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城山文庫の書棚から029『大洪水の前に』斎藤幸平 2022 KADOKAWA 

2014年にドイツ語で書かれた博士論文がベース。18年には英語版が栄えあるドイッチャー記念賞受賞。本書はこれらを元にコロナ禍を経て大幅に加筆された日本語版。

『資本論』の著者であるマルクスの盲点はエコロジーであるという言説が人口に膾炙して久しい。本書で著者は、マルクスの死後新たに発見された抜粋ノートを詳細に検討することで、彼のエコロジカルな資本主義批判が有する真の射程を読者の前に提示する。
「マルクスの経済学批判の真の狙いは、エコロジーという視点を入れることなしには、正しく理解することができない」とまで著者は断言する。

マルクスのエコロジーが曲解されてきた理由のひとつとして、彼のパートナーであるエンゲルスの存在を斎藤氏は指摘する。マルクスは社会科学でエンゲルスは自然科学という知的分業がなされていたという固定観念から長らく我々はマルクスの環境学に対する造詣を軽視してきた。2人の業績を再評価する世界規模の学術プロジェクトMEGAの分析を通じて、斎藤氏はその呪縛からの解放を試みる。

「大洪水よ、我が後に来たれ!」というグローバル資本家の態度は残念ながらますます支配的になりつつある。現に南アジアのパキスタンやバングラデシュで壊滅的な豪雨と洪水の被害が発生している。大洪水はもはや、旧約聖書のノアの方舟のメタファーではないのである。

12/15に開催するオンライン国際シンポジウムに斎藤幸平さんが登壇します。ユヌス氏に聞きたいことがたくさんあると予定を変更して参加を快諾してくれた斎藤さん。どんな展開になるか楽しみ。下記よりお申込み頂けます。

「ムハマド・ユヌス氏と創る3つのゼロの世界」
https://peatix.com/event/3381322