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ものさし

20年近く前のお話です。

私は理系の大学院を卒業し、地元の市役所に化学職として就職しました。配属先で係が同じAさんは、とても優秀で気配りもできる人だったのですが、こだわりのあることに対しては突っ走るところがある人でした。

「Aさんって、突っ走るところがあるんですよね、、、」

ある日、分析室で実験器具を洗いながら、Aさんのことを、先輩Bさんにそう話しました。

「そうだよね~」と共感してくれるのを期待していた私だったのですが、返ってきたのは

「あなたのものさしと、Aさんのものさしは違うんだよ。ただ、そのものさしは、1目盛りの長さが違うだけで、Aさんとあなたは似ているところがあるよ。」

という、予想にもしない言葉でした。

私はAさんとは違う!と思っていたのですが、言われてみると、こだわりがあるところに関しては、上司の意見も聞かず突っ走るところがあるよな~。

それに気づかず、Bさんを否定的にみていた自分って、何様?

と自分のことを客観的に冷静にみることができました。

それまでの25年間は、アドバイスや意見をしてくれる人もいたのですが、それは耳に入らず、自分のことを自分のものさしで見ており、周りの人の価値観をも自分のものさしに当てはめ、それに合わない人のことを批判していたのです。

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どうして、Bさんの言葉を素直に受け取ることができたのか?

*言葉が身構えていないときに不意に入ってきた。かつ、私にとって必要なタイミングだった。

*覚えていないけれど、Bさんだったら、この言葉の前に一度私の気持ちを受け止めてくれていたかもしれない。

*Bさんだったから(私はBさんのことを信頼していましたし、尊敬していました。)

この3つが揃っていたから、す~っと私の心に言葉は入り、自分の現在地を知り、自分のものさしと相手のものさしは違うということに気づくことができたのかもしれません。

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20年たっても、Bさんからもらった言葉は、トーンやタイミング、分析室の風景などと共に、私の心の中でイキイキと生き続けています。

子どもの行動や考えを理解できず悶々とするとき、子どもに自分の価値観を押し付けそうになったときには、「子どもにはこどものものさしがある。子どもはどんな価値観を大切にしているのか。」と考えながら、お互いのものさしを大切にしたいと思っています。

そして、何年たっても色あせない気づきの言葉が、受講生さんの心に残ってもらえればいいな。毎回そんな思いをこめて、講座の準備をすすめているのです。


=自分のものさしの目盛りを知りたいお母さんに=

お母さんが子どものために学ぶコミュニケーションスクール

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