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城山文庫の書棚から023『ぼくらのリノベーションまちづくり』嶋田洋平 2015年 日経BP社

設計事務所みかんぐみチーフを経て独立し「らいおん建築事務所」を営む嶋田洋平さんはリノベーション設計だけでなくリノベーションまちづくりを得意とする建築家。自らの郷里北九州で上述の清水氏と「小倉家守プロジェクト」を手掛け、事務所を構える東京都豊島区では、「都電テーブル」など街に密着した店舗の設計や経営を手掛ける。
 屋号のらいおん建築は、祖父が実家のある北九州で営んでいた飲食店「らいおん食堂」からもらった名前。お金のことをちゃんと考えて(当たり前なのだけど)建築を作ったり、人やお金が回る仕組みを作ったりするのが好きで得意なのは、祖父母や両親の商売人気質を受け継いだものだという。建築家の仕事も、設計して設計料をもらって終わりでなく、店舗であれば経営の成功にコミットして初めて成功ではないか、設計料も両立に応じた固定額でなく売り上げに応じた歩合制でよいのではないかとビジネスモデルの変革を提案する。
 本書では彼が手掛けた建築やまちづくりのプロジェクトが多数登場するが、特に郷里の北九州で手掛けたメルカート三番街など商店街再生プロジェクトのエピソードが興味深い。また、事務所と住居を構える豊島区雑司が谷では、小さな規模のリノベーション建築プロジェクトを繋ぎあわせ、全体として緩やかなリノベーションまちづくりを実現している。
本書の執筆者には嶋田さんのほかに劇作家の石神夏希さんというゴーストライターがいて、巻末にちゃんとクレジットされているところがよい。