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Bill Taylorさんの考案したゲームについて書いてみる(3:Bill Taylorは「拡張?緩和?にこだわる」)

前回の続きとなる記事はこちら。

第3回目となるのですが、まだまだ接続ゲームを紹介します。
今回紹介するのは、年代順だと「Triskelion(トリスケリオン)」「Chameleon(カメレオン)」「Odd-Y(オッド・ワイ)」の3つ……の予定(にごした理由は、後述)です。
今回の記事の流れの関係で、まず「カメレオン」から紹介します。


Chameleon(2003年)

BGGに「Chameleon(カメレオン)」のページはありますが、ほとんど情報がありません。

一方、『ConnectionGames』に「カメレオン」の詳しい説明があります(P229〜232)。
そこでは、「カメレオン」の考案者について、大変興味深いことが書かれていました。
実はBillさんのほかにもう1人います。
Randy Cox(ランディ・コックス)さんで、Billさんの数週間前(2003年11月5日)に考案していました。
なぜ日付までわかるのかというと、Randyさんは「Goofy Hex(のちに、Funky Hex)」と名称をつけて、Abstract Game Magazine主催の「Unequal Pieces Game Design Competition」 にエントリーしたから、だそうです。

【補記】
ただし、Randyさんがエントリーした記事や資料までは、探しきれておりません。
Abstract Game Magazine」は、本コンペを開催した時期に16号を発行して休刊(2019年に復活)しており、結果などが記事になっていないようです。


「Chameleon(カメレオン)」のルールのベースは「Hex(ヘックス)」です。
派生したゲームのルールは、大抵拡張していきますが、「カメレオン」は真逆でして、ルールを緩和してしまいました。

用意するコンポーネントは「ヘックス」と同じです。
あたらめて、「ヘックス」のルールをおさらいすると、

プレイヤーは交互に、自分の受け持つコマを1つずつ盤面に置き、自分の受け持つ盤面の相対する2辺を同じ色のコマで連結してつなぐと勝利となる。

です。
「カメレオン」のルールは、

プレイヤーは交互に、コマを1つずつ盤面に置き、自分の受け持つ盤面の相対する2辺を同じ色のコマで連結してつなぐと勝利となる。

です。
太字の箇所、自分の受け持つがなくなった、つまりルールが緩まりました。
「ヘックス」では、それぞれのプレイヤーが自分のコマとして1種類のコマを受け持つので、2種類のコマがあります。
「カメレオン」では、2種類どちらのコマを打っても構いませんし、どちらの色のコマで連結しても構いません。

上の図のように、赤のプレイヤーは、赤のコマでも青のコマでも、自分の受け持つ(赤の)2辺をつなげてしまえば、勝ちです。
となると、ちょっと気になることが。

上の図のように、?の場所に赤のコマを置くと、どちらのプレイヤーの2辺もつながっていまいます。
この場合は、コマを置いたプレイヤーの勝ちとなります。

「カメレオン」のゲームプレイがどのようになるのか、想像してみます。
2種類どちらのコマを置いても、どちらのプレイヤーもそれなりに連結に近づくので、うまく自分の手番で連結が完成するように、相乗りしつつ調整をしていく感じでしょうか。
まさか、ルールを一部ユルくしてもそれなりに遊べてしまうとは。
面白い、かつ、怖ろしいゲーム、オモロシイです。

もっとオモロシイことをいえば、おそらく大抵の接続ゲーム(ConnectionGame)は「カメレオン」化できると思われます。
たとえば「TwixT(ツィクスト)」も「カメレオン・ツィクスト」で遊ぶことができるはずです。

「ツィクスト」といえば、数年前に再出版騒動があって、記事にしたことがありました。

この騒動ですが、もし「カメレオン・ツィクスト(もちろん普通の「ツィクスト」も遊べるけどね)」として売り出したら、どうなっていたのでしょうか。
おそらく、ほとんど変わらずに非難されていたでしょう。
しかし、角度の異なった意見がいくつか得られたかもしれません。

番外:Jade

『ConnectionGames』では、「Chameleon(カメレオン)」のルーツとなったゲームとして、2001年にMark Tompson(マーク・トンプソン)さんが考案した「Jade(ジェイド)」をあげています。

「Hex(ヘックス)」と少し異なり、短辺と長辺との長さが異なる、平行四辺形上の六角形マスの盤面になります。
2種類のコマを互いに打って、同じ色のコマを連結させます。
プレイヤーの勝利条件が、それぞれ異なります。
1人は「短辺同士もしくは長辺同士をつなぐ連結を、どちらか交差せずに2つ以上つくる」と勝ちとなるParallel(パラレル)

短辺同士をつなぐ
長辺同士をつなぐ

もう1人は「短辺同士の連結と長辺同士の連結とを交差させる」と勝ちとなるCross(クロス)

短辺の連結と長辺の連結が交差している
盤面の角コマは、短辺にも長辺にも対応しているので、
対角をつなぐ連結は効率がいい

パラレルとクロスで分けるとは、なかなか変態度高めのルールです。

しかし、Billさんは「ジェイド」ではなく、ほかのゲームから「カメレオン」を考案したのではないか、と推測します。
それが順序を変えて後回しにしました「Triskelion(トリスケリオン)」です。


Triskelion(2002年)

「Triskelion(トリスケリオン)」は、別名「三脚巴(さんきゃくともえ)」とも呼ばれます。

この形をもとに、Billさんは考案したゲームの名称としたのですが、後述します。

「トリスケリオン」ですが、このゲームは、3人で「Hex(ヘックス)」をしよう、という人数の拡張からうまれた、と推測します。

ゲームの盤面ですが、なにせ3人で「ヘックス」しますので、正六角形型になります。

3人のプレイヤーは順々にコマを打ちますが、「トリスケリオン」は、2種類のコマ(仮に、黒と白)をつかいます。
3種類ではございません。
これらのコマは、最初のプレイヤーから、黒→白→黒→白→黒→……と交互に打つ種類のコマが決まっています。

さて、プレイヤーの勝利条件ですが「自分の受け持つ2辺を同じ色のコマで連結する」と勝ちです。

上の図だと、赤のプレイヤーが勝ちです。
ところで、すべてのプレイヤーが、向かい合った辺同士を同じ色で連結できないようにするつなぎかたがあります。

上の図のように、1辺飛ばしで、それぞれのプレイヤーの受け持つ辺を連結してしまうと、もう1色のコマで向かい合う辺同士を連結することができません。
まさに、このコマの連結した形がトリスケリオンなのです。
そして、もう1つの勝利条件「自分の手番でトリスケリオンをつくった」プレイヤーは、勝ちとなります。

さて、「トリスケリオン」は3人専用ゲームですが、2人ようにするとどうなるか?
そう、「カメレオン」になるのです。


Odd-Y(2015年)の予定でしたが……


「Triskelion(トリスケリオン)」には、「Hex(ヘックス)」のほかに、もう1つベースとなったであろうゲームがあります。
「Hex(ヘックス)」の数年後に考案された「The Game of Y(Yのゲーム)」です。

「Yのゲーム」も「ヘックス」から派生したアブストラクトゲームです。
で、「Yのゲーム」に関する情報を集めてみましたが、これにはまた個別の系譜があり、追えば追うほどむちゃくちゃそそる情報満載の沼でした。

ということで、「Odd-Y(オッド・Y)」の紹介は保留にして、近々「Yのゲーム」の記事を書くことにします。

急展開。

では。

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