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「蹴 鞠」

『鳥獣戯画』・「丙巻」 第八幕

かいのどうぶつえん園長です。
今回は、鳥獣戯画「丙巻へいかん」“動物戯画”の第八幕、名付けて「蹴鞠けまり」の場面です。
遊んでいる動物たちが頭に乗せているのは、木の葉でまねた「烏帽子えぼし」、足には、草の葉で似せた蹴鞠用の靴「鴨沓かもぐつ」を履いています。
空中に蹴上げられた「まり」の実物は、鹿の皮を2枚つなぎ合わせた直径30センチほどの中空のボール。白くて軽く、中央が少しくびれていて、蹴るとボーン、ボーンという伸びやかな音が響きます。
中国を起源とする蹴鞠は、600年代に仏教などと共に渡来し、飛鳥、奈良朝から平安朝貴族の間で流行したそうです。
ところで、絵巻をじっくり見直すと、鴨沓が片足だけのサルがいます。なぜでしょうか?
『日本書紀』によると、中大兄皇子なかのおおえのおうじが法興寺で蹴鞠を楽しんだ際に、うっかり脱げてしまった鴨沓を、中臣鎌足なかとみのかまたりがひろって丁重に返したそうです。
それをきっかけに親しくなった二人は、やがて、権勢を誇っていた豪族・蘇我入鹿そがのいるかを倒し(645年)、大化の改新を推進しました。
絵巻の丙巻が完成したのは、ずっと後の鎌倉時代(1185- 1333年)のこと。しかし時間は経っても、このシーンを描いた僧(絵師)は、歴史に名高いエピソードを踏まえて、サルの鴨沓を、そっと脱がせたのかもしれませんね。

身構えるキツネ
鞠の行方を見つめるサル
真剣な表情の動物たち

2003年の開園時より、貝たちとは「割らない」「塗らない」「削らない」と固く約束して制作しています。園長

             <貝の配役>
鞠足
(まりあし=プレーヤー)
  ・カエル:アサリ/ツメタガイ/ハツユキダカラ/フトコロガイ
      /ヒメキリガイダマシ
  ・サル:アマオブネガイ/スズメガイ/スガイ/ハナマルユキ/タモトガイ
  ・キツネ:キリンイモ/ジュドウマクラ/フジノハナガイ/フトコロガイ
(まり):タマガイ  鴨沓(かもぐつ=蹴鞠靴):アマオブネガイ(ふた)
烏帽子(えぼし):アワビ(稚貝)  
(かかり=競技場):ホタテガイ/サンゴ/マガキ


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