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□□□とボードゲーム(1.94302)〜デュシャンのチェスプロブレム(中)

前回の記事はこちら。

1943年につくられた、マルセル・デュシャンのチェスプロブレム(詰めチェス)について書いております。
前回は、詰むとしたらこんな手筋、という内容でした。
詰むとしたら。
今回は、どうして詰ないのかという手筋をみていきます。


うん、詰まらん

いや、結構面白い話ではあるんですがね。
1943年につくられた、デュシャンの問題はこちら。

白の先手で、白勝ちを目指します

前回の最後に、こちらを何手か進行した途中図(白6手目まで)を残しました。
それがこちら。


白のキングが移動して、黒のルークにプレッシャーをかける。

さて、黒の手番。
前回は、黒はルークでポーンを取る手から、白の勝ちに至りました。

じゃ、逃げますか。


次の白番で、動かすことのできるのは4つのコマです。

詰まらんその1

ポーン昇格の手筋から。

左:白7手目 右:黒7手目
左:白8手目 右:黒8手目

前回と同じく、コマの取り合いとなりました。
前回の状況と異なるのは、キングが最上段にいます(前回は上から2段目)。
この位置だと、黒唯一のポーンの昇格を阻止することができません

白手番で、黒ポーンを追いかけても追いつかない。

結果、双方のポーンが昇格して、互いにクイーン1個を持つ状態となり、互いに詰めの手はなく引き分けとなります。

詰まらんその2

もう1つの別のポーンを動かしていきます。

左:白7手目 右:黒7手目
左:白8手目 右:黒8手目
左:白9手目 右:黒9手目
左:白10手目 右:黒10手目

こちらも、黒唯一のポーンの昇格を阻止することができません

さて、このプロブレムについて書かれた記事では、この詰められない2つの手筋の紹介していますが、書かれていない他の手も追ってみます。

詰まらんその3

キングを動かします。

左:白7手目 右:黒7手目

次の白番は、ポーンを守るためにキングが前の位置に戻ります。
ありゃ……どうやら千日手ですね。

詰まらんその4

ルークを動かしてみます。

左:白7手目 右:黒7手目

もう1つのポーンにも浮気して仕掛けようとすると、逃げられてしまい昇格を助けてしまいます。

ならば他のマスに移動しましょうか。

左:白7手目 右:黒7手目

黒はキングを動かして安全を保ちながらポーンを守ります。

前回の記事で、

ところで、白のルークはチェック(下図の左)ではなく直接昇格間近のポーンを阻止を狙って一番右の筋に移動して〈黒5手目〉とおなじ配置にする手も(下図の右)あります。
これだと、手番が逆(次は白ではなく黒の手番)になります。
問題ないんでない?と思われた方、これ、相当問題あります(のちのち説明予定)。

と書きました。
よくよく見ると、右の図は黒のルークの位置が異なるだけで、今回の4つ目とほぼ似たような状況なのです。

結果、詰まらんのです。


またも中締め

ということで、デュシャンのつくったチェスプロブレムは、解けない問題だったのです。

しかし、なんでこんなの作ったのか?
前回紹介したサイト(特にToutfaitの「A Problem With No Solution」)では、その経緯が書かれております。
もともとは、画廊ジュリアン・レヴィで行われた小さな展覧会「Through the Big End of the Opera Glass」の告知広告で使われたものでした。
広告に印刷されたこの問題の裏側には、デュシャン自身が描いた天使が重なっています。

で、これ、何?
次回あることないこと書きます。

では。


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