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読書完走#354『コンセントの向こう側』中筋純 2021

311を風化させないアート展=もやい展のオーガナイザーで写真家の中筋純さん。チェルノブイリに15年、福島に10年通って撮りためた写真と胸を打つ言葉たち。

2011年3月11日。東日本大震災発生の時刻を刺したまま止まったままの時計。並置された10年前と今の、変わり果てた街の姿。一方で何事もなかったかのように美しい自然の風景。

打ち捨てられた水田の跡地には太陽光パネルが敷き詰められ、そこで生まれた電気は首都圏まで運ばれている。あれから10年経った今も、我々の家のコンセントの向こう側には福島の浜通りがあるのだ。

日々憂ふ ふるさとは生者の居らぬ地となりて 御霊の眠る黄泉の世界か 今野寿美雄

事故前は歌などに縁のなかった元原発技師の男が、日々の思いを歌に綴っている。原発事故は現在進行形だ。

中筋さんが後書きに記す通り、放射能という"寝た子”を起こしてしまった人類は、これから途方もない時間を"目覚めた子”と向き合っていかねばならない。我々にその覚悟はあるのか。そのことがずっと問われている。