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城山文庫の書棚から064『インフラPPPの理論と実務』著者:E.イェスコム、E.ファーカーソン金融財政事情研究会 2020

欧州を拠点に活躍するプロジェクトファイナンス及びPPP分野の大家の共著をデロイト、JICA、西村あさひ及び長大の専門家が分担・和訳した実用書。官民双方の視点、リスク分析と契約実務まで網羅しPPPの概要を体系的に解説。6部28章で構成され800ページを超える大著。

公共セクターの視点ではPPP採用検討の際に直面する政策的課題を取り上げ、具体のPPPプロジェクトにおける解決策を提示する。また、公共政策フレームワークにおけるファイナンスのアプローチを解説する。あわせて民間事業者側のPPP参画プロセスを示し、双方のリスク分担についても論じている。

PPPは基本的にプロジェクト単位で事業性を評価し投融資が決定されるプロジェクトファイナンス(PF)だ。企業の信用を基に融資するコーポレートファイナンス以上に、事業性の説明責任と金融機関の事業性を判断する能力が問われる。「悪魔は細部に宿る」というPFの格言は、細部まで緻密で複雑な事業の組立が求められるPPPにも同様に当てはまる。

PPPはしばしば民営化と混同されるが、両者は明確に異なるものであると著者は指摘する。PPPではインフラ施設は公共に属し、サービス提供の究極の責任は公共側にある。この混同は我が国でもしばしば見られ、特に水道などのPPPに対する反対の根拠となっている点は留意すべきであろう。