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思い込み脱却!FACTFULNESSで学ぶ世界の事実

春が来た。どこからともなく、空気が一変する。季節の変わり目にはいつも、ふとした瞬間に世界の秩序が変わるような、そんな錯覚に陥る。それは、ある種の覚醒かもしれない。この世界の本質を見抜くための、小さなヒントが、春の訪れとともに、ひそかに差し出されるのだ。

2019年に創刊された『FACTFULNESS』という本がある。この本は、世界をどう見るか、その視点を根本から変える力を持っている。人間は思い込みが激しく、その思い込みが現実を歪めてしまう。まるで、夜空を見上げたときに見える星々が、実際にはもう何百年も前に消え去っているかもしれないという事実のように、我々の認識と現実との間には、しばしば大きな隔たりが存在する。

僕たちは、世界がどんどん悪くなっていると感じがちだ。地球が賄える資源は70億人だとされているが、その数を既に超え、2050年には100億人に達するという。海面の上昇、エネルギー問題、戦争、金融崩壊、大きな災害…。悪いニュースはいつでも手元にある。

しかし、『FACTFULNESS』では語られる。極度の貧困は過去20年で半分に減った。世界中の1歳児の80%が予防接種を受けている。これらは、まるで春の陽光のように、世界の暗い面ばかりを見ている僕たちに、別の視点を提供してくれる。

僕たちがネガティブな情報に敏感であることは、恐らく進化の過程で培われた防衛機制の一つだろう。しかし、そのような機制が今や、我々を現実から遠ざけていることも事実だ。飛行機が1000回連続で無事着陸したというニュースは、誰の目にも留まらない。しかし、一度の事故は大きな恐怖を植え付ける。それは、静かな湖に投げ入れられた小さな石が生む波紋のように、僕たちの心に広がっていく。

『FACTFULNESS』を読んで、僕は考えさせられた。世界を二元論で捉えることの愚かさについて。それは、夜に一人で長い階段を上がっていくとき、足元に不意に現れる影に一瞬たじろぐようなものだ。影は実体ではない。だが、それに怯える心は、非常にリアルだ。

この本は「俺か、俺以外か」という単純な二項対立ではなく、世界はもっと複雑で、多様で、そして美しいということを教えてくれる。それは、予測不可能で、時にはカオスにも見えるが、その中には確かなリズムが存在する。

事実を知ることは、夜の暗闇で道を照らす灯りのようなものだ。僕たちを恐怖や不安から解放し、一歩一歩前に進む勇気を与えてくれる。悲観的に備え、楽観的に行動する。それは、長いトンネルを抜けたときに見える光のようなものだ。

ジョン・テンプルトンの言葉が胸に響く。「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観とともに成熟し、陶酔の中で消えていく。」僕たちは、この複雑で予測不可能な世界を、一つ一つの事実を拾い上げながら、ゆっくりと、しかし確実に理解していくしかない。

世界は、僕たちが思うほどには悪くない。事実、多くの面で、徐々に良くなっている。それを知ることは、人生を明らかに穏やかにする。得体のしれない不安や恐怖に怯えることは少し減る。むしろ、間違った憶測や、ゆがめられた現実に怯えるのは愚かなことだ。良いことも悪いことも、それが何であれ、僕たちは受け入れなければならない。世界は、二元論でも一元論でもなく、多様な事実と解釈があるのだ。それが真実であると知ることは、僕たちを少し賢く、強くしてくれる。

春の風を感じた。くしゃみがでる。花粉の季節だ。外の世界は、まだ多くの謎に満ちている。しかし『FACTFULNESS』という本が僕に教えてくれたのは、その謎を恐れずに、むしろ楽しむことの大切さだ。僕たちの世界は、思い込みや偏見で覆われているが、それを一つ一つ取り除いていく作業は、まさに春の大掃除のようなものだ。その先には、より明るく、希望に満ちた世界が待っていることを信じている。