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「母なる海へ」

<舞台裏>シリーズ No.16

かいのどうぶつえん 園長です。
貝の動物の制作現場では、毎日さまざまなエピソードが生まれています。

このシリーズでは、舞台裏の失敗談や内緒話、奇想天外な空想や徹底した“こだわり”などをチョイスしてみました。

第16回目は「母なる海へ」 です。

ジンベイザメに会いたい!イルカと泳ぎたい!など、ダイバーはそれぞれの目的を胸に、世界の海で潜ります。

そんな遠出をしなくても、国内の浅い海で楽しめるのは”ハッチアウト”です。
ダイバー用語のひとつで、卵から稚魚が孵化ふかする瞬間のこと。日本近海では「アオリイカ」のハッチアウトが見つけやすくておすすめです。

アオリイカの赤ちゃん誕生!
ハッチアウトの瞬間は、思わず息を呑みます

春から夏にかけて、アオリイカは海藻や岩の間に、細長い袋状の卵嚢らんのうを産みつけます。

袋の中の卵は20日ほどで孵化ふかし、赤ちゃんイカたちが元気に海中に飛び出します。ボンベの空気残量を気にかけながら、じっと辛抱して待つだけの価値は十分。タイミングさえ合えば誕生のシーンを観察したり、撮影できます。

オスは子育て、メスはお掃除
ジョーフィッシュのオスはえらい!

また、オスが口中で卵を守る「ジョーフィッシュ」や、同じくオスが腹部の袋で卵を育てる「タツノオトシゴ」のハッチアウトも、掛け値なしに”感動もの”ですね。

タツノオトシゴのオスも頑張っています

魚類や軟体動物が暮らす海には、地上とは異なる生態の生物がたくさんいます。大海原を気ままに漂うクラゲもそのひとつ。心臓も脳も骨もないクラゲは全世界で約3000種も存在し、最近では、水族館の水槽でゆらゆらと漂う姿が美しいと、女性を中心に人気沸騰中です。

眺めているだけで癒されるクラゲの群舞

変わり者もたくさんいます。「タコクラゲ」は体内に褐虫藻を共生させ、光合成で生成する養分を、家賃がわりにいただく“ちゃっかり屋”です。

褐色藻と共生してエネルギーをもらう 「タコクラゲ」は、ほとんど餌が不要

刺激を受けると発光する「オワンクラゲ」は”天才肌”で、研究した下村 脩博士が「緑色蛍光タンパク質」を発見。2008年にノーベル化学賞を受賞し、iPS細胞の開発など生命科学や医学研究の発展に大いに貢献しています。

ところで、貝で動物をつくる時、まず姿形やポーズが気にかかります。写真や動画や実物を観察しているうちに、何を食べているんだろう?など、基本的な生態も知りたくなります。ついつい面白くて資料調べに熱中し、制作の手が止まって締め切りギリギリになるのは毎回のこと。

とりわけ海の生物については知らなかったことが多く、たくさんの謎が残されていることがわかってきました。

私たちの住む地球が誕生したのは約46億年前。初の生命が誕生したのは約38億年前で、海の中でした。

その後、海に残った生物と、上陸した生物はそれぞれに進化を重ねてきましたが、海は、すべての生命の母であることを、私たちはつい忘れがちです。

人間の胎児は、母親の胎内でわずか10か月の間に、魚類、両生類、爬虫類、そして哺乳類へと姿を変えます。胎児が育つ羊水と、海水の成分がほとんど同じなのは偶然ではありません。生命誕生の頃と同じように、人はいまでも羊水という水の中で、進化の過程を追体験して育つのですね。

1961年、人類で初めて宇宙を飛行したガガーリンは、「地球は青かった」という言葉を残しています。“水の惑星“の表面の70%は青い海。

そうだ!「かいのどうぶつえん」の水族館部門を、
もっと、もっと充実させなくては。 つづく。

 

貝は「割らない。塗らない。削らない」のスッピン勝負

 アオリイカ  「ハッチアウト」  〜成分表〜
アオリイカ:マクラガイ/サヤガタイモ
       ウメノハナガイ/スガイ
       フジノハナガイ/ヤカドツノガイ
卵嚢:カイコガイ ★海藻:スギノキミドリムシ
海底:ホタテガイ



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