次データとなる情報システムのインシデント情報を利用するため、まずは情報取得先企業に関する調査を行い、協力者を明確にした上で、インタビュー調査をもとに取得先企業が提供するサポートサービスや、データが生成される原点になるサービスフローについて明確化をはかった。

次いで、データ作成過程について明らかにし、データの検証を行った。
データの作成過程については協力者へ丹念にヒヤリングを行い、データの目的、作成経緯、それに関わる人々の役割や作業内容について明らかにした。これに加え、データに関する作成周期、データ内容、作成方法、データの評価過程および再評価過程についても明らかにした。
データの検証では、整合性と網羅性について検証を行った。特に網羅性の検証では、上場企業の売上上位企業の大半を網羅していることが明らかになり、データから導かれる知見が多くのエンタープライズ情報システムに当てはまることを示すことができた。

データの分析では、時系列、原因、製品群、認識時場所、認識時動作、状況、解決策、複合の8種類の分析を行った。個々の分析で発見した特異点については考察で取り上げた。その中でも時系列分析にて障害事例件数トレンドが大きな特異性を示していた。これは、ヒヤリング調査によりサポート事業担当者と顧客との関係性に依存することが判明したが、こういった現場の真実は、先行研究ではまったく言及されていなかった知見である。

また、複合分析では、「メールサーバー」の「システムダウン」時の「解決策」という3つの要素を組み合わせて分析し、システム管理者が障害発生時あるいは障害予防策として取るべき具体的な行動として、リカバリー準備、ディスク監視およびシステム再起動の3点を示すことができた。複雑な分析についても先行研究では知見を導いておらず、具体的な行動を示せたことに有用性がある。

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