見出し画像

「リニューアル後のZOOMOを語るvol.2 ~ニホンツキノワグマ~」

こんにちは。盛岡も連日30℃を越えてもうすっかり夏の暑さです。
前回の投稿からnoteを再開させたわけですが、一つ目の施設から語りすぎてしまい、全園紹介したらいくつに分けて書くことになるのかすでに不安になってしまいましたが、気を取り直して今回は予告通りニホンツキノワグマの施設の改修についてご紹介したいと思います。

現在ZOOMOでは“姫”と“リオ”という2頭のメスのニホンツキノワグマを飼育しています。2頭の個性的なキャラクターと魅力的な仕草で全国からファンが会いに来てくださるほどの人気者です。

ニホンツキノワグマは近年人里への出没に伴う農作物被害や人身事故などが多発して、怖いイメージや悪者のイメージを持たれている方も多いかもしれません。岩手県でも今年は例年以上に目撃情報や人身事故の情報が寄せられていて、6月には岩手県全域に「ツキノワグマの出没に関する注意報」が発令されました。

ツキノワグマによる人身事故や農作物被害、人里への出没には様々な理由があります。
山の食物の不作といった要因だけでなく、開発による森林破壊、中山間地域の人口減少と高齢化、生活様式の変化に伴う里山の荒廃、農作物の野積み、山菜採りや登山者の不注意など、人の暮らしの変化やツキノワグマに対する知識不足といった人による要因が大きいと考えられています。

岩手県は県土の77%が森林に覆われていて、推定3700頭の野生のツキノワグマが生息していると言われています。これは秋田県や長野県に次いで多い生息数ですが、九州地方ではすでに絶滅していることや四国地方も数十頭しか生息しておらず絶滅が危ぶまれている現状を考えると、一つの県にこれだけの頭数が生息しているということがどれだけすごいことなのかが分かるかと思います。
植物を中心とした豊かな食性を持ち、大きな体を維持するためにたくさんの食べ物を必要とするツキノワグマがこれだけ多く生息しているということは、それだけ岩手の森が豊かであるという証でもあります。

また、ツキノワグマのフンにはたくさんの植物の種が残っているため、食べ物を探して森を移動することで種を蒔き、森を育てます。動物と自然環境は相互に関わり合い支え合って暮らしいています。そのバランスが崩れれば生態系全体に影響を及ぼしかねません。人とツキノワグマとの軋轢は、2者だけの問題ではなく生態系全体の課題とも言えます。

ツキノワグマ対策には大きく分けると個体群管理と被害防除があります。私たちにできることは、クマを寄せ付けない対策、出会わないための予防を積極的に行って、事故や被害を未然に防ぐことです。
これまでにZOOMOでは秋田県立大学が行っている忌避剤開発の基礎研究に協力をしたり、岩手県や盛岡市と連携した防除対策に協力するなど、専門的な知識や技術を活かしてツキノワグマと人のより良い関係に向けて取り組んできましたが、飼育動物を通じて来園者に彼らへの理解を深めてもらい、私たちにできることを考え、行動に移してもらうための道筋を示すことも大きな役割だと考えています。

前振りが長くなりましたが、ZOOMOにとってニホンツキノワグマの飼育展示は地域の生物多様性保全のために非常に重要だということです。

さて、どんなところが改修されるのでしょうか。まずはこれまでのモート(堀)を挟んだ見下ろす形の展示では体の細かな部分を観察してもらうことが難しいと考えました。そこで、彼らの魅力をこれまで以上に感じてもらえるように同じ目線でより近くで観察してもらうため、運動場にせり出したガラス張りの「ツキノワグマテラス」を増設することにしました。
また、水によく入る2頭のためにボロボロだったプールを補修して、運動場の真ん中には6mの擬木を設置して木登りが得意な彼らの本来の行動や暮らしぶりを発現できるようにします。

(※完成予想図は擬木の設置が決まる前のものです。また、完成予想図はあくまでも参考資料です。完成後の構造と異なる場合がありますので予めご了承ください。)

ニホンツキノワグマの担当スタッフは、昨年1年間かけて行動分析学の研修を受けました。日々の飼育管理の中で動物たちの負担やストレスを最小限にするために動物の行動を科学的に理解するとともに、健康管理のための体重測定や採血を目標に行っているハズバンダリートレーニングにも活かされています。
また、退屈な時間を減らすための遊具や採食時間と運動量を増やすために運動場にハチミツやペレット、ドングリなどを隠す採食エンリッチメント、行動レパートリーを増やすための落ち葉や枝葉の給与、季節による食べ物の変更など、動物福祉を向上させるための様々なアプローチも展示の改修によってこれまで以上に魅力的に伝わるのではないかと思います。

すでにHPで発表されている「工事見学ツアー」では一足先にツキノワグマテラスをご覧いただくことができます。工事の進捗状況によっては、もしかすると一般公開前にテラスに下りることができるかもしれません。興味のある方はぜひご参加ください。

今回も語りすぎてしまい1つの施設しかご紹介できませんでした…。
次回はZOOMOのリニューアルのシンボル、ニホンイヌワシの施設改修についてお話したいと思います。お楽しみに。

企画営業広報 荒井