村上隆もののけ京都を観に京都へ行った話
想像以上に渋滞がひどかったのだった。
3人で行くなら車の方が断然安いね、ということで私たちは名神高速道路を一路京都へ向かっていた。一宮付近で集中工事のため渋滞、ということは知っていたが一宮付近はいっつも混んでるからな渋滞言うてもまあまあまあ……という共通認識で名神を進んでいた。
が、小牧を過ぎたあたりから詰まってきてちょこーっとずつしか動かなくなってしまった。渋滞情報を見ると5キロ90分と出ている。
げ。
90分て。
もう京都着いてまう時間じゃん。
工事箇所はどこなのかわからんがかなり前から「左へ」という電光掲示板が出ていて右車線がこの先なくなるであろうことは想像できた。
なのに右車線を後ろから来た車がビュンビュン行く。
「この先なくなるってわかっててなんでこの人らはバンバン右車線を走っていくんだろうかねえ」
「めっちゃ飛ばしてきよる」
「あほか、合流せんといかんのに」
「こういう人たちってギリギリまで行って入れてもらおうとするんだよね」
「タチ悪いわ」
渋滞という極限状態なのでどんどん口が悪くなるわたしたちを乗せて亀の歩みで車は進む。
「あ、もうすぐ一車線になるよ」
「どーすんのこの人ら、まだ行く気かね」
「てかさ、このまま絶対こっちが入れなかったらどーすんだろね」
「前の車絶対入れる気なさそうだよね」
この先車線がつぶれるとわかった時点で隣車線に移動せず、右車線をそのままブイブイ行く人というのはどういう気持ちで運転しているんだろう、という社会派な切り口で会話が続く。
「あーいう人たちはあーいう人たちで、ちんたらこんなとこでお行儀よく並んじゃってアホかギリギリまで行きゃいいんだよ俺ら要領いい〜!とか思ってんだよ、どうせ」
「うわーバカ〜!」
「やだわー」
「最低ー!」
そしてとうとう右車線が完全につぶれる地点が見えてきた。さっきわたしたちの横をブブーッと走り抜けていった赤い軽自動車はまだ右車線にいる。
「どーすんだよ」
「ヘイヘイ、どーするどーする?」
赤い軽自動車の前にいた車がなんとかわたしたちの前の前に割り込むのに成功していた。
「おうおう、入れてんじゃねえよ」
お口がお悪い。
「ウィンカー出しゃ入れてやるのに、この人ウィンカーも出さへんもん」
そうなのだった。赤い軽自動車はいまだウィンカーも出していない。
赤い軽自動車はどんどんスピードを落としていた。どん詰まりが見えてきている。マジでこの人どーする気なんだろと思って見ていたら、私たちの前の車がグンと踏み込んで前の前の車との車間を詰めた。
おめーなんか入れてやんねえよ、という意思表示だった。
電光掲示板になってしまった高速太郎くんがはっきり見えるほどドン詰まりが近い。
赤い軽自動車の前にはもう誰もいない。太郎くんだけだ。
わたしたちも車間距離詰めたろか、と言おうとした瞬間、赤い軽自動車の左ウィンカーがパッカパッカと光った。
この期に及んで、入れてください、と言っている。
困った時だけ頼ってくるヒモのようだ。
ヒモおらんけど。
いたこともないけど。
「仕方ないなあ、入れたるわ」
運転しているCさんがしぶしぶ前の車との距離を空けた。
赤い軽自動車がゆるゆると合流してくる。
「お礼せいよ」
「ハザードたかんかい」
運転していないわたしとGちゃんがオラオラたぎる。
まさかこんなヤカラなおばちゃんが乗ってるとは思っていないであろう赤い軽自動車はチャッチャッと2回ハザードを光らせた。
「2回て!」
「2回だけか!」
「足りんわ!10回たけ!」
「10回じゃ!ボケぇ!」
たぎりすぎなわたしとGちゃん。
10回もハザードたいたら今度は前の車を煽ってると思われるであろう。だいたい前の車は、この赤い軽自動車の合流を拒んだ車だ。どんな血を見る羽目になるか。
「10回はいかん、やりすぎだ」
「だね、それはわたしが言いすぎた」
どうも渋滞というのはこうも人間性を劣化させるものなのだということがよくわかった。あの数十分わたしたちはものすごく口が悪かった。わたしはいつも悪いけども、あとのふたりは普段そうでもないはずなのに。
結局、わたしたちは一宮ジャンクションから名二環を通って新名神を使って京都へ向かうことにした。
まるですごくドライブ慣れしてるひとみたいに簡単に言うけど、わたしの高速道路運転経験は高速講習を入れていまだに2回だ。
スマホってほんとすごいな、と心の底から思った。
それと、渋滞予測はもっと真剣に見た方がいい、ということも身に染みてわかった。
あれ?京都にも着いてないんだけど。
ということで続きます。
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