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高重量VS低重量

「筋力トレーニングは高重量で行うべきか、低重量で行うべきか」、おそらくこの議論は100年後も行われているだろう。この議論の際、二者択一的に考えるのは適切ではない。両者にメリットがあり、自分の目的に合わせて選択すればよいのだ。


高重量vs低重量、筋肥大効果変わらない?

高重量と低重量で筋肥大に有意差は見られなかったという研究は最近になり多く見られるようになった。

[i]この研究では、60%1RM以下でトレーニングする群と60%1RM以上でトレーニングする群では、筋力は後者がより向上したが、筋肥大において有意差は見られなかったとしている。

[ii]この研究では、トレーニングボリュームを等しくした状態で、片方の群は10RMで3セットのトレーニングを行った。もう片方の群は3RMで7セットのトレーニングを行った。結果として後者ではベンチプレス、スクワットの1RMが有意に向上したが、筋肥大において両者に有意差はなかった。

複数の研究から、筋力向上に高重量は有効であるが、筋肥大はトレーニングボリュームに比例するものであり、重量はトレーニングボリュームを構成する要素の一つであると考えられる。

ここで一つの疑問が生じる。いったいどの程度の重量で筋肥大が発生するのだろうか。上記の研究での低重量は60%1RMと10RMであり、トレーニーの感覚では中重量のように思える。極端に、100㎏1レップと1㎏100レップはトレーニングボリュームが等しいからといって筋肥大効果は同じだろうか。


どのくらい低重量なら筋肥大効果が発生するのか

[iii]筋肥大が見込める重量について調査したRCTがある。この研究では、13人の被験者に、肘関節の屈曲とレッグプレスを用い、重量による筋肥大の効果の違いを調べた。結果として、20%、40%、60%、80%1RM、にて、40%、60%、80%1RMでは同等の筋肥大が生じたのに対して、20%1RMでは、筋肥大の度合いが急激に低下した。

この研究から、筋肥大を目的とする場合は20%1RMよりも重い重量で行う必要があると示唆される。

複数の研究結果から、低重量でも高重量でも筋肥大効率が変化しないこと明らかになった。だからといって、高重量が筋肥大に必要ないと考えることは尚早だ。以下では基本的な低重量のデメリットと、基本的な高重量の筋肥大面でのメリット、デメリットを紹介する。繰り返すが、低重量か高重量かと二者択一に考えるのではなく、両方の特徴を理解することが重要だ。高重量と低重量の両方をトレーニングに取り入れることで筋肥大の可能性が最大化される。


全か無の法則から見る低重量のデメリット

全か無の法則とは、「ある一定の運動単位内の個々の筋繊維は興奮して最大収縮するか、まったく収縮しないかのどちらか」(Thompson Floyd,2021,p.22)という法則である。特定の筋肉の発揮する力の大きさは、動員される筋繊維数に依存するといえる。そして、動員される筋繊維数は、筋肉の受ける負荷が高いほど多くなる。

例えば、ベンチプレスで本来100㎏の重りを上げることができる人間が20㎏でベンチプレスを行う場合、動員される筋繊維の20%のみが運動に動員され、他の80%の筋繊維は運動に参加していないことになる。筋繊維の力発揮は0か100しかなく、筋繊維すべてが、全体の20%の力を発揮して運動するわけではないのだ。確かに、このようなトレーニングでも、20%の筋繊維がオールアウトすれば、残りの筋繊維が運動に動員する。しかしオールアウトまでの回数が多く、途中で音を上げてしまえばすべての筋繊維を動員せず運動を終わることになる。

以上のことから、現実的には極めて低重量でのトレーニングで高重量のトレーニングと同様の筋肥大を得ることは困難で、効率が悪い。


高重量のメリット「筋力と筋肥大には一定の相関関係がある」

筋肥大について、筋力と筋肥大には一定の相関関係があることが明らかになっている。筋力がつくことが筋肥大につながることは容易に想像つく。扱える重量を伸ばしていく作業は、筋力トレーニングの基本だ。

上記はベンチプレスの1RMと大胸筋の筋断面積の関係を示した図である。ベンチプレスの1RMと大胸筋の筋断面積の間に強い相関関係があることが分かる。

高重量と低重量のトレーニングにおいて、高重量トレーニングの方が筋力が向上した研究結果から、たとえ両者の筋肥大効果が同じであっても、将来的に筋力の向上した高重量トレーニングを行った群のほうがより筋肥大する可能性が高い。


高重量のデメリット「トレーニングボリューム確保が困難」

高重量と低重量での筋肥大の違いを比較した実験では、低重量群が10RM3セットのトレーニングを限界まで行った後に、高重量群が3RMのトレーニングを、低重量群のトレーニングボリュームと等しくなるまで行った。低重量群のトレーニングは90秒のインターバルで3セットであるが、高重量群のトレーニングは3分のインターバルを取り、同量のボリュームを確保するために7セットも行っている。このことから、トレーニングボリュームを確保するためには高重量トレーニングはかなりの時間を要するという欠点がある。


まとめ

理論上は高重量と低重量には筋肥大の差はなく、筋肥大はトレーニングボリュームに依存するとされるが、現実において、かなりの低重量で高重量と同等の筋肥大効果を得ようとすることは効率的とは言えない。あくまでも漸進的過負荷の原則に則って、重量オーバーロードを達成する気持ちは持つべきである。高重量、低重量共にメリットデメリットがあり、両方を組み合わせたトレーニングを行うことが最も筋肥大効率を最大化させる。


参考文献

[i] https://tinyurl.com/2eqdffed

[ii] https://tinyurl.com/2kg97bd2

[iii] https://tinyurl.com/2jw5rpp9


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