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カフェ夢portの店主の家に居候したらどんな辛い事も笑い飛ばせる


前回記事の続きです。




3月1日 未明

草木も眠る丑三つ時。

バキューンバキューンバキューンバキューンバキューンバキューンバキューンバキューンバキューンバキューン


鳴り響く銃声。




鳴り響く銃声?


アメリカ西部劇の夢でも見ているかと思ったが、私が居るのはカビ臭いソファの上。

これは間違いなく現実だ。

ほっしーがスマホのアラームを止めたと同時に銃声が止んだ。

どうやら先程の銃声はアラーム音だったらしい。

なんて前衛的なアラーム音なんだ。

「このアラームが1番起きれるんだよね」と嬉々とした表情で語るほっしー。

確かにこのアラームで目覚めない訳はないが、対価である心臓の負荷が大きすぎる気もする。

ほっしーは深夜バイトへ向かう為、台風のように部屋から立ち去った。

最高の目覚めを迎えた私は、二度寝をした。


3月1日 早朝


寝起き早々、最初に声を作る。

なるべくか細く、病弱な感じを出す。

意を決して電話をかける。

「すいません、お腹が痛くて…本日お休みを頂けますか。」

深夜の突貫工事を終え、日付が変わる直前に就寝した私。

仕事柄、家を早朝6:30に出なければならないので
普段なら10時までには寝るようにしていたが

この時間の就寝と、身体・精神的疲労。

それに加えて深夜の二度寝から

次の日出勤する事は不可能と判断した。

割と良くしてもらっている会社に、この様な届けを出す事は心苦しかったが

まぁ仕方がない。人生そんな時もある。

まだまだ足の踏み場が3割程しかないこの部屋を掃除することにした。

掃除機が見当たらなかったので、一先ず塵埃はそのままにした。


何とか足の踏み場が出来た頃、ほっしーが深夜バイトから帰宅した。

「部屋がキレイになっている!」と感動してくれるほっしー。正直、かわいい。

掃除機の場所を聞いたが彼女は笑顔でこう答えた。

掃除機はまだないよ!友達にもらう予定!

笑うしか無かったからとりあえず大爆笑しておいた。

だが、笑った所で何も解決はしていない。

いつ貰う予定かを聞いたが、アポすら取っておらず
そもそも深夜バイトに加えて、普段のカフェ営業で休みなく働く彼女に掃除機を迎えに行く余裕など無かった。

仕方ないので、私がアポを取り
後日掃除機を取りに行く事にした。

私をここまで行動させているほっしーの愛嬌と人徳は見習うものがあると思った。

汚れた床は雑巾で拭いた。修行僧の気分を味わった。


夕方頃、テキトーな夕食を作ろうとキッチンに立った。

ラップが無かった。

電子レンジが無かった。

炊飯器も無かった。


こんなにもモノが溢れているのにどうしてそこは無いんだ。


ひとまず、電子レンジで調理が必要な食材は鍋にぶち込んで茹で

米は、奇跡的に私が前の家から持ち出していたサトウのごはんで代用した。

生活家電のありがたみを知った一日だった。

3月2日

仕事を終え、ほっしー宅へ帰宅した私。

ほっしーはまだ戻っていないようだ。買い出しが沢山あると言っていたのでそれが理由だろう。

ほっしーが帰宅するまでに晩御飯を作る為、キッチンに立つ。

相変わらずレンジと炊飯器がない。

持ち込んだサトウのごはんは切らしてしまったので、主食はもやしで代用する。なんて貧乏飯。

野菜中心の献立が出来たところでほっしー帰宅。

普段から野菜をあまり食べない生活をしていたらしく、珍しい物が食べれたと
かなり喜んで食べてくれた。かわいい。

完食後、「ずっとこの家に居てもいいからね!」とまで言われてしまった。

有難い言葉だが、このタイミングで言われると家政婦扱いされているんじゃないかと思わざるを得ない。

夜20時
相変わらずほっしーの突貫工事は突然始まる。

今回はキッチンの壁紙を貼り付けているらしい。
音が出ないのでまだマシだと思った自分はそろそろ感覚が麻痺してきたんだと思う。

体格も小柄な彼女が1人で取り付けるには大変そうだったので手伝う事にした。


ここで初めて知ったのだが、ほっしーはかなり几帳面だった。

柄の繋ぎ目が合わない事や、貼り付ける際の気泡が入ってしまう事がしっくり来ないらしく
作業は難航していた。

30分ほど悪戦苦闘した頃
何を思ったのかほっしーは調理器具を漁り始めた。気でも狂ったのか。

彼女が取りだしたのはスケッパー。お菓子の練り生地を切るのに使われるものだ。

それをニコニコしながら壁に当て、レンガ職人かのように壁紙を貼る。

ほっしーは、調理器具を工具が何かと思っているらしい。

ほっしーが卒業した製菓専門学校ではそんな事まで教えてくれるのか。知らんけど。

なんとか綺麗な状態に仕上がった壁紙を嬉しそうにTwitterにあげるほっしーを見て、微笑ましい気分になる私。

感覚が麻痺してきたのかもしれないが、どんなに辛い事があっても彼女が居らば紛らわす事が出来ると思った。


まだまだ事件は続くが、相変わらず分量が多いのでここで一旦区切る。


※ほっしーのプライバシーに関わる表現が幾つかあったので、全文確認して頂いた上投稿しています。


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