2022年3月19日 奈良クラブ 0 vs 0 HondaFC 感想

少々煽り気味に書いたプレビューに、奈良クラブが圧倒して0-3で勝つという大胆不敵な予想を立てたが、敢え無くJFLの門番でもあるHondaFCにそれは見事に打ち砕かれ、一方で密かに予想していた通りの展開になってしまった。それは前節の枚方戦と同様に、この試合でも90分間終始HondaFCのペースで試合が進んでいったからだ。

HondaFCの強さに関しては、前々回の枚方戦の感想で書いてあるのでここでは控えるが、相手クラブがいくらHondaFCに対して対策を講じてこようが、それをことごとく局面局面で数的優位を保って打開していくというところが、強さの根源にあるのは間違いない事実であろう。そこに個人の能力も非常に高く、JFLでは抜きん出ているなと、頭一つ出ているなといった感想を、この試合を通じて改めて気付かされた。

それが形になって現れた場面は、19分、HondaFCのビルドアップ時、最終ラインから左サイドへロングスルーパスを見事にトラップして素早く前方を向いた場面と、24分、HondaFCのビルドアップ時、GKから左サイドへ進入してサイドを攻略する時、2度奈良クラブの選手を剥がした場面があったが、この2点がそのことを強く印象付けたプレーだった。

さて、奈良クラブのビルドアップについてだが、最終ラインはCB2人と両SBやCHやIHが状況に合わせてフォローする、前節の滋賀戦とあまり変わりない形態を取っていた。しかし、滋賀戦の前半で見せた、後方からしっかりと繋いで前進していくといった場面はあまり見られなかった。それはHondaFCの前線のプレスが、それほど強度を持って最終ラインへ当たって奪い取るまでには至らなかったものの、確実にパスコースを限定していくプレスを90分間果敢にやり続けられたために、その後、中盤でボールホルダーに対して強く詰め寄られ、しっかりと奪い取られていたからだ。

そのためか、奈良クラブは試合前に設定していたことだと思うが、滋賀戦よりロングボールでの前進を試みる場面が数多くあった。しかし、どうしても後方に重心を置くために、両サイドに展開してもフォローがなく、HondaFCに数的優位を作られ同サイドを圧縮してくるので、サイドラインを割ってしまったり、HondaFCの前線と最終ラインがコンパクトさを保っているので9分、14分、23分、34分他にオフサイドを取られるなど、ほとんど効果的にロングボールでは前進出来なかった。

それでは、奈良クラブのプレスについてだが、CFとIHの前線2人が最終ラインの前に立ってプレスをかけるのは、前節の滋賀戦と同様だが、HondaFCの最終ラインは前節の終盤に見せた3バックでの対応を形成してきた。これにより最終ラインでも数的優位を作り出されたため、HondaFCのプレス回避を止めることが出来ずに、奈良クラブのWGやIHが食いついて空いた中盤のスペースを使われ、前進を許してしまう場面が2分と4分に見られた。しかし、それ以降は奈良クラブも修正して、最終ラインに対してあまり食いつかなくなり、前線2人が数的不利のなかパスコースをある程度限定して、中盤ではボールホルダーに強く詰め寄り、ボール奪取からショートカウンターを仕掛ける場面もあった。それでも、HondaFCは効果的に何本もロングボールでサイド攻略してきたり、奈良クラブ陣内深く前進してライン間に進入され、そかからギャップを付かれてクロスやスルーパスが入り、シュートを打たれる決定的な場面もあったが、そんな時は選手全員が体を張ってゴールを守ったことは本当に心強かった。

この試合を見ると奈良クラブがHondaFCに勝つためには、前回のプレビューでも書いたことだが、ある時間帯だけでもリスクを追うが、前線も最終ラインも前方にアグレッシブに押し出し、インテンシティの高いプレッシングをかけボールを奪う。奪ったらすぐ前線へまっすぐ直線的に攻め上がりボールタッチ少なくシュートを打ってゴールを奪う。いわゆる5秒以内で奪い10秒以内でゴールを目指す戦術だ。これに必要なのはアスリート並みのスピードとゴールハンターの嗅覚を持つ決定力だ。今の奈良クラブにもこの戦術を遂行出来る選手は十分にいる。JFL優勝を目標に掲げるクラブなら必ず必要な戦術オプションになるのではないだろうか。

JFLの門番をホームで倒すことは出来なかった。しかし、負けはしなかった。JFLはまだ2節が終わっただけである。この貴重な勝ち点+1を活かすも殺すも自分たち次第だ。この悔しさをぜひとも次節以降に繋げっていってほしい。

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