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晩婚化について調べていたら背筋が凍ってしまった

「晩婚化」と聞いて、「ああ日本が苦しんでるやつね」ぐらいの印象は皆が持つようになった。それほど日本の少子高齢化は深刻であり、それに紐づく現象として広く共有されているのが「晩婚化」だ。

そんな中、日経新聞の初婚年齢に関する記事が話題となった。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD019VU0R01C23A2000000/

記事の要旨は以下。

  • 「晩婚化」つまり平均初婚年齢の上昇は、中高年の初婚が増えることで生じている

  • 初婚でもっとも多い年齢層は27歳。20年前と変わらない

  • 「みんな30歳くらいで結婚しているからまだいいか」は危険。30歳時点で7割ほどの人が結婚する

非常に興味深い。
われわれが「晩婚化」として認識していた「30歳を超えてからの結婚」は実は一般的なものではなく、今も昔も人は27歳前後で結婚するというのだ。
数字のマジックとでも言うべきか。

本稿では、日経新聞で取り上げられたこの「晩婚化」について、より深く調査していきたい。データは政府統計窓口(e-stat)の人口動態調査から引用する。

晩婚化とはどのような現象なのか?
マクロな結婚観はどう変化しているのか?

これらの点について深堀りする。
わたし個人としては、以前のnoteでも「早期結婚」をすすめたが、本稿ではそれをいったん忘れて、データをもとに中立的な考察を試みたい。

晩婚化はふつうに起きている

まずは日経記事で取り上げられた晩婚化についてみていこう。
当該記事では、初婚年齢を横軸、縦軸には婚姻数をとったヒストグラムで傾向を見出している。2022年と2003年におけるヒストグラムのピークがともに27歳であることが指摘されている。

再掲

一方で平均初婚年齢は20年で2歳ほど上がっており、これを記事では「中高年の婚姻数が増えたため」としている。

この興味深い現象について、
わたしもe-statを叩いて検証した。結果は次のようになった。

グラフは「男女ともに初婚」である婚姻に対し、女性の年齢を横軸、縦軸に累積度数をプロットしたものだ。2022年と2003年のデータを用いている。
本グラフにおける累積度数とは、簡単にいえば「その年齢までで何%が結婚するか」を示したものである。
青色で示した2022年のグラフを見てほしい。
これを見ると、30歳時点の累積度数は72%である。つまり「30歳までに72%が結婚する」ということだ。

話を戻そう。
グラフを見ると、日経記事で出された結論である「晩婚化は中高年の結婚が増えたことによるもの」は、少々乱暴に思える。

2022年と2003年を比較すると、昨今の日本で共有されている「晩婚化」について、3つのポイントを見出すことができる。

第一に、10代後半~20代前半の婚姻が少なくなっている。
グラフが形を変えず右にシフトしているのがわかる。2003年のグラフは18歳あたりから徐々に婚姻割合が上がっているのに対し、2022年は20歳付近でようやくグラフが立ち上がる。
若年層の婚姻が消滅したことが、「晩婚化」の主要な要因のひとつであることがうかがえる。

第二に、30代における結婚観の変化が見られる。
2022年と2003年のグラフを比較すると、30-31歳時点での累積度数にもっとも大きな差が生じ、30代後半-40代前半で徐々に差を縮めるような傾向がみられる。
2003年は30歳時点で83%の人が結婚していたが、2022年は72%にとどまっている。その人たちはいつ結婚するのかというと、30代後半から40代前半なのだ。

第三に、上記二つ以外はそれほど変わらない。
グラフの形に明確な差異が生じているのは、10代後半-20代前半、そして30代である。それ以外、つまり24-28歳くらいの人たちはともに10%前後の割合で結婚している。

「結婚観の変化」として総括すると、
若年層の結婚がより少数派になり、30代後半-40歳前半の結婚がふつうのものとなった。20代後半でマジョリティが結婚する傾向は変わらない。

つまり、
晩婚化は、ふつうに起きているのである。

・・・と言いたいところだが、まだ重要な点がある。
それは「晩婚化は止まった」ということだ。

先に言っておくと、これはいいことではない。ちょっと悪いことでもない。とても悪いことだ。

全方位で非婚化が進み結婚そのものがオワコンへ

2003年から2022年における晩婚化への移行を、もうすこし細かく見ていくと、興味深いことがわかる。
それが以下のグラフである。

初婚年齢(女性)の累積度数を、2003年から2022年まで、5年刻みでプロットした。
これを見ると、2003年から2008年にかけては前述のような晩婚化が見られるが、2013年以降にそれは起きていない。
より重要なのは、晩婚化が起きていないどことか、グラフの形がまったく変化していないということだ。
つまり、マクロな結婚観は、ここ10年なにも変わっていない。

一方で、婚姻数は順調に減っている。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai20/dl/kekka.pdf

これは一体どういうことなのだろうか。
嫌な予感を抱きつつ、今度は婚姻の累積度数ではなく、純粋な婚姻の「数」でプロットしてみた。

なにが言いたいのかというと、
「2013年からは、すべての年齢層において幅広く婚姻減が見られる」ということだ。
ちなみに2008年と2003年で同じグラフを作成すると次のようになる。

2003年から2008年にかけては、先に見てきたように「晩婚化」が進んだ。若年層の結婚がより珍しく、30代の結婚がより一般的になった。
婚姻数でその傾向を確認しても、30代で結婚する人は「増えて」いた。

つまり結婚観の主要な変化は「年齢」であり、要は「○○歳までには結婚するべきだよね」が高齢側にシフトしたのである。
一方、2013年以降は晩婚化こそ生じていないものの、事態はより深刻である。すなわち、2013年以降は「結婚しなくていいよね」という価値観が幅広い年齢層に広がっている。

岸田政権の少子化対策むなしく、どんどん子どもが減っている日本において、少子化が本格的に進むのはこれからなのかもしれない。
なにせ結婚そのものがオワコンになっているのだから・・・

ちなみにわたしは、この流れと逆行して早期結婚・早期出産を推奨している。興味があれば読んでみてほしい。


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