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「数値化できないシリーズ」 #2 英語力

カリフォルニア州立大学アーバイン校での講義(才能について)

きょうは英語に関することを少しシェアします。

「17歳で英語塾始める」

1970年代の春
その日ボクはA3の紙を丸めたものを抱えて
キョロキョロしながら街を歩いた。
普段歩き慣れている道でも
何か目的をもって見ると
違うものが見えてくる。
なんて看板が多いんだろう。
これではいったい誰がボクの手描きポスターに
目を留めてくれるんだろうか
と、歩きながら戦略立案。

あ!そうか!このポスターを観て欲しい相手は
中学生とその親のどちらか、もしくは両方。
父親が見るなら駅を降りて帰るルート(朝は見ない)
母親なら市場(当時はスーパーは少なかった)の帰り道
中学生は通学路
これで決まった。
でも、手描きポスターは6枚しかない。
3つのカテゴリーに2枚づつ貼るか、メリハリを付けるのか
と悩んでいるうちに結構適当に6枚のポスターを
どこかの電柱に貼った。←無断で、、、

数日後、家の黒電話が鳴り、母が出て応対していた。
母はボクのポスターに反応した人だと判断して
すぐに受話器を渡してくれた。

こうやって6人の仲良し女子中学生たちは
ボクの実験英語塾に来ることになった。
自宅2階にある勉強部屋で座布団に座っての授業。
みんな緊張していたがすぐに慣れて
2週間目からは笑いが耐えなかった。

1年後の結果は、6人の中学生全員の英語の成績が
5になっていた。しかも、学校の教科書以外にも
NHKラジオ英語会話やその他の教材で
学んでいたので彼女たちは英語学習を
楽しんでいたし、自信を持っていた。

実験的な試みだったので授業料は無料。
どんどん上がる彼女たちの英語の成績に
喜んだお母さんたちからお中元とお歳暮に
びっくりするくらいの百貨店の金券が届いた。
遠慮したけれど、「いやいや、お納めください」って
大人に頭を下げられて恐縮して受け取ったものでした。

ボクがこの塾で教えたのは英語ではなく、
英語を身につけるという気づきとその方法だった。
知識の伝達だったら学校だけで良いでしょう。

その後しばらく日本人に英語を教えることはなく
自分が英語の勉強をすることになった。

「渡米して自分の英語が役に立たない事を知る」

もともと勉強嫌いのボクは学校の教科書から英語を
学んだ記憶がない。すべてはNHKラジオの英語会話を
毎日聞いて予習、復習、発生、発音練習、寄り道学習などの
独学でコツを覚えてきた。学校の教科書を読まなくても
英語は5をコンスタントに取っていたので
ちょっと自信を持っていた、、、、と思ったら大間違い。

後の私の英語の基礎となった教材。東後勝明先生のファンでした。

渡米してすぐに自分の英語力はまったく大したことない
という事に気づく。今までの努力は何だったのか?
言葉は文化だと思っていたし、環境からの影響は
とても大きい。そこで日本人の友だちをたくさん持たずに
日本人同士で集まる所へも顔を出さず、
仕事はアメリカの企業で朝から晩まで誰も日本語を
理解する人がいない環境に身を置いた。

もちろん独学で毎日の仕事や生活に使える
英語を学び続けた。

渡米後3年目くらいから
頭の中で英語で文章を勝手に組み立てていることに
気づいてから、仕事や生活で英語に困るという事は
ほぼ無くなった。(実は今でも困る事はありますよ)

『2種類ある英語』

予てより英語には2種類あると思っている。
文学や語学としてのアカデミック(学術的)な英語と
仕事や生活で使える実用英語。
どちらの方が勝っているというものではなく
どちらもある程度出来ればそれに越したことはない。

社会人になってから私が注力したのは
実用英語の方でした。
勉強嫌いイコール、アカデミックに弱い。。。トホホ
この2種類の英語を同じように高いレベルで使いこなす人は
たまに居る。40年以上のアメリカ生活で出会った
日本生まれ、日本育ちの人で2つの英語が達人レベルだと思えた人は
5人くらいしか会ったことがない。あとの人達は
どんな学歴であっても「英語、ちゃんと勉強しはったんどすか?」
と聞きたくなる。←やや大げさかも。

『TOEIC, TOEFL,英検』、、、ま、いいんじゃないの』

資格や検定が好きな私達日本人の心理をうまく使った
商売が特にTOEICだと思っている。いえ、TOEICを悪いとは
思わないし、否定もしません。私の生徒の中にもスコアを
上げたくて頑張っている人たちもいましたし、彼らを応援していました。
以下、その頃のレッスン・カレンダー。

実用英語を教えていた頃の私のカレンダー(リスケだらけ)

ポイントはそこじゃなくて、
企業が日本人の英語力をTOEICのスコアで判断する事くらいしか
出来ない事とそれに振り回される学生や社会人がけっこういらっしゃる事。
とりあえずTOEICのスコアが高ければ企業からご指名頂ける
確率が向上して、それがメシのタネになるのなら、
どんどんやれば良いというだけです。(イヤミじゃなくて)

しかし、TOEICなど受験した事がない人でも
英語学習に対する考え方と学習方法によっては
TOEICフルスコアの人より英語が使えるという事実も
知ってほしいと思います。(特に学生には)

最近うちの部屋を借りている日本人留学生は気づいていました。
「英語ができることじゃなくて、
英語で何ができるのかが大切ですよね」
まったく、その通り。

検定試験のスコアは何かの目安になり得るけれど
英語が使える人になっているかは数値化できないので
実際に生活や仕事で体験するしか方法はない。

「日本人の英語力
アジア人の中で最低レベルと言われる」

留学生の英語力を見ても、ビジネスパーソンの場合でも
中国系、韓国系のアジア人の英語はかなりレベルが高い。
いつかアメリカ人の英語の先生から聞いた話では
アジアの学生の英語力が最も低いのがタイで
その次が日本だと。少し古い情報だけれど
今もあまり変わらないと思う。日本人以外の
アジアンはみんな上手に英語を使っている。
発音がネイティブ並だとかそういう次元の事ではなくて
毎日の生活や仕事でじゅうぶん活かせるレベルの人が
とても多いという事。

『裸足の少年は英語ペラペラ』

以前シンガポールに住んでいた頃インドネシアの首都
ジャカルタの空港に降り立った時、裸足でサンダルを
ひっかけた少年が小走りに寄ってきて、アクセントの強い英語で
タクシーは必要ですか?どこのホテルですか?
荷物持ちますよって話しかけてくれた。
おそらく彼はTOEICを受けた事はないだろうし
英語塾に通った事もないだろうと思った。
生活に必要だから身体で覚えたツールなんだ。

海外へ移民する意識の低い日本人は
いつまでも英語を特別視しているし、
少し英語ができる人を凄い!と思っている。
他のアジア系民族は日系の数十倍もの数で
アメリカへ移民している。
スコアや学歴ではなく必要に迫られている
彼らの英語への意識はとっても高い。

神田にある某外語学院にて

とりあえず900点は取りました。
と言って胸を張る学生がたくさんいる限り
日本の英語ビジネスは儲かり続けて
日本人の英語力は数字だけの世界にとどまる
ような気がするのは気のせいかな?

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