放心
わざわざ心を開こうとしなくても、いつだって心からは何かが漏れ出している。5mmくらいの小さな穴が空いていて、そこからストローでちゅうちゅう吸われているみたいな、放心。中にあった水分がぜんぶ吸い尽くされて、ズズズズと軋むような音を立てている。本音を訊かれても、自分にもわかっていないんだから、申し訳ないんだけど、ただ、ズズズズが本音だったらいやだなとは思う。
たまにはきれいな水にひたして心をうるおわせてやりたいと、探し回ってみたが存外に見つからないものだ。身体をぱっくり割って、そんな所に心を探してみても、かくれんぼじゃないんだから、見つかろうはずがじゃないじゃないか。見えないけれどもあるっていうことは特別なことでもなんでもなくて、音ですら、アンプなんか通さなくたって、宇宙にこだましている。うるうると、どこか遠くでゆれている、波の気配に耳をひたそう。
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