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大半の人が知らないかもしれない『モンティ・ホール応用問題』について、書いてみる。

『モンティ・ホール問題』とは?


Youtubeでもいくつか解説動画があがっています。
この問題はどんなものかというと、

【Wikipediaからの引用】
プレーヤーの前に閉じた3つのドアがあって、1つのドアの後ろには景品の新車が、2つのドアの後ろには、はずれを意味するヤギがいる。
プレーヤーは新車のドアを当てると新車がもらえる。プレーヤーが1つのドアを選択した後、司会のモンティが残りのドアのうちヤギがいるドアを開けてヤギを見せる。
ここでプレーヤーは、最初に選んだドアを、残っている開けられていないドアに変更してもよいと言われる。
ここでプレーヤーはドアを変更すべきだろうか?

追記:司会者は、新車のあるドアがどれかを、事前に知っています。

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例えば、回答者は1番のドアを選ぶ。
司会者は(すでに答えは知っているので)、ハズレの3番のドアを開く。
回答者は、1番のドアのままでいいのか、2番に変更するのか、それともどちらを選んでも確率は同じなのか、ということです。

この問題は色々いわくつきで、
・IQ228の超天才マリリン・ボス・サバント(Marilyn vos Savant)さんが、新聞のコラムで「変更したほうが確率が高い」と答えた。
・それは間違いだと、大炎上する(ほとんどの人の意見は「確率は変わらない」)。
・何人かの数学者も、マリリンさんの回答は間違いだ、と指摘する。
・結局、マリリンさんの回答は正しかった

なぜ、変更したほうが確率が高いか、その理由を知りたい方は、調べてみて下さい。
1つサイトをあげておきます。


100枚のドア

さて、「どうして変更したほうが確率が高いのか」の説明・解説をしている書籍や文書などはたくさんあります。
そのなかで、よくあがるのが「100枚のドアで考える」です。

・100個のドアのどれか一つにアタリがある、他すべて(99個)はハズレ。
・挑戦者は100個から1つだけドアを選ぶ。
・ホール氏は残りの99個のドアから98個のハズレのドアを開けてみせる。
・挑戦者はドアを変えるか、そのままかを選択する。

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例えば、回答者は1番のドアを選ぶ。
司会者は(すでに答えは知っているので)、ハズレの98枚のドアを開く。
回答者は、1番のドアのままでいいのか、2番に変更するのか、それともどちらを選んでも確率は同じなのか、ということです……って、どっかで書いたな。

この説明で、「変更したほうがいいよね」と納得する人が多いようです。

で、この説明からの「応用問題」が考えられるのですが、実は説明しているサイトや動画が全くと言っていいほどありませんでした。
類似の問題が、Yahoo!知恵袋に1件見かけました。

それは、このような問題です。

・100個のドアのどれか一つにアタリがある、他すべて(99個)はハズレ。
・挑戦者は100個から1つだけドアを選ぶ。
・ホール氏は残りの99個のドアから1個のハズレのドアを開けてみせる。
・挑戦者はドアを変えるか、そのままかを選択する。

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回答者が最初に選んだドアを赤くしました。
司会者は、残り99枚の扉のうちハズレのドアを開けました。
回答者は、(1)最初に選んだドアにするか、それとも、(2)残った98枚のドアから1枚を新たに選び直すのか、どちらのほうが確率が高い?

ということです。

考えてみて下さい。

答えは下に書きます。


答え

まず(1)の状況を書いてみます。
当たり前のことを書きますが、100枚のドアのうち1つに必ず当たりがあります。
そして、100枚のドアから1枚を選ぶ100択問題ということ。
なので、当たる確率は1/100です。

(2)の状況。
99枚のドアのどれにも当たりがないことがあります。
最初に回答者が選んだドアに当たりがあるときです。
なので、最初のドアから変更して選んだとき、絶対に外れる確率は1/100です。
言いかえると、99枚のドアのうち1つに必ず当たりがある確率は、99/100です
そして99枚のドアから、必ずハズレのドアを1枚除外します。
ということは、98枚のドアから1枚を選ぶ98択問題です。
この選択の当たる確率は1/98です。
したがって、(2)の状況の確率は掛け合わせると、99/100×98です。

では、(1)(2)それぞれ比べてみます。
比較やすいように(1)の確率を通分(98/98をかける)すると、
(1)は98/100×98
(2)は99/100×98

(2)のほうが1/9800だけ、確率が高くなります。
なので、「残り98枚のドアを選び直したほうが(ほんのちょっとだけど)当たる確率が高くなる」のです。

無限枚のドア

いやはや。
『モンティ・ホール問題』の真の恐るべきところを垣間見ました。

ドアが何枚あろうが、最初に扉を決めた後、回答を知っている司会者が残ったハズレのドアを1枚以上開けて公開して「残りのドアから選び直していいよ」と言われたら、

はいはーい、よろこんで選び直しまーす!

