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手紙1_本藤から宮田へ

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みなさまへ

ご無沙汰しております。
アーティストの本藤です。
今年も音楽家の宮田さんと共にクリエーションをする事が決まりました。
そこで、去年に引き続き手紙のやり取りを公開でやろうという事になり、今こうしてキーボードを叩いています。

この往復書簡は2人のスケッチブックの様な場所です。
今年は様々な試みをたくらんでおりますので、是非ともお付き合いくださいませ。

本藤 太郎

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プロローグ


2021/04/13 23:48
あなたがメッセージを送信: 4月13日 23:48

すんませんこんな時間になってしまいました。
つらつら思いついた事をポストしていきますね。

【往復書簡について】
前回は文章を書く事に追われてお互いクリエイションが出来てなかった様な気がします。
加えて、フワッとした感じで進んでいって、読者にとって取っ付きづらいモノになってしまったと考えています。

なので

・書簡の最後に相手にお題を出して、受けた方はそのお題でスケッチやドローイング(広い意味です。音でもなんでもok)を作り、それを添付して返信する。また、その時に相手へのお題も出題する。
それを受けた側はまず相手のドローイングの感想を述べ、また、受けたお題のドローイングを返す……

みたいな仕掛けとしてのサイクルはどうでしょうか?

考えながら手も動かせて前向きな試みかと思いますが。
更に何かアイデアあればくださいまし。

・ちゃんと〆切を設ける(これめちゃくちゃ大事ですよね)

・時々ラジオみたいに(例えば2往復したらとか決まりを作って)声で対談し、ショートムービー(2人の会話の上にそれまでのドローイングや撮り下ろしの映像や書き下ろしの曲や音が乗るなど)にする。

例えばこんな具合に展開していったら我々のやり取りが立体的になる気がしませんか?

【作品の形式ついて】
個人的には、前回は宮田さんを私のBGMにしてしまった様な反省がありました。

なので、もっと有機的なものにしたいと考えています。
映像作品に寄っても良いし、舞台に振っても良いし、展示物を作っても良いし、形式として演奏会にしても良いと思います。

使えるものを上手く組み合わせて制作できたらと思います。

【作品のコンセプトについて】
これは往復書簡にも書きますが、大掃除をしていたら2017年に作った作品のステートメントが出てきました。

内容としては社会や物事の〈隙間〉を大切にしたいと書いてありました。

思えば、常に自分は隙間や端っこ等の、気が付こうとしないと気が付かない様なモノに感心を持ち、制作を続けていた事に気が付きました。(これも隙間です)

なので、こちらからの書簡第一投はそんな話にしようと思います。
願わくばそれが今後2人の間で上手くドライブします様に…

【これからについて】
先ずは往復書簡の第一弾を書きます。
今回の企画のイントロダクション的な建て付けになる予定です。
頑張りますっっ!


2021/04/16 9:37
Ryosukeさんがメッセージを送信: 4月16日 9:42
すみません、ちょっと体調を崩しまして、連絡が遅れてしまいました。

Ryosukeさんがメッセージを送信: 4月16日 9:42
内容、把握しました。確かに前回は、書くのがメインになってましたからね…笑

Ryosukeさんがメッセージを送信: 4月16日 9:42
僕自身も、書いている分には楽しかったのですが読み手にとって取っ付きやすい内容だったかと言われると疑問な部分もあったので、お題形式にしたり対談を盛り込むのもありだと思います。

Ryosukeさんがメッセージを送信: 4月16日 9:42

作品についても、やはり書く方に時間を取られて内容を掘り下げる時間がなかった気がしていて…。
今のところ、ZAFのMTGではパフォーマンスが前提で話が進んでいる雰囲気ですが、内容によっては展示物など形式を変えても良いかと思っています。
引き続きではありますが、往復書簡お待ちしております!

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宮田さま

時の流れとは早いもので、気が付けば5月になってしまいました。

去年の10月に一緒に舞台をやってから現在までに猫が失踪したり、同居家族が倒れたり、また別の親戚が急逝したり、猫が帰ってきたり、法的な争いの渦中に巻き込まれる事になったり、ワクチンのゴタゴタで関係各所とわちゃわちゃやり取りをしたりと、全く手を動かす時間がありませんでした。

人は一体一生の間に何枚の書類に名前を書かされ、人質にされ続けるんでしょうね。
正直なところ疲弊しています。


-まず、敵を探すことを止める為に-


さて、今年の制作についてです。

自分自身の去年の反省点として、宮田さんと作品を作る上で〈芸術〉という言葉や制度に囚われ過ぎていたなと思っています。

どういう事でしょう。

そもそも私の表現の出発は宮田さんと同じ様に音楽でした。
当時湘南ではスカやレゲエ、パンクやハードコアが盛んで、私自身もその渦中にいました。

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その後美大へ進み、美術史を学ぶうちに所謂〈前衛〉や写真で言えば〈プロヴォーク〉といった様々な運動に出会いました。
これが衝撃的で、パンク出身で万年反抗期の自分にとって、彼らの「戦う感じがうってつけ」(懐かしの童子-T)で、ファインアートにのめり込むきっかけになりました。

