ラキヤの国に輝く赤い星(スペルリガ スルビイェ22-23レビュー)
ずべまりです。日本人ズヴェズダシュ(ツルヴェナ ズヴェズダのサポーター)です。
22-23シーズンのセルビアリーグ、スペルリガ スルビイェ(モツァルト ベト スペルリガ)は6月4日の入れ替え戦で全日程を終了。ツルヴェナ ズヴェズダがクラブ史上34度目のタイトル、リーグ6連覇、そして23-24シーズンのチャンピオンズリーグ グループステージ進出を果たしました。またズヴェズダはクプ スルビイェで3連覇を果たし、3シーズン連続の国内二冠を達成しました。
今回はそんな22-23シーズンのスペルリガ、16クラブの戦いを振り返っていきます。
順位表
得点ランキング
ベストイレブン
MVP
最優秀若手選手
最優秀監督
ツルヴェナ ズヴェズダ
スペルリガ スルビイェ6連覇、クプ スルビイェ3連覇。3シーズン連続で国内二冠を達成し、セルビアサッカー史上初めてCLグループステージへのストレートインを果たした。
一方UEFAの大会では不振、CLではプレイオフでマッカビ ハイファ(イスラエル)に敗れ、ELでもグループステージで最下位となり、年越しを待たずに欧州での戦いを終えた。CL出場を逃した段階でデヤン スタンコヴィッチは退任、後任のミロシュ ミロイェヴィッチも二冠こ達成したがシーズンいっぱいで退任。23-24シーズンの新監督は前述のCLプレイオフでマッカビ ハイファを率いていたイスラエル人指揮官バラク バハルに決定している。
レギュラーシーズン30試合終了時点で得点ランキング首位だったアレクサンダル カタイはプレイオフで7試合ノーゴールと大ブレーキ、17ゴールのままシーズンを終え得点王を逃した。オスマン ブカリがプレイオフで4ゴールを挙げ最終的に12ゴール。11ゴールのアレクサンダル ペシッチと10ゴールのゲロール カンガまでが2桁得点を達成し、キングス カングワとミルコ イヴァニッチが8ゴールを記録、スペルリガ最多96得点という圧倒的な攻撃力をもたらした。最終ラインではスペルリガ最少19失点の中軸を担ったGKミラン ボリャンとCBアレクサンダル ドラゴヴィッチに今シーズン限りでの退団説が出ている一方、ドラゴヴィッチとコンビを組んだ期待の若手DFストラヒニャ エラコヴィッチは残留してのCL出場が濃厚となっている。また右サイドバックにはアレックス ビーゴ、ボランチにはスルジャン ミヤイロヴィッチといった絶対的レギュラーがいる一方、左サイドバックではミラン ロディッチに代わって若いイラクリ アザロヴィが起用されることが終盤戦に入って増えた。
ベストイレブンにはボリャン、ドラゴヴィッチ、エラコヴィッチ、カンガ、カタイの5人が選出された。また最優秀若手選手にエラコヴィッチ、最優秀監督にミロイェヴィッチが選出されている。
今夏にはコペンハーゲン(デンマーク)からMFマルコ スタメニッチが、スラヴィア プラハ(チェコ)からMFピーター オラインカが加入することが冬の時点で決定しているが、バハル新監督によって選手が大きく入れ替わることが予想される。
TSC
ジャルコ ラゼティッチ監督の下クラブ史上最高の成績、スペルリガ2位で20-21シーズンのEL予選以来3シーズンぶりの欧州大会となるCL予選3回戦の切符を手に入れ、クプでも準決勝に進出した。来シーズンはCL予選3回戦とELプレイオフで共に敗れてもECLグループステージに出場できる。
10ゴールを決めたサシャ ヨヴァノヴィッチがスペルリガのシーズンMVPに選出された。13ゴールでペタル ラトコヴがチーム得点王となり、イフェト ジャコヴァツも10ゴールで2桁得点に乗せ、マルティン ミルチェフスキが7ゴールで続いた。ヨヴァノヴィッチと共にDFミロシュ ツヴェトコヴィッチとMFルカ イリッチもベストイレブンに選出され、冬にラドニチュキ1923から加入したドゥシャン ツヴェティノヴィッチ(元横浜FM、徳島)もレギュラーとしてCL予選出場権獲得に貢献した。
チュカリチュキ
ドゥシャン ケルケズ監督に導かれスペルリガで3シーズン連続3位、クプでも決勝で先制しての準優勝という好成績を収めた。ECL予選では2回戦でラシン ユニオン(ルクセンブルク)を破ったが3回戦でトゥウェンテ(オランダ)に大敗している。来シーズンはELプレイオフに出場し、敗れてもECLグループステージの出場権が保障される。
