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幸せなおじぞう(第4話)

「私の生みの親は、まだ私が物心つかないうち、崖崩れで亡くなりました。

今の育ての父は、そんな身寄りのない私を引き取って育ててくれました。

父は村の人たちと一緒に村の荒れ地を広く耕しで村を豊かにして、

村長として敬われていたんじゃないかと思います。


ええ、確かに(父は)ちょっと変わったところがあったかもしれません。

お地蔵さんの話とか。

自分の頭の中にお地蔵さんが入ってきたっていう、あの話です。


お地蔵さんが走馬灯を見せてくれて、

その中に自分の過去と未来が映っていて

これまで自分がどんなに悲惨な生き方をしてきたか

そしてこれからどんな酷い未来が待っているか

まざまざと知らされたっていう、、、。


お地蔵さんは父を抱き上げて

苦汁の沼のようなところから救い上げ

きれいな水で洗ってくれたんだそうです。

そして、父をふかふかした気持ちのよいお布団のうえに置いて

お地蔵さんは闇の沼の中に入っていって

父の身代わりになりました。


「あなたは私を探しなさい。

私を見つけたとき、あちら側であなたが負った重荷も終わるでしょう。

それまで私は、あなたの代わりにあなたの重荷を負いましょう。」


お地蔵さんはそう言い残して、闇の中に沈んでいったのだそうです。


(幸せなおじぞう 第4話 おわり)


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