クリスマスだし、『飛ぶ教室』を読もう!!

どうも、草村です。

クリスマスをモチーフにした文学は『クリスマス・キャロル』や『くるみ割り人形』、『十二夜』など色々ありますよね。
色々ある中でも私が特に好きなのは

こちら、エーリヒ・ケストナーの『飛ぶ教室』です!!

このタイトルを初めて見た人は、「飛ぶ教室」って何のことだろう?って思いますよね。
このお話は簡単に言うと、ドイツの寄宿学校、ギムナジウムに通う子供たちがクリスマスシーズンに起きた色んな事件に力を合わせて立ち向かってゆくという物語になっています。そしてこの「飛ぶ教室」は主人公達がクリスマスの出し物で発表する劇のタイトルなのです。

私がこの本を読もうと思ったきっかけは、”ギムナジウム”というのがポイントですね。『風と木の詩』や『トーマの心臓』といった少女漫画をご存じですか?私はこれらの漫画が大好きで、どちらもギムナジウムを舞台としている作品なのですよ。なので『飛ぶ教室』もギムナジウムが舞台と聞いたからにはもう読むしかないと思いました。
私は冬のギムナジウムというものが特に好きです。クリスマスまぢかで浮かれる子供たちの雰囲気や、クリスマス休暇で一斉に帰省する子供たちの賑やかな光景が何とも言えなず好きなのです。

ついついギムナジウムについて語ってしまいましたね(;^ω^)
ではそろそろ登場人物について紹介します。この物語には五人の主人公が登場します。

イメージ図を描いてみました^^

秀才のマルチン、親に捨てられたジョニー、食いしん坊のマチアス、弱虫のウーリ、皮肉屋のゼバスチアンです。
最初私は名前を覚えるのが大変で誰が誰だか分からなくなったのですが、それぞれ個性的なキャラクターなので読んでいるうちにきっと彼らのことが好きになります。
ギムナジウムは九年生まであって、彼らは四年生なので恐らく13、14歳ぐらいの年齢だと思われます。

子供達以外に大人でも魅力的なキャラクターが登場します。それは「正義さん」と「禁煙さん」です。
二人とも子供たちが付けたニックネームでそう呼ばれています。正義さんは舎監の先生で、子供たちの気持ちをよく理解してくれる先生なのでこんなあだ名がつけられて生徒たちから慕われています。一方禁煙さんは学校の近所に住んでいる人で、廃車になった鉄道の禁煙車を譲り受けてそこを住まいとしているのでこのようなニックネームを付けられています。彼もまた子供たちのよき理解者であり、相談相手になっております。私は最初に読んだ時、彼の浮世離れした雰囲気や子供たちに助言をしてあげるところが昭和版ムーミンのスナフキンを彷彿とさせてすっかり気に入ってしまいました。禁煙さんと呼ばれているのに実際は喫煙者だという設定もなかなか面白いと思います。

ところでこの小説、実は子供向けの小説だったりします。エーリヒ・ケストナーは『エーミールと探偵たち』や『ふたりのロッテ』など、子供向けに書いた小説が多い作家なんですね。
しかし、子供向けだからといって侮ってはなりません。このお話は大人でも楽しめる、大人だからこそ心に響くような部分もあると思います。
例えばこの小説は枠小説と呼ばれる形式で書かれていて、筆者の前書きと後書きがあるのですがその筆者のメッセージがまた良くて、私はこの間読み返した時前書きの時点でうるっと来てしまいました。以下少し引用します。

「人生に必要なのは、何を悲しんだかではなくて、どれほど深く悲しんだかということなのだ。神かけて言うが、子どもの涙が大人の涙よりも小さいことなんてことはなく、しばしばずっと重いものだ。」

エーリヒ・ケストナー、1933、『飛ぶ教室』(池内紀訳)、新潮社、P.21。

これは筆者がある子供向けの本を読んだ時に、その本の作者が子供はいつも楽しくて仕方がないというような考えを持って本を書いていたのでそれに対して憤りを感じて書いた言葉です。
私はひねくれた人間なので筆者が良いことを言っていてもそこまで心に響くことは無いのですが、このケストナーさんのメッセージはすごく純粋で本当に子供の心を分かっているような気がして心に響きました。思えばこの『飛ぶ教室』に登場する理解ある大人、正義さんや禁煙さんもケストナーさん自身の分身的存在なのではないかと、この記事を書いていて思いました。

このように、この小説はギムナジウムの雰囲気やヨーロッパのクリスマスの雰囲気を楽しめるだけではなく、読むととても温かい気持ちになるし、元気を貰える作品です。
子供向けということでページ数も全然少ない方なのでこの記事を読んで読んでみようかなと思う方が居たら是非!

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