ムハメド バダモシはプレイオフで無得点に終わり11ゴール、ベストイレブンに選出されたマルコ ドツィッチと共にチーム得点王の座を分け合い、ジョルジェ イヴァノヴィッチが9ゴールと続いている。守備陣ではDFネマニャ トシッチがベストイレブンに名を連ねた。
パルティザン
EL予選ではAEKラルナカ(キプロス)に敗れ、ECLではシェリフ(モルドバ)の前に敗退し、クプでは初戦でプルヴァリガ スルビイェ(2部)のラドニチュキSMにPK戦の末ジャイアントキリング献上、スペルリガでは旧ユーゴスラビア時代の89-90シーズン以来にして旧ユーゴ崩壊以降最悪の4位。
イリヤ ストリツァを解任し、ゴルダン ペトリッチも解任したパルティザン、ただイゴル ドゥリャイに23-24シーズンも監督の椅子を任せるつもりらしい。来シーズンのパルティザンはECL予選3回戦から。
リカルド ゴメスがプレイオフで4得点積み上げ、19ゴールで2シーズン連続の得点王を獲得しベストイレブンにもパルティザンから唯一選出。ビブラス ナトホも得点ランキング5位タイの12ゴール、ただ3番手のクイーンシー メニフが7ゴールと得点力不足が顕著だった。
シーズンを通してクラブもサポーターもゴタゴタしまくっていたのが外から見ていて面白かった。
ヴォイヴォディナ
ここから少しずつ語ることがなくなってくるなあ…
スペルリガを5位で終え、ツルヴェナ ズヴェズダのクプ優勝に伴い来シーズンのECL予選2回戦出場権が回ってきた。クプでも準決勝進出と今シーズンも安定した強さを見せた。
ニコラ チュミッチがプレイオフでも4ゴールと好調を維持し、13ゴールで得点ランキング3位タイ。ウロシュ ニコリッチが8ゴール、ヴェリコ シミッチが7ゴールと続いた。
ノヴィ パザル
序盤には首位に立ったところからするとややガッカリ感こそあるものの、13位で入れ替え戦の末残留した昨シーズンを考えれば快進撃といえるだろう。クプでも準々決勝に進出し、欧州大会の出場権にこそ届かなかったが良いシーズンを過ごした。
アンドリヤ マイデヴァツはレギュラーシーズンで12ゴールを決めたがプレイオフでは不発、続いたのは7ゴールのボイツァ ニクチェヴィッチだった。また、キャプテンだったGKフィリプ クリャイッチ(元大宮)はシーズン途中の3月にサポーターから暴行を受け退団している。
ヴォジュドヴァツ
9位コルバラと勝ち点2差でプレイオフ進出は好成績と言っていいだろう。最終的にはスペルリガで7位、クプで1回戦敗退という結果になった。
レギュラーシーズンで7ゴールだったミロシュ パントヴィッチがプレイオフでノーゴールながらチーム得点王、合計でもスペルリガ全体で5番目に少ない29得点と苦しんだ。また、シーズン開幕に合わせてモンテネグロから千徳有寛が加入したが冬に退団している。
ラドニチュキ1923
9位コルバラと勝ち点で並んだものの直接対決で上回りプレイオフ進出、14位で入れ替え戦に回った昨シーズンからは躍進といえる。クプではプルヴァリガ優勝を果たしたIMTに敗れ初戦敗退となっている。
7ゴールのミルティン ヴィドサヴリェヴィッチがプレイオフ無得点のままチーム得点王に、ヴォジュドヴァツ同様プレイオフでは苦しんだ。ドゥシャン ツヴェティノヴィッチ(元横浜FM、徳島)はシーズン開幕時に加入するとレギュラーとして活躍、冬に移籍したTSCでも定位置を確保した。
結局プレイオフに進出した8クラブはレギュラーシーズン終了時と順位が全く変わらなかったのね…
ナプレダク
レギュラーシーズン10位の貯金を活かしてプレイアウト最上位でシーズンを終えた。クプでは準々決勝進出を果たしている。
チーム得点王は5ゴールのマルコ シャリッチとネボイシャ バスタイッチ。これはスペルリガで2番目に少ない数字であり、チーム全体でもまたスペルリガで2番目に少ない27得点に留まっている。
スパルタク
レギュラーシーズンは入れ替え戦圏内の13位で終えたものの、プレイアウトで勝ち点14を積み上げ残留した。
チームトップの得点数を記録したのは8ゴールのルカ ビイェロヴィッチ。日本人MF志村謄は17-18シーズンから中軸として活躍していたが、今シーズン限りで契約満了によって退団した。
ムラドスト
レギュラーシーズンを14位で終え入れ替え戦行きの危機にあったものの、プレイアウトで8クラブ中最多の勝ち点15を積み上げ残留を果たした。
チーム得点王はミラン ボヨヴィッチ、前半戦のみで11ゴールと爆発したが冬にウズベキスタンへと去っていった。ニコラ ヨイッチが7ゴールでそれに続いている。スペルリガ2位タイの多さの57失点が痛かったか。
ヤヴォル
