やっぱりソフィア・コッポラはソフィア・コッポラだった/『プリシラ』
エルヴィス・プレスリーが亡くなったのは1977年のこと。
ギネスブック(いまは正確には「ギネス世界記録」らしい)に最も成功したソロアーティストとして載っているエルヴィスの伝記映画がはじめて作られたのは意外にも2022年とわずか2年前。
(テレビ映画は2作が製作されています。)
セレブリティの伝記映画はハリウッドでは題材として人気があり、存命中に製作されることも少なくありませんので、今までなんでなかったのかと思う一方、「今さらエルヴィス・プレスリーかよ〜」と思ったのを覚えています。
そんなエルヴィス関連映画が『エルヴィス』のリリースからわずか1年で公開されました。
エルヴィスの元妻、プリシラ・プレスリーを描いた『プリシラ』です。
監督はソフィア・コッポラ
『プリシラ』の監督はソフィア・コッポラ。
監督2作目でなんとアカデミー賞脚本賞を受賞してしまった彼女は、その後一定の評価を受けるも、代表作はいまだにその『ロスト・イン・トランスレーション』。
(忘れてましたが、この作品は日本を題材にしており、ヘンテコ日本じゃない現代の日本を描いた唯一のハリウッド作品かもしれません。)
『マリー・アントワネット』が微妙な評価に終わったことを考えると、伝記映画との相性が良いとは思えず、かなり評価された『エルヴィス』の後で、エルヴィスの曲がほとんど使われないという噂もあり、その出来に不安の声が上がっていました。
ヴェネチア映画祭で主演女優賞を受賞
ところがです。
ヴェネチア映画祭に出品された本作は、主演女優賞を獲得することになります。
ほぼ無名の存在であったケイリー・スピーニーです。
これは結構なサプライズで、この受賞に賞レースの有力コンテンダーになりました。(バズは消滅してしまうのですが…)
注目すべきはケイリー・スピーニーと衣装・美術
ヴェネチアで女優賞を受賞しただけあって、ケイリー・スピーニーはかなり魅力的に撮られていました。
プリシラとエルヴィスは、最初の出会いがプリシラが14歳のとき(エルヴィスは24歳)ということで、当時も現在もドン引きの年齢ですが、そんな明らかに少女の時代から、28歳までを見事に演じています。
あと当時の衣装・美術をガーリーに描いて現代的に魅せるのは、ソフィア・コッポラらしさが出ていてすごく良かったですね。
一方物語としては、主人公は"スター"エルヴィス・プレスリーではなく、元妻のプリシラ・プレスリーということに加え、ソフィア・コッポラの演出がエンタメよりのものではないので、ちょっと退屈に感じる部分も。
プリシラ・プレスリーは、その後ビジネスの世界で成功することになるのですが、そういった一面がもっと描かれると良かったのかなと思いました。おそらくエルヴィスがプリシラに惹かれたのは、そのような点からだと思うからです。
プリシラの両親が「なぜあのスターが、平凡な14歳の娘を選んだのか」という疑問を抱くように、我々観客も同じ疑問を抱くからです。そこは最後までわからなかったです。
本日のドレス:グレタ・リー
オスカー候補まであと一歩だった『パスト ライブス/再会』のグレタ・リーが着たのはロエベ。
監督のセリーヌ・ソンもロエベだったし、今回はロエベ着てる人多かったですね。広報がんばったのかしら。(★★☆)
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