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DMBOK第17章データマネジメントと組織の変革

要約

組織のデータマネジメントの改革には、ITだけではなく、組織のチェンジマネジメントも重要です。変革という広義で体系化が難しい領域に対して、この章では法則を紹介します。
変革の法則には、トランジション理論や終結・中立ゾーン・新たな始まりのフェーズ、組織が変革に失敗する8つの過ち、変革の公式やイノベーター理論があります。

変革には法則がある

前提として組織のデータマネジメントの改革は、ITによって達成できるものではありません。むしろ組織のチェンジマネジメントに対する周到な計画と体系的なアプローチによって達成することができます。

下記のことを十分に理解した上で推進していく必要があります。

・変革はどうして失敗するのか
・効果的な変革には何が必要なのか
・変革の障害となるのは何なのか
・人々はどのように変革を体験するのか

DMBOKより

変革の法則の紹介

組織的なチェンジマネジメントには、基礎となる変革の法則があります。

①トランジション理論

トランジション理論とは変革におけるプロセスを変移と定義し、変移フェーズを「終結」「中立ゾーン」「新たな始まり」の3つのフェーズを必ず通過する、ということです。 ただし、その速さは異なります。

変革を管理するのではなく、そこに至る変移を管理する

DMBOKより

終結とは… 自分たちが手放すべきものがあると認めたり、自分たちが何かを失ったと認識したりすること。

中立ゾーンとは… 古いやり方は終わったが、新しいやり方はまだない状態、全てが流動的で誰が何をすべきかが誰にもわからない状態、物事が混乱し無秩序になること。

新たな始まり… 新しい方法が快適で、正しく、そして唯一の方法だと感じること。

②チェンジマネジメントで犯す8つの過ち

Jonh.P.Kotterは、 組織が変革に失敗する8つの理由を挙げています。

1. 過度の現状満足を容認する
2. 十分に強力な変革推進チームを確立できない
3. ビジョンの重要性を過小評価する
4. ビジョンの伝達を徹底しない
5. ビジョンの実現に立ちはだかる障害の発生を許してしまう
6. 短期的な成果をあげることを怠る
7. あまりにも早期に勝利を宣言する
8. 変革を企業文化に定着させることを怠る

DMBOKより

上記の8つの中から特に重要な部分のみを取り上げます。

データマネジメントの初期では、特に幹部からの支援が重要になります。組織の幹部からの積極的な支持や変革を指導するリーダーの連帯無しでは、大きな変革はほとんど不可能です。

ビジョンとは変革がどこを目指しているかを述べた明確で説得力のある宣言です。このビジョンは、データマネジメントの取り組みに対して活動の現状と課題、改善がもたらす恩恵、より良い将来像の実現に向けた道程を明確に述べなければなりません。 また、ビジョンはありふれていてシンプルなもので良いとされています。
DMBOKでは、ほとんどの章にビジョンについて記載があり、データ推進には重要であると述べています。
ビジョンは変革の取り組みに意義を与えます。意思決定の根拠となるビジョンが公式に宣言されていないと、あらゆる選択肢はリスクの論争となる危険性があり、どんな活動を行っても変革の取り組みが脱線し、弱体化してしまう可能性があります。

企業全体の変革には、3年から10年かかると示唆されています。よって、変革への取り組みは複雑であり、長期的目標を支えるための短期的目標が必要になってきます。これらの短期的目標を達成することで、チームは勢いを維持することができます。

③大規模変革の推進に要する8段階プロセス

1. 危機意識を高める
2. 変革推進チームを創設する
3. ビジョンと戦略を生み出す
4. 変革のためのビジョンを周知徹底する
5. 幅広い活動を促す
6. 短期的な成果を上げる
7. 改善を積み重ねて変革を生む
8. 新たな方法を文化に定着させる

DMBOKより

何かを変革させるためには、上記の8つのプロセスを踏むことが必要になります。重要な点としては変革を成功させるための取り組みは、8つのステップを全て経過しなければいけません。どこかのステップを省略することができません。

変革の障害となるものとして現状満足があります。現状満足を生む理由としては、目に見える気がなく、危機意識を高めることができないこと、また、組織の単位ごとに異なる業績評価指標を持つような細分化しすぎたゴールを設定することで、誰も責任を負うことのない状況を生むことが挙げられます。

④変革の公式

変革は「現状に対する不満のレベル」と「改善のためのビジョン」と「実行される最初のステップ」の積が組織内の抵抗を上回れば発生します。

公式は下記のようになります。

C =(D×V×F) > R

C:変革
D:不満のレベル
V:改善のためのビジョン
F:実行される最初のステップ
R:組織内の抵抗

⑤イノベーター理論

この理論については、おそらく1度は聞いたことがあるほど有名ではないでしょうか。
変革を実現するには、新しいアイディアが組織に対してどのように広がっていくのかを理解する必要があります。そして、この変化の様子を革新の普及(普及学)として知られています。


wikipededia 普及学より

組織に革新を普及させるためには2つの課題が存在します。

1つ目がアーリーアダプターの段階を打ち破って乗り越えることです。ーリーアダプターが、現場に対する不満を十分に認識できるように変革を確実に成し遂げられるよう、慎重に管理する必要があります。 アイディアは常に受容されるよりも拒絶されることの方が多いため、アーリーアダプターやアーリーマジョリティへ転換できるだけの最低限必要な人数を抑えることが重要です。

2つ目は、レイトマジョリティの段階からラガードへ革新が移行する時です。
チームは必ずしも100%の人々を新しいやり方に転換できるわけではないないことを受け入れなければいけません。グループの一定数は変革に抵抗し続けるため、組織はこのグループをどう処分するかを決めなければいけません。

まとめ

以上、組織の変革について解説しました。
変革は広義で体系化が難しいので企業毎に統一されていない対処をされています。変革の方針もバラバラなため、この章の法則を用いて、少しでも理論に則った施策を続けることが重要になってきます。

DMBOKの改革について特に重要な点を解説しました。ただし、非常に量が多いため解説していない部分が多々あります。詳細は本書を手にとってみて下さい。


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