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コピーが上手くなるラジオ「コピウマ」#2 良いキャッチコピーとは?

ポッドキャスト「コピーが上手くなるラジオ コピウマ」#2 良いキャッチコピーとは?の文字起こしです。音源は、stand.fmSpotifyApple Podcastsから聴くことができます。


横田:この番組では、現役のコピーライターがコピーライティングや取材などの技術論、 企画を考える上での発想法、言葉を扱う仕事の面白さや難しさなど、コピーや言葉にまつわるお話をしていきます。

横田:2週目の今回は、良いキャッチコピーとはどんなものかというお話をしていきたいと思います。ところで、うのりなさん。

うのりな:はい。

横田:好きなキャッチコピーってありますか?

うのりな:好きなキャッチコピー…「ぜんぶ、雪のせいだ。」。

横田:はい、JRのスキーキャンペーンのコピーですね。そのキャッチコピーはどんなところが好きですか?

うのりな:確か、スキーウェアを着た女の子が雪山にいるアップの写真に「ぜんぶ、雪のせいだ。」と書かれたポスターを見た記憶があるんですけど。
 
横田:はい。

うのりな:それだけで、雪山での異性とのドキドキ感とか、そういうのがぶわっとイメージされるのがすごいなって思った記憶があって。本当、その一言だけで別に男性が映ってるわけでも、好きな人が写ってるわけでもない、一人の女の人が写っているだけなのに、雪山とコピーでシチュエーションが私の中で思い浮かんだっていうのがすごく記憶に残っているので、一番ぱっと出てきたコピーでしたね。

横田:わかりました。ありがとうございます(笑)。そのコピーも含めてですね、世の中には名作と呼ばれるキャッチコピーっていろいろあると思うんですが、結局いいコピーって3種類しかないと私は考えています。
 
うのりな:3種類?
 
横田:はい。その3種類とは、「約束・提案・うれしい」。この3つです。1つずつ詳しく説明していきますね。
 
うのりな:はい。


横田:1つ目が「約束があること」。具体的にどんなコピーかというと、Appleの「Think different.」とか、無印良品の「ずっと、見直し。ずっと、良い値。」が、約束があるコピーに当たると思います。

横田:「Think different.」は日本語に訳すと「違うことを考える」とか、「発想を変える」になると思います。Appleにしかできないことをする。他社とは違う製品を生み出す、作り出す。そういったことを約束しているわけですね。
 
うのりな:うんうん。
 
横田:代表的なものはiPhoneですよね。
 
うのりな:はい。
 
横田:無印良品は、ファッションや雑貨など、定番品をずっと取り扱っていて、流行に流されない。そんなイメージですけども、実は細かいところを見ると去年と今年は同じじゃない。小さなアップデートがされていたりとか、企業努力によって価格が安くなっていたりとか、値上げをしなかったりといったことを実は続けています。「ずっと、見直し。ずっと、良い値。」というのは、それを約束するコピーになっているわけですね。これが1つ目でした。

 
横田: 2つ目は「提案があること」。 この話をする時に、いつも例にあげる2つのコピーがありまして。ひとつが、「一目で義理とわかるチョコ」。これはブラックサンダーのコピー。もうひとつが「日本は、義理チョコをやめよう。」。これはGODIVAのコピーですね。
 
うのりな:へ〜。

横田:数年前に、どちらもバレンタインデーの時期に世の中に出されたコピーなんですけど。ブラックサンダーって1個30円で駄菓子屋さんとか、コンビニとか、スーパーとかで、比較的手に入れやすくて買いやすい。
 
うのりな:うんうん。
 
横田:なので、バレンタインデーに渡しても手軽だし、相手に変な期待を抱かせない。そういったポジションを自覚しながら、「一目で義理とわかるチョコ」っていうちょっとユーモアで包んだメッセージを出したわけですね。

うのりな:くすっとなりますね。

横田:はい。それに対してGODIVAは高級チョコレートじゃないですか。
 
うのりな:はい。

横田:なので、チョコレートを本当に心から楽しみたい人、自分のお金をたくさんかけてでも美味しくていいチョコレートを楽しみたいっていう人たちと、関係を結んでいきたいわけですよね。
 
だから、義理チョコという、人によってはプレッシャーを感じたりとか煩わしさを感じるような習慣はもういらないよねという視点から、心からチョコを楽しめる人、楽しみたい人のためだけにバレンタインデーがあればいいよねというメッセージを出した。習慣をやめようという提案をしたわけですね。
 
それぞれメッセージの方向性は違うけど、自分たちのポジションやブランドの世界観を前提にした提案をしているキャッチコピーだと思います。

うのりな:うんうん、提案ですね。

横田:これが2つ目、提案のコピーでした。


横田:3つ目が「うれしいがあること」。
 
うのりな:うれしいがあること?