プルヴァリガ2位で昇格してきた今シーズン、レギュラーシーズンとプレイアウトを共に12位で終え入れ替え戦に回ることなく残留を果たした。
ペタル ギギッチが8ゴールでチーム最多の得点を記録、7ゴールのノーマン キャンベルと6ゴールのルカ ゴイコヴィッチと3人でトリプルエースを形成し昇格組の攻撃陣を引っ張っていた。
ラドニチュキ
レギュラーシーズンこそ11位だったがプレイアウトで勝ち点を6しか稼げなかったのが響き入れ替え戦へ、第1戦でプルヴァリガ4位のインジヤに1-3で敗れ降格が現実味を帯びたが第2戦のホームで3-0、大逆転で残留を決めた。その一方クプでは準々決勝まで進んでいる。そして3シーズンぶりの欧州大会となったECL予選では2回戦でグジラ ユナイテッド(マルタ)にPK戦の末敗れた。
チーム得点王はニコラ シュトゥリッチ、前半戦で10ゴールを決め2桁得点を達成したが冬にシャルルロワ(ベルギー)に移籍した。それに続く6ゴールのミリャン シュクルビッチは反対にプレイオフのみで3ゴールを決めている。スペルリガ最多の61失点を記録した守備の脆さが足を引っ張ったか。そして昨シーズンのスペルリガ4位に主力として貢献した「ミチャ」こと道渕諒平は開幕から4試合連続で出場したものの契約を延長せず冬に退団、この夏にバルザン(マルタ)に加入した。
がんばれ、Mića!マルタでもSamo napred(ただただ走れ)!あなたを応援している人はここにいます!
そして今日(記事公開日)が29歳のお誕生日とのことです、おめでとうございます!
ラドニク
レギュラーシーズンを自動降格圏内の15位で終えたがプレイアウトで勝ち点を13積み重ね入れ替え戦に辿り着いた。入れ替え戦ではプルヴァリガ3位のRFKグラフィチャル(ツルヴェナ ズヴェズダのリザーブチーム)相手に第1戦で1-1と引き分け、第2戦のホームで2-0と勝利し残留した。
チーム得点王は9ゴールのアンドリヤ ラドゥロヴィッチだが、その内訳はシーズン前半にムラドストNSで4ゴール、シーズン後半にラドニクで5ゴールというものである。それに続くのは5ゴールのミロシュ スパシッチだが、彼もまた冬にハンガリー移籍で去りシーズンを通しては所属しなかった。
グラフィチャルがスペルリガに来ちゃうとズヴェズダのリザーブチーム問題が面倒になりそうだったからこれで良かったのかなあ…ただそれを決めたのがズヴェズダからレンタル移籍していたラドゥロヴィッチのPKというのがまた…
コルバラ
レギュラーシーズンは8位ラドニチュキ1923と同勝ち点の9位、ギリギリでプレイアウトに回った後は8クラブ中最少の勝ち点4しか積み上げられず、それでも9位のままもちろん残留…
のはずだった。
5月に入ってUEFAから衝撃的な報告、なんとコルバラがプレイアウトのムラドストNS戦とスパルタク戦で八百長を行っていたことが発覚。FSSは調査を経てコルバラの勝ち点9を剥奪(ムラドストNSとスパルタクには罰金300万ディナルが科せられた)、それによってコルバラは15位となり自動降格が決定した。
チーム得点王はウロシュ ジュラノヴィッチとアンテ ヴクシッチで4ゴール、これはスペルリガで最も少ない数字。57失点という数字は2位タイという多さだった。下部組織出身のDFニコラ ヴァシリェヴィッチ(元徳島)はキャプテンとしてチームを牽引していたのだが…。
ムラドストNS
18-19シーズンの5部から4シーズン連続でリーグ優勝、プルヴァリガ優勝クラブとしてクラブ史上初のスペルリガに臨んだがレギュラーシーズン最下位、プレイアウトでも最下位を脱出できず自動降格となった。
チーム得点力は6ゴールのノヴィツァ マクシモヴィッチ、ちなみにシーズン途中まで在籍していたアンドリヤ ラドゥロヴィッチは4ゴールで実質2位の得点数。25得点という数字はスペルリガで最少だった。
ズヴェズダはCL本戦でどのような戦いを見せられるか、TSCは欧州の名門を破ってCL出場の夢を掴めるか、そしてチュカリチュキはEL予選に、パルティザンとヴォイヴォディナはECL予選に挑む…オルロヴィことセルビア代表も2000年以来の本戦出場を目指してEURO予選に向かいます、23-24シーズンもセルビアサッカーはセルビア人のハートのように熱く、熱くなること間違いなしです。
ただ来シーズンは今のところ日本人選手がいないんだよなあ…
それでは来シーズンの開幕の日、7月22日にまたお会いしましょう!Видимо се!
参考文献:スペルリガ スルビイェ公式サイト、セルビアサッカー協会公式サイト、Transfermarkt