いつか石田ゆり子になる私
「何かお悩みの事があれば、仰ってください」
ほぼ2年ぶりにデパートの化粧品売り場で
そう聞かれた。
友人の誕生日にプレゼントする
シートマスクを買いに行った時のことだった。
ギフトとして包む商品の他に、
自分用に何か肌の悩みに応じた
サンプルをくださるというのだ。
えっと……
すみません。特になにもないです。
えっ…
沈黙がこたえた。
(この人、たいしてケアもしてなさそうなのに
なにもないって…意識低すぎ)
と思われているような気がして。
実際のところ
あの美しい美容部員さんは
そんな意地悪な事は思っちゃいないと思うし、
完全に私の過剰な被害妄想なのだけど。
ただ特になにもないという
私の気持ちもまた真実。
別に自信があるわけではない。
ほんとに気になる事があまりない。
サウナに入るようになってから、
化粧はなるべくすぐ落とせるように
アイメイクは最低限しかしなくなった。
眉毛は描きたくないので自毛を整えてるし
今度まつげパーマはしようかなと思っている。
サウナに行くときに、すっぴんで行けば
より短時間で温まることができる。
本当は日常だって
すっぴんで自然に生活したい。
肌を守るために薄くクリームを塗って
粉を叩くぐらいで丁度いい。
すっぴん+αくらいのレベル。
ところで、何事にもこうなりたいという
目標が必要だ。
私は結構この数年ずーっと
石田ゆり子さんになると思っている。
以前はその為に
化粧品にこだわってみたり、
運動をしたり、
食生活を整えたりしたこともあった。
エッセイも読んでいるし
Instagramもチェックしている。
でもなんとなく、これではない感じがあった。
だって、私はどう逆立ちしたって
石田ゆり子さんにはなれない。
当たり前すぎて言葉にするのもおこがましい。
でも私は石田ゆり子さんになるのだ。
これを言葉にできなくて、
悶々としていた。
石田ゆり子になりたいというと
たいてい笑われるし、
あの人綺麗だもんね、と言われる。
別にそれはそれで良いんだけど、
そういうことではないんだという
言語化できないもどかしさ。
それは見た目を近づけたいとか、
あの年齢でも美しく整った姿でありたいとか、
そういうことではなくて、
あの方の醸し出す空気。
芯があってでも柔軟で、
優しくて天真爛漫で、でも真面目で。
そして可愛らしい。
自分の大切なものをわかっていて
自分とその大切なものを大事にしている暮らし。
そういう空気を纏いたい。
サウナは今までやったいろんなことの中で
一番石田ゆり子さんに近い気がする。
自分の身体の反応を感じて、
自分を大切にしている。
自分は自分で良いと思える。
だからだろうか、
自分の肌について悩みはと言われても
特にこれといって気になることがないのだ。
冒頭の話に戻る。
沈黙に耐えかねて、
あの、、石田ゆり子さんになりたいです
と口走った。
余計に空気は凍った…
当たり前である。
あ、いや、ちがいます!
ちょっと違うくて、
あの、あの方のように生きたくて。
私は今とてもサウナが好きで、
サウナに入ってるととても心が満たされて
石田ゆり子さんに近づけるような
そんな気がするんです。
なので、そういう心地よい気持ちを
もたらせてもらえるようなものがあれば…
サンプルをいただけますか。。。
と、纏まらない話をしたところで、
素敵な店員さんはにっこり笑って
これ、残念ながらサンプルはないのですが、
お一つどうです?と入浴剤を一包勧めてくれた。
発汗作用が高まる入浴剤
お姉さんの優しさに本当に救われた。
私はお姉さんのように優しくて機転のきく
石田ゆり子さんになりたい。
今夜は生薬入浴剤であったまって
温冷寒暖浴にきめた。
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