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うちの飼い猫に毎晩人生相談をしてしまう

 リビングでくつろぐ猫の、後頭部〜首の付け根にかけて、の角度がちょうどよく、そこに顔を埋めるのが趣味である。
 ちなみに、私がどいた瞬間、彼はそこを必死に舐めて、舐めて舐めて、消毒をする。「汚らしい人間が……この純潔の身に触れおって……」と、静かな怒りをたたえているかは知らないけれど。
 まるちゃん、と呼んでいる。母曰く、まるちゃんは猫ではない。家族なのである。猫であることと家族であることは容易に両立すると私は思うのだが、それでも、まるちゃんは、猫ではない。(我が家では、猫は「ご家族」、犬は「散歩する方のご家族」と呼称している)

 芥川龍之介乙、と笑われるかもしれないのだが、 漠然とした不安、を毎日感じている。バカボンのパパになりたい。これでいいのだ。これでいいのか。わからない。今自分のやっていることが、本当にやりたいことではないのだと、薄々気づいている。でも、かと言ってすぐにえいやと思い切ることもできない。(えいやと、という表現、あんまり若い者は使わないか)
 まるちゃんは意識が高いので、平日毎日19:30からBSでやるニュースも、首都圏ニュース845も、きちんとチェックしている。PCR検査の拡充について考えている。リビングの、40何型だかの液晶テレビの前に香箱座りをして。
 だから私はついつい問いかけてしまう。「まるちゃん、どうやって生きていけばいいかわからないよぉ〜」と。

 まるちゃんがうらやましい。
 もちろん、まるちゃんにはまるちゃんなりに大変なことがたくさんある。
 まるちゃんは「まるお」であり、保護猫…もとい保護ご家族であり、生き別れの「まるこ」というきょうだい(妹か姉か)がいる。が、引き離されたままである。夕方、毎日おやつを食べた後に切ない声をオロロロロンと挙げるのは。もしかしたら、探しているのかもしれないな。と。いや、それもこちらの家族観の押し付けでしかないか。
 
 それでも、好きな時に寝て、好きな時に起きる彼に、毎晩人生相談をしてしまう。

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