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NYO検査を受けた話

※何度も「尿」という単語が出てくるため、お食事中の方は食べ終わってから読んだ方がいいかもしれません。一応配慮して「尿」ではなく「NYO」と表記しましたが響きが同じなのでまったく無駄だった気がしています。



この時のわたしは今世紀最大といってもいいくらいのピンチに対面していた。
いや、前にもこれくらいのピンチはあったはずだけど、もう忘れているので新鮮に大ピンチだった。

血液検査とNYO検査を受けることになったのだった。
どちらも約1年ぶりだ。多少気に掛かっている点があるのだが、まあこのトシになったらそれくらい誰にでもあるだろうし、特別心配はしていなかった。
とはいえ前日まで忘れていたのは大概だろう。

あ、あたし明日血液検査だったわ、とGちゃんに告げたのはフレンチトーストを食べ終わった時だった。ふたりで朝から常滑に出かけてカレーを食べてパフェを食べてフレンチトーストを食べたあとのことだ。


ヒジョーにおいしかったミールス
マサラチャイもおいしかった

「は?!まずいじゃん!暴飲暴食にも程があるじゃん!」
「だねえ」
「ちょ、水!水飲んで!水!」
「うん、今晩は青汁と水だけにしとくわ」

今さら、という気もしたが帰宅後は水と青汁をちょっと多めに飲んだ。Gちゃんからは「今日楽しかったね」のあとに「水飲んだ?もっと飲んで!」とLINEが来ていたがそれは華麗にスルーして寝た。

ボリュームたっぷりのガトーショコラのパフェ

朝食は食べずまた水を飲んだ。
とりあえず中性脂肪はこれで前回よりは少し下がるであろうというこっすい手だ。前回はがっつり朝食を食べた1時間半後に血を抜かれ、中性脂肪がなかなかの値を叩き出していた。少しでも下がれ、中性脂肪。

近所にできたばかりの内科でわたしの殴り書きのような問診票を見ながら対応してくれたのは40代前半くらいのザ・快活!といった風情の男性医師だった。
「ではまず、NYO検査を」
「NYO!!」
血液検査を頼むことばかり考えていて、NYO検査は想定外だった。
「NYO検査で腎臓の方もわかりますから」
「は、そーっすね」
先生がきびきびしているので、つられてわたしもついきびきびしてしまって、NYOを入れるための紙コップを無駄に元気よく受け取り「では後ほど!」ととても朗らかに診察室を出た。

「小窓があるのでそちらにNYOを入れた紙コップを置いてください。少量で大丈夫ですので」

看護師さんがトイレに案内してくれながらそう説明をした。
トイレの中に小窓があるのね。おおこれか。そうかそうか。

そして採NYOは滞りなく無事に完了し、さてまずはすることをしなくてはいけない。紙コップを片手に持ったままではトイレットペーパーを引き出してカットするのも難しい。

便座に腰掛けたままきょろきょろしたのだが、とうてい手の届かないところに小窓はある。それはさっき確認した小窓。でも今わたしが探しているのはまずこの紙コップをいったん置く場所。
どこかに…と見るも置けそうな場所がない。
なぜかこの時は床に置くという考えがまったく浮かばなかった。やはし衛生的にトイレの床はあかんやろという意識があったのかもしれないが、中身はNYOである。
置きゃーよかった。

ピンチだった。
下着をおろし便座に腰掛けた状態で片手にNYOが半分ほど入った紙コップを持ち、もう一度左右を見たがやはり置けそうなところはなかった。
…マジでぇ〜??と小声で言った時、ふと置けそうなところがあるのに気がついた。
ちょうど右上に陶器製の手洗いがあった。それは長方形で、首を伸ばして確認してみると全体的に平らに見えた。

はーー助かった。
まずいったんここに置かせていただいて、と。

手を伸ばして、こぼしちゃいけないと、NYOが入った紙コップを丁寧に中心部分に置いた。

次の瞬間だった。

ジャーバーー。

センサーが作動して蛇口から水が出た。
昨今の手洗いセンサーの感度たるやおそろしいものがある。
出すな水を!そう簡単に!

うわぁ!と声を出しつつあわてて腰を浮かし、紙コップを救出したが時すでにお寿司。
半分ほど入っていたわたしのNYOは紙コップの7割ほどに増水していた。

かつてこれほどのピンチに遭遇したことがあったであろうかいやない(反語)。
つい数分前の紙コップをいったん置く場所ない問題に感じたピンチなど、これに比べたら吹けば飛ぶよな将棋の駒だった。
下着をおろしたまま便座に腰掛け片手にNYOが入った紙コップを持って途方に暮れている状態は数分前とかわらないのに、なぜかNYOが増水している。
事態は悪化していた。

一瞬このまま検査出したろかしらん、と思ったことは否定しない。
多分わたしが小学生ならそうしてたはずだ。そういう小学生だったから。そして検査結果が出てからド叱られていたはずだ。
いかんいかん、さすがにこんなババアになってからそんなことをしてはいけない。
美しすぎる〇〇という煽り文句をたまに見かけるが、こんなもの検査に出したらやばい。薄すぎるNYO。

仕方なく(仕方なく??)薄すぎるNYOをトイレに流し空になった紙コップをゆかに置いて身支度を整え濯いだ紙コップをゴミ箱に捨て、念入りに手洗いをハンドソープで磨いて水で流し、呼吸を整えてわたしは受付に向かった。

すみません採尿失敗しちゃって、と告げると受付の看護師さんは、あらそうですかと何事もなかったように新しい紙コップを渡してくれた。

実は家を出る前に一度わたしはトイレに行っていた。この内科はうちの目の前にあって徒歩1分。予約制なので待ち時間もない。家を出てから今までで約20分ほど。
ということは、約20分の間にわたしはすでに2回排NYOしていることになる。

照れ隠しのニヤニヤわらいを顔に貼り付けたまま、新たな紙コップを手にわたしはまたしてもトイレに入った。
果たしてでるものなのか。
正直まったくNYO意はない。あるもんか。
が、出さねば。
その一心でなんとか搾り出し、そこでまた先ほどと同じ問題に直面した。
なぜわたしは…座る前に…紙コップを置く場所を…。
と体をねじってきょろきょろしたところ、便器の陰、右奥に木製の小さな台を発見した。これぞまさしく採NYOカップ置き台!!どこからどう見てもこれだ!
多分、NYO検査を受けない人が、なんだこれ邪魔なんですけどと、ぐいーーっと奥に追いやった結果ではないかとわたしは睨んでいる。だってそれくらい無駄に奥に追いやられていたから。

そして無事その台を引っ張り出し紙コップを置くことにわたしは成功した。
ゆっくりと身支度を整え念入りに手を洗って、小窓をそっと開け採NYOカップを置いてまた小窓を閉めた。

わたしは最大のピンチをなんとか回避した。
いや、してない。
してない気がする。
したのかな。
したことにしておこう。

ちなみにNYO検査も血液検査も問題なかった。
あいかわらずLDLコレステロール値が高く「こりゃあ…べらぼうに高いっすね!」とザ・快活先生に言われコレステロールを下げる薬を飲み始めたのだがこれはいつか始めないといけないと思っていたことなので想定内。
中性脂肪も去年に比べるとがっつり下がっていた。想定内。

それにしても、ティースプーン一杯ほどの微々たる量でもNYO検査ってできるんだな。
それは想定外だった。

桜が咲いてましたね。この一本だけ。


見返してみたけどフレンチトーストは写真すら撮ってなかった。
食べることに慣れすぎてて。
パンも買ってたし。いつ食べるつもりだったんだろう。






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