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人生で数回しかした事の無い失敗をして名古屋城観光する羽目になった話



ことの経緯で言えば、私の母が名古屋城で働いている所から始まる。

母は名古屋郊外にある実家から車で名古屋城まで出社している。

その為、帰省後に名古屋市内にある私の家まで帰宅する時は母の車に同乗させてもらう事が多い。

早起きは必要だが、母の出社時刻に合わせて帰宅すると交通費が浮くので甘えさせてもらっている。

しかし、この甘えがひとつの悲劇を招くのであった。




母の車から降りた瞬間、気が付いてしまった。



無い。




家の鍵が、無い。

そう、家の鍵と交通ICカードの入ったキーチェーン一式を実家に忘れてしまったのだ。

折角名古屋市内まで送り込まれたのにこのままでは帰宅できない。

小学生の頃、家の鍵を無くした記憶が蘇る。
近所の友達の家で泣きべそをかきながら両親へ連絡してもらったものだ。

しかし、今の私は一人暮らし独身27歳。頼れる同居人も居ない私は泣きべそをかいている場合ではない。

小学生だったら当時のように近所の人に助けを乞う事も出来ただろうが

誰の助けも借りることの出来ないアラサーがその場で立ち尽くしていてもただのアラサーだ。


一先ず、出社時刻ギリギリの母から車の鍵を後から返す約束をして実家へ向かった。

しかし、10キロ程車を走らせた所で私は気がついてしまったのだ。

実家に忘れたキーチェーンに実家の鍵が付いている事を。

アホな私は家の鍵を取りに行くために実家の鍵が必要だったというところまで頭が回っていなかった。

しかし、アラサーが絶望に暮れていてもただのアラサーである。

慌てて名古屋城まで引き返し、母から実家の鍵を奪取することにした。

幸いなことに、私の母は観光地で働いている。
入門料を払えば容易に接触することが可能だ。


もし母が検問の厳しい企業に勤めるオフィスワーカーだったら詰んでいただろう。


城に到着した私は入門料を払い入場した。

名古屋城は、市の施設と言うだけあり入門料は500円と他のテーマパークよりは相当手頃な価格で楽しむことが出来る。

もし母が某ネズミの国や、地球儀がゲート前で回転しているテーマパークで働いていたら私の財布が詰んでいただろう。ここでも不幸中の幸を実感してしまった。

城に入った直後、周囲の観光客と自分の間に違和感を覚えた。

私は母から鍵を借りるだけの用事で入門したので、財布とスマホだけを持って後の荷物は車に置いてきた。

しかし、当たり前だがここは観光地である。周囲の人達は皆各々カバンを持って観光に訪れていた。

この場でカバンひとつ持たない私は完全に不審者だ。悪い事をしていないのに何だか脱獄兵のような気分になってしまった。




しかし、脱獄兵の気分になろうがなるまいが私は自宅の鍵を奪取しなければただの家なきアラサーである。逃げたくもない家から結果的に追い出される形になってしまった私はそんな周囲の目なんて気にしている場合では無かった。

ようやく母を見つけた私は申し訳なさそうな顔を作り、家の鍵を借りれないかと申し出た。

怒られるかと思いきや、実家の鍵が無いと実家に帰れないというIQ3レベルの衝撃の事実に母も驚いていた。親子揃ってアホである。

1時間後の休憩時間になったら貴重品置き場に取りに行けるとのことなのでその間、本丸御殿の観光でもしておけと指示をされた。

こうして私は、「家の鍵を忘れて名古屋城観光する」という状況に陥ってしまった。風が吹けば桶屋が儲かるの亜種のようなものだろう。

渋々本丸御殿を観光する私。

ハッキリ言って何度も母に案内されているので見飽きているまである場所である。

とりあえず、noteのネタになりそうな目立つポイントだけ写真に収めてその場を立ち去った。

例えば、この鳥の彫刻は、入口側から見た羽数と出口側から見た羽数は違っている事だったり

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ふすまに虎とヒョウが同じ空間で描かれているのは「この絵が描かれた時代は虎のメスがヒョウだと思われていた」という誤った知識からだったり

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歴史好きか親が城で働いていない限り知る由もなさそうな薄らとした知識を思い出しながら観光すること5分程。

マジで興味が無い場所を巡ると観光地RTAを果たしてしまうのだということが明らかになってしまった。


しかし、母の休憩時間にはまだ程遠い。適当に時間を潰そうと今度は金シャチの撮影コーナーへ向かった。

その時撮影した写真がこちらだ。



完全に一人旅を楽しんで浮かれているかのようなポーズだが、ただの家に入れないアラサーである。

観光する気など毛頭になかったとは思えない出来栄えに感動し、買う気のなかった写真を思わず購入してしまった。

撮影してくれたお兄さんも「楽しそうなポーズですね!」と微笑んでくれた。振り切ったアラサーは最強である。

休憩時間になった母から鍵を受け取った私は「ありがとう名古屋城」とTwitterに記録を残し、その場を去った。


そして数時間後、母に鍵を返すためだけに名古屋城へ訪れた。


意外と周囲の目を気にする私は、入門口のスタッフさんに「こいつまた来やがったな」と思われたくない気持ちから半ば怯えながら入場。

こうして私の半日は終わった。


家の鍵のスペアを用意して常に持ち歩こうという教訓を獲た。

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