横田:私は、コピーライターじゃない人たちにセミナーをやることもあるんですけど、「自社製品のコピーを書いてください」と言うと、この商品がどれだけすごいかっていうのを書いてしまうことが多いんですね。

うのりな:機能とか?

横田:そう、機能とか、スペックとか。ただ、一般の人たちはその商品が持っているすごさよりもそれを使った人がどううれしいかということを知りたいはずなんですね。
 
うのりな:うんうん。
 
横田:例えばですね、 直線距離400キロを2時間で走る速い乗り物。

うのりな:なん…なんて?(笑)
 
横田:(笑)

直線距離400キロメートルを、2時間で走る、速い乗り物。 これ、すごさですよね。ま、新幹線のことなんですけど。

うのりな:ああ!(機能だけ言われると)ぱっとイメージが付きづらいですね(笑)。

横田:これをうれしいに変えると、「そうだ京都、行こう。」っていう有名なコピーになります。

うのりな:ああ〜!え〜!(全然違う〜)

横田:東京から京都までは直線距離で大体400キロメートルなんですけど、新幹線なら2時間で行けるよと。飛行機と比べると乗りやすいじゃないですか。チケットを使ってすぐ乗れる。飛行機って、手荷物検査や搭乗手続きがあったりして、もう少し乗るまでのハードルが高いと思うんですけど。新幹線は、思いついてすぐに飛び乗って京都に行くっていうような、そういう使い方もできるよっていう提案というか、うれしさを表現しているわけですね。
 
うのりな:ほぉ〜。


横田:もう1つはですね、これもまた無印良品なんですけど。ある時ですね、コンパクトにたためて、しかもシワになりにくい男性もののジャケットを販売したんですね。
 
うのりな:便利そう。
 
横田:でも、最初はそれだけじゃあんまり売れなかったんですって。
 
うのりな:ん〜?

横田:で、このコンパクトにたためてシワにならないっていうのもすごさじゃないですか。

うのりな:うん、すごい。

横田:これを「うれしい」に変換して、商品名だけを変えたらヒット商品になったらしいんですけど。どんな名前にしたでしょうか。

うのりな:う〜ん、「ズボラさんにおすすめジャケット」?
 
横田:(笑)。惜しくは…ないかな(笑) 正解は、「旅に便利なジャケット」。

うのりな:あー!なるほど。用途だ。こういう時に使うといいよっていう、ダイレクトな紹介。
 
横田:そうですね。出張に行く時に、例えばお客さんに会うから、スーツほどじゃないけどジャケットは持っていきたい。でも、その後に観光をするならジャケットは邪魔…。そんな時に、そのままカバンに入れておけるよと。

うのりな:うんうん。

横田:あとは旅先でちょっといいレストランに行くことになった時に、ジャケット羽織っていきたいと思うんですね。そういう時のためにカバンに入れておくと便利ですよ、と。そういううれしさをイメージして名前にしています。これもとても良いネーミングだと思います。


横田:まとめると、いいコピーは3種類。「約束・提案・うれしい」がその3つ、というお話でした。ちなみにですね、最初にうのりなさんが言ってくれた「ぜんぶ、雪のせいだ。」。これはどれでしょうか?

うのりな:え〜、「うれしい」かな?

横田:これはですね、「うれしい」もあるのかな?僕は「提案」かなと思いました。

うのりな:雪のせいにしちゃおう!ってこと?
 
横田:そう(笑)。雪のせいにして、気になるあの子を誘っちゃおうっていうことなのかなと思いました。
 
うのりな:ああ〜、そうかそうか(笑)
 
横田:というわけで、今回は「良いキャッチコピーとはどんなものか」というお話をしました。


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