美術(主に近代以降)の歴史はよく「父親殺し」だと言われています。
簡単に言えば、歴史の最先端に旗を掲げる事を目的としたある種の知的ゲームですね。

そのヒリヒリした感じが格好良くて、自分もどうにかそこに参戦したくて多くの本を読んだり、制作をしたりしていました。

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しかし、当たり前の話ですが、歴史にはすべからく記述者が存在するわけで、歴史の最先端に旗を掲げる事を主たる目的として活動するのは、つまり記述者の事を意識する事になるので、それってどうなのかしらと今更ながら思う様になりました。それに、〈歴史〉の多くは、古今東西、結局は力を持っている男性の視点によって編まれているものですよね。(昨今美術史の見直しはされていますが)

なんだかずっと反抗して戦っている気になっていただけで、ビッグ・ブラザーに見つめられていただけな気がする様になりました。果たしてそれが自分の表現だったんだろうかと...

また、結局制度としての芸術って都市の文化なんですよね。

このコロナ禍で都内で活動する事が激減し、その事についてもよく考える様になりました。
で、生まれ育ち、住んでる場所を見直さなんとアカンなあと思っての交流センターへの就職やZAFへの復帰というものがあります。


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-眼差さなければならない-


とまあ、ざっくり書きましたが、紆余曲折あって、素朴な表現を取り戻したいよなって思っている次第であります。

と、言うよりかは、ようやく他者の眼差しではなく、自身の視線を本当の意味で大切に出来る様になれそうな予感がしています。

それはつまり、敵を打ち倒す為に敵を探すことを志向するのではなく、自身の切実さを今一度中心に据えて動き直したいという事です。
とはいえ、自己表現ではなく。

えらいややこしい話になってしまいました。

だから、つまり、一旦私は〈芸術〉を置いてみようと思います。
そうした姿勢の上で、宮田さんとは〈creation〉をしたいと考えています。 もっと言えば先ずは〈recreation〉でも良いと思います。

で、結果として残されたものがどこかで〈芸術〉になれば良いと感じています。

ほら、なんだか急に自由じゃありませんか?


-今、俺は美を前にしてお辞儀の仕方を心得ている-



そんで、じゃあ実際何をしようかと思ったかと言うと、



何も思い浮かびませんでした!!


畜生!闘争(あるいは逃走)しかして来なかった!


もうだめだ!おしまいだ!!

はい、終了ー!閉店ー!


と酩酊しながらひっくり返っていたら仲本さん(逗子アートフィルム代表)がTwitterで

「逗子アートフィルムは、実験ドキュメンタリーの※バルビゾン派になることを目指して活動を展開しています。」https://twitter.com/h2nakamoto/status/1384431536833847300     
※バルビゾン派(バルビゾンは、École de Barbizon)は、1830年から1870年頃にかけて、フランスで発生した絵画の一派である。フランスのバルビゾン村やその周辺に画家が滞在や居住し、自然主義的な風景画や農民画を写実的に描いた。1830年派とも呼ばれる。_Wikipedia

とポストしているのを見かけました。

成る程ミレーか...と思いました。

そして私はまず、今立っている場所、そして目の前の全てを眼差すことから始めようと思いました。
そこで、写真家と名乗っているからには、逗子を舞台に路上スナップを今更ながらやってみようと考えました。
ここが今回の私の出発点です。

偶然手元では岩波文庫版の〈地獄の季節〉の表紙で種をまく人が種をまいていました。

-ここからは私からの今回のお題です。-


思い立ったが吉日。最近逗子の町を歩きながら撮った写真を貼り付けますので何か反応をください。感想でも良いし、何かスケッチやドローイングの様なもの(メディア問わず)でもokです。

音を扱う宮田さんが写真映像から何を受け取り、アウトプットしてくれるのかが楽しみです。

それではお返事をお待ちしております。


ps.ユニット名つけましょう!!そっちのアイディアも投げて頂ければ!!

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〈2021.zushi〉

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2021.5.7_本藤太郎

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本藤太郎/Taro Motofuji a.k.a Yes.I feel sad.

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逗子生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒。カメラマンとして撮影現場を奔走する傍ら2016年より美術活動を開始。写真作品を中心に舞台やインスタレーション、楽曲や映像等を制作し国内外のアートフェアや地域アート等で発表している。 ZAFには2013年の「逗子メディアアートフェスティバル」の頃から雑用として関わっており、2017年には作家として参加。基本寝不足。
https://www.yesifeelsad.com/
https://www.instagram.com/taromotofuji/?hl=ja

宮田涼介

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神奈川在住の音楽家。ピアノ楽曲や電子音響作品を中心に、国内外でアルバムを発売。また、カフェやWebコンテンツでのBGM制作、シンガーへの楽曲提供・編曲を行う。
http://ryosuke-miyata.com/
https://www.facebook.com/ryosuke.miyata.music/


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