としなさい、なのです。

今回の応用問題をその他の枚数の場合にもあてはまるように書き直すと、

・n個のドアのどれか一つにアタリがある、他すべて(nー1)個はハズレ。
・挑戦者はn個から1つだけドアを選ぶ。
・ホール氏は残りの(nー1)個のドアから1個のハズレのドアを開けてみせる。
・挑戦者はドアを変えるか、そのままかを選択する。

このとき、ドアを変えたほうが変える前よりも確率が1/n(nー2)だけ高い(ただしnは3以上)。

です。
本家『モンティ・ホール問題』はn=3の場合なので、確率は1/3高くなります。
確かに、最初の選択のあたる確率は1/3で、変更した場合は2/3でした。
『モンティ・ホール問題』は、言いかえると、

「3択の問題」と「1/3は絶対外れだけど、1択の問題」、どちら?

なのです。

さて、非常に当たり前と思えることを書きますが、今回の応用問題は、ドアの枚数が多くなればなるほど、変更前と変更後の当たる確率の差はどんどん小さくなります。
つまり、無限枚数のドアで考えると、変更前と変更後の当たる確率の差は無限に小さくなりますので、極論、変更してもしなくても、確率は同じになります。

あれ?
これって、マリリンさんに反論した人たちの意見と一致しますね。


司会者はバカヅキ状態

「どちらを選んでも変わらない」と反論した人たちは、なぜそう考えてしまうのか。
Wikipediaでは、このように述べています。

【Wikipediaより引用】
この問題を巡る人々の反応は、冒頭のエピソードにある様に『どちらを選んでも変わらない』とする意見が多かった。
ドアが2つになった時点でプレーヤーが改めてコイントスによって決めなおしたと仮定すると、景品を得る確率は1/2となる。 ところが、2枚のドアの価値はルール (1) - (4) で確率の高い(価値のある)選択をすることが可能となっている。つまり、『どちらを選んでも変わらない』は誤りである。
【ルールについて、Wikipediaより引用】
(1) 3つのドア (A, B, C) に(景品、ヤギ、ヤギ)がランダムに入っている。
(2) プレーヤーはドアを1つ選ぶ。
(3) モンティは残りのドアのうち1つを必ず開ける。
(4) モンティの開けるドアは、必ずヤギの入っているドアである。
(5) モンティはプレーヤーにドアを選びなおしてよいと必ず言う。

※追加注:モンティは司会者のことです。
太字は、珍ぬが太字に変更しました。

太字のところに注目します。
『モンティ・ホール問題』は、

「3択の問題」と「1/3は絶対外れだけど、1択の問題」
どちらを選ぶ?

です。
ただし、この問題は、司会者が絶対に正解のドアを知っているから100%成立します。
では司会者が、正解のドアを全く知らない素の状態ーー言いかえると、コイントスをして決定する状態ーーならば?
この問題は、

「3択の問題」と「1/3は絶対外れだけど、2択の問題」、どちら?

で、司会者が間違って正解を開けてしまうと、問題不成立になります。
では、問題が成立しない確率は、どれくらいか?
その確率は、1/3は絶対に起こらず、残り2/3での2択なので、

2/3×1/2=1/3

です。
………と書いても、この数値が一体なんなのか、ピンとこない人もいそう(実は珍ぬも)でしょうから、100枚のドアの場合でも考えてみます。

「100択の問題」と「1/99は絶対外れだけど、98択の問題」。

この問題が『モンティ・ホール応用問題』として成立しない確率は、司会者が正解のドアを開けてしまうことです。
その確率は、1/100は絶対に起こらず、残り98/99での98択なので、

1/100×1/98=1/9800

この数値は、応用問題で求めた、ドアを選び直す選択がどれくらい有利なのかの確率の差と一緒です。

これって、「司会者の運不運で問題が成立するかしないかが決まる」と見てしまうと、

『モンティ・ホール問題』の司会者は
空前絶後の100%バカヅキ状態。
当然乗らなきゃ損だよね!

なのです。

締め

ということで、長々書いてみました。
一番の懸念事項は、書いたことに間違いあるんじゃないかってことです。
ということで「誤りみつけました!」方の、ご指摘お待ちしております。
大変助かります。

では。

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