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□□□とボードゲーム(1.94301)〜デュシャンのチェスプロブレム(前)

先週はお休みしておりました。
2週間ぶりのご無沙汰でございます。

今回どうしようかと考えましたが、あんまり考えられなかったのでお茶を濁します。

デュシャンの詰めチェス

20世紀最大の問題芸術家といえる、マルセル・デュシャン。
芸術家のほかにチェスプレイヤー、いや、本質はチェスプレイヤーであったデュシャン。

彼が1943年に出題した、チェスプロブレムがあります。
「プロブレム」とは将棋でいう「詰将棋」と同じく、相手のキングをチェックメイトする(勝つ)のが目的です。
「詰めチェス」と言い換えても構いません。


白先白勝(つまり、プレイヤーは白番で最初に手を指し黒に勝つ)を目指します。

デュシャンのチェスの腕前ですが、相当な手練れです。
特に終盤の読みは素晴らしいと評価されています。
なので、プロブレムの作成能力も高いはずです。

出題当時は、答えは明かされていませんでした。
懸賞金を出して詰めの手順を募った人もおりました。


さて、このプロブレムの回答ですが、


どうやら、詰めません。


このプロブレムについて、おおよそ2018年くらいから、いくつかのサイトで検討されて記事になっております。


詰め筋の意図

なぜこのようなプロブレムを作ったのかはデュシャンの肚の裡ですが、おそらくこのような詰めを想定していたのでは、という手筋を細かく追ってみます。

改めて、こちらがプロブレムです。

白のポーン(♙)は下から上へ、黒は上から下へと動きます。
白はポーンを最上段に移動してクイーンに昇格したいところです。
しかし、黒のルークが邪魔で移動できません(ポーンはナナメ移動でないとコマをとることができません)。
その一方、黒は一番右端のポーンを最下段に移動してクイーンの昇格を狙います。
白は黒のポーン昇格を阻止するにはルークを使いたいのですが、黒のルークが邪魔です。

そのような状況を踏まえつつ、詰め(と思われた)手順をあらわします。

左:白1手目 右:黒1手目
左:白2手目 右:黒2手目
左:白3手目 右:黒3手目

一気に各プレイヤーの3手目までの手順です。
黒はポーンの昇格を狙います。
白はキングを移動して、ルークの代わりにポーンを守ります。

左:白4手目 右:黒4手目
左:白5手目 右:黒5手目

白のルークはキングの守りで自由に動けるようになったので、黒のキングにチェック(王手)します。
キングが逃げると、昇格間近のポーンを狙います。

ところで、白のルークはチェックではなく直接昇格間近のポーンを阻止を狙って一番右の筋に移動して〈黒5手目〉とおなじ配置にする手もあります。
これだと、手番が逆(次は白ではなく黒の手番)になります。
問題ないんでない?と思われた方、これ、相当問題あります(のちのち説明予定)。


左:白6手目 右:途中図

白のキングを黒のルークを取る位置に動かして、牽制します。

途中図からの、黒手番がこのプロブレムの要所となります。

今回は、詰めになる想定であろう「黒はルークで白ポーンをとる手」を追っていきます。

左:黒6手目 右:白7手目
左:黒7手目 右:白8手目
左:黒8手目 右:白9手目

コマの取り合いです。
盤上に残っているコマは、お互いキングとポーン1個のみです。
黒は残ったポーンを最下段まで移動したいです。
白9手目は、黒のポーン昇格を取って阻止し、かつ、白のポーンを昇格させるために筋を空けます。

その後

その後の手順は、白がぴったり黒のポーンを取ることができます。
黒はキングのみで白はクイーン昇格確定で、白の勝ちとなります。


一旦の中締め

白勝ちの筋を追っていきましたが、そうはいかないのです。

上の盤面状況で、黒番はどのような手で白の勝ちを阻止するのか。

それは次回に。

では。

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