”3つの原石”がそれぞれに放つもの-宙組娘役・美星帆那と愛する同期達(愛未サラ/山吹ひばり)について。

初舞台と言う原石達の中から、一番端っこにあった可愛らしい小さな原石と出会った。

宙組と言う宝石箱に移された「3つの原石」を、切磋琢磨し磨かれていく3つの宝物を今日この日までずっと眺め続けて来た。

イマドキっぽい大きくて派手な光を放つ原石は「愛未サラ」と言う。

いつだってパッと明るい笑顔と強烈なぐらいに溢れるパッション。その情熱的な輝きはパワーを感じるだけではない。年々洗練されていき学年を重ねるにつれて彼女にしか出せないゴージャスな輝きを放つ事も増えた。

彼女は令和の今ならではの時代を反映する存在だと思う。

愛未サラと言う娘役には「宝塚らしさ」「娘役らしさ」と言ったステレオタイプとは違う「愛未サラらしさ」を持っている。彼女を形容する「かっこいい」は他の娘役とは違うニュアンスで、ボーダーレスと言う言葉が適切なのだろうか?彼女を形容する言葉にはまだまだ迷う位、過去の娘役の型にはハマらない何かがあると思っている。

その「何か」が学年を重ねるにつれて色濃く見えて来た。

MAKAZE IZM、普段の大劇場のショーにはない演出は宝塚の娘役として経験出来ないようなものも多かった。ぶりぶりのアイドルから勇ましいソーラン節。彼女に至っては大漁旗を持って爆走すると言う、おおよそ宝塚の娘役では経験しないような場面もあった。肩で風を切り←男役も真っ青なキメ顔を見せる。クッキリした個性に合う派手目のアクセサリーとのバランスの良さ。金髪ショートカットで少年のような無邪気な笑顔を見せるし、真っ白なドレスを可愛らしくエレガントに着こなす。勇ましい振り付けもかっこよくこなすし、美しい高音ファルセットも響かせる。

令和の今らしい娘役だと思っている。100年以上の伝統が続く劇団、まだまだ「世間の男/女らしさ」と「宝塚歌劇団の男役/娘役らしさ」には大きな溝がある。時には「娘役らしくない」と評価される事もあるかもしれない…が、伝統の枠を大きく逸脱する事もなく、かつ愛未サラと言う娘役が彼女らしく活躍できるこの時代。この個性が伸び伸びと活躍できる宙組って素敵だなと思う。

一方、古き良き大切にして来たものを受け継ぐ原石は「山吹ひばり」

芸名からしてど直球のクラシカル。声に出したい美しい日本語みたいな名前の彼女こそ、最初はイマドキっぽいと思っていた。

ビジュアル、演技力・歌唱力。全てにおいて娘役ヒロインのポテンシャルしか感じなかったが、唯一のネックがその声質ではないかと思っていた。若干鼻に掛かるような甘い声は「宝塚らしさ」とはちょっと違う個性だと思っていた。生まれ持った声はどうしようもないしそこを批判するのは違うけれども、最初の頃は私の中の「宝塚らしさ」に照らし合わせて、特に過去の名作や再演作を演じるに当たって合わないのではないか?と懸念していた。

5年目を迎える今、2度の新公ヒロインとバウホールのヒロインデビューを果たす。ひばりちゃん自身の特徴を活かしながらも、きっちりと「昔から大事にされて来た宝塚の娘役像」に収めて来ている。その声だって年月を重ねれば強みとなって心地よく安心感すら感じるようにもなった。ひばりちゃんの持つ全てが「これでこそ山吹ひばりだ」と思えるぐらいには好きだ。

「夢現の先に」のフィナーレでヒロインとして立つ姿。ひと際輝くドレス姿の初々しいヒロインは、誰もが思い描く宝塚歌劇のヒロイン像そのもので胸が熱くなった。まだまだ可愛らしいヒロインだったけれども、今までのどのひばりちゃんよりも美しかった。その姿を見てどれだけの努力を重ねて来たのだろうかと胸が熱くなった。

愛未サラと言う宝石は、シンプルなモノトーンのドレスに1つだけ付けたい。身に着ければハリウッド女優のような明るくゴージャスにしてくれるジュエリーと言ったイメージ。山吹ひばりと言う宝石は100年以上代々受け継がれて来た大切なジュエリー。時代を問わず輝き続ける形は古臭くなくてどんな時代にも愛される。

そしてこの2つの宝石と共に切磋琢磨してきた、私の小さな原石だって負けてはいない。

私だけのお気に入りのジュエリー。カラーは白。どちらかと言うと普段使いに近いかもしれない。2つの宝石に比べると小さな宝石だけれども、沢山ある宝石箱の中で私の一番大切なジュエリーで身につければいつだって気持ちを明るくしてくれる。

その日その時のシチュエーションによってニュアンスが変わる。

甘く可愛いコーディネートの日、海辺のバカンスでカジュアルに決めたい場面。黒のコーデで引き締めたい場面。かっこよく強い女性でありたい日。真っ直ぐで純粋な気持ちを忘れたくない時。人生において色々なシチュエーションの日があって、どの場面においても活躍してくれる頼もしいジュエリーなのだ。

私にとって、美星帆那と言う娘役はそう言う存在なのだと思っている。

宙組と言う宝石箱の中には、大小様々な美しい宝石がある。

組の真ん中で燦然と輝くダイヤモンドを中心に、手の届かないような高級な宝石から、何年も丁寧に磨かれ続けた唯一無二の宝石たちがある。将来が楽しみな原石だって毎年のように集まってくるし、日々舞台の中で磨かれ続けている。

そんな中で2つの個性的な宝石と共に磨かれたこの小さな原石こそ、私の一番の宝物なのだと言う思いを新たにした。

彼女たちが宙組で歩んで来たこの歴史、掛け替えのない時間を愛しく思う。


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