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大根煮

えー、しばらくの間お付き合いを願います。

いやぁ秋ですな・・・・とは全く思わない今日この頃なんでございますけれど、もう立秋は過ぎましたから、暦の上ではもうこれ、秋なんですなぁ

とはいえ、スーパーなんかをのぞいてみると、おでんの素なんかもう安売りで出てたりしますでしょ?いやまだ早いなんておもいながらも、なんとなく秋を感じる・・・いや感じさせられるきがしております。

おでんといえば、やっぱり大根、はんぺん、さつま揚げですな。

・・・えー私が好きなだけですけれども。でもお好きな方多いでしょ?卵は?なんていう方もいますけど、卵の黄身を無意識を装って汁に溶かしてぐずぐずにして飲む人はね、これド変態ですからよく見ておいたほうがいいですよ。個人の感想ですがね。

私が一番好きなのは大根なんですよ、この汁が染みて熱々のところをね、からしをちょいとつけてね、口に放り込む、ジュワっと汁がしみだしてきて、大根の香りがふわっとかおる。あー生きていてよかった、心底思ったりしますなぁ。大根なんて安いでしょ?それでここまで幸せになれるんだから安上がりってのはこういうことなんでしょうな。今も昔も家計を助けてきた立役者というわけで。(羽織を脱ぐ)

東京を江戸と申しました時分、神田三河町に善吉という大工が、女房と二人で暮らしておりました

「うーん、うーん…」

「ちょっと、あんた大丈夫?ずっとこの調子じゃないか」

「うるせぇな…夏風邪だって、何回言やわかるんだ…静かに寝かせろってんだよ」

「そんなこと言ったてもう三日だよ?大工がこの調子じゃぁおまんま食い上げだよ」

「嫌なこと言いやがる。病の人間にいうことかね、それが。なんか精のあるもんでも・・・いや、なんにも食う気がしねぇや・・・」

「精のあるもんなんかありゃしないよ。お足だってありゃしないんだからさ。でも、なにも食べないんじゃ治るものも治らないからね…」

女房が困るのも無理はない。怠け者の善一は大工とはいえ、仕事は気分まかせ、それでもって、いい仕事はできりゃあ金なんていらない職人気質ですから、お金が貯まるはずもない。そのうえ病気で寝込んで仕事もできないわけですから、釜の蓋もあきませんな。

女房困って台所を見ると、この間もらった大根が目についた。そうだ、大根なら善吉も食べられるかもしれない!

早速スマホを取り出し、クックパッドを開いてレシピを検索してみると、出るわ出るわ1万を超えるレシピの数々。ただ、出ることは出るんですが、いざ見てみるっていうと、

「だめだねぇ…豚バラ大根だの、鶏ももだの、ゲソだの、大根のほかにもないと作れないものばっかりじゃないか…イカなんて今高いんだからさ、こんなもん買えないよ…何か、大根だけで…そうだ!」

何かを思いついたのか女房、かつおと昆布と酒を使って酒八方出汁をこしらえた。これに、ゆでて少し透明になった大根を放り込んで、醤油を一滴、塩を一つまみ入れてコトコト煮込み始めます。

煮込み始めてから、2時間ほどたちましたでしょうか。鍋から大根を取り出して食べやすい大きさに切ってから、出汁をかけてこれを冷蔵庫に入れて冷やします。

よーく冷えた大根に鰹節をまぶして、

冷たい大根の煮物を拵えた。

「あんた、これなら食べられるだろ。」

「おお、どれどれ…ちょっと味が薄いけど、今はちょうどいいや。あー冷たくていいなこりゃ」

これをたべて休んだ善吉、見る見るうちに回復いたしまして、次の日にはすっかり元気になりました。仕事は相変わらずですが、昨日の大根がよっぽどうまかったんでしょうな、それからというものことあるごとに大根の煮物をリクエストするようになりました。

「な!今日も大根の煮たのにしてくれよ」

「またかい、あんたもすきだねぇ」

「前のは味が薄かったからよ、もっと醤油を入れてよ、んでもって大根だけじゃ寂しいからゲソなんか放り込んでよ。な、どうだ?」

「ゲソはだめだよ、足がでるから。」

…おあとがよろしいようで。


チョコ棒を買うのに使わせてもらいます('ω')