ルールブックに載せられない、ボードゲーム『ウリカイ』のすてきな体験デザイン
バンソウから『ウリカイ』というボードゲームをリメイク出版することになりました。ただいま、予約受付中です。
実は弊社、他のサークルさんからゲームをお預かりして出版するのは初めて。それでもやりたいなと思った理由はいくつかあるのですが、こちらのnoteでは決め手の一つになった「すてきな体験デザイン」についてお話ししたいと思います。
そもそも『ウリカイ』とは
『ウリカイ』はフリマアプリを舞台に、大学生やサラリーマンなどのさまざまなタイプの人になりきってモノを売買し、人生の楽しさを増やしていくボードゲームです。
ゲームの流れを簡単に言うと、モノを使うともらえる「Enjoyポイント」をたくさん集めるのを目的にして、新品のマーケットや他のプレイヤーから中古品を買っていく、となります。そしてゲーム終了時にもっともEnjoyポイントが多かった人が勝ち。
他のプレイヤーから買うときはフリマアプリのように交渉が可能で、値下げ依頼や、自分のこれも安く売るから！など実質的な交換を持ちかけたりできます。
だから正直、ただ勝ちを目指すだけなら、たぶん数学的に最適な動きかたがあるんだと思います。持っているお金と比較して最適な買い物があるはずなので、淡々とそれを選択していけばいいのです。
自然発生するロールプレイとストーリーテリング
ですが、実際に『ウリカイ』を遊んでみると、意外にもすべてのプレイがそうなることはありません。これがすてきな体験につながります。
プレイヤーは、自分が選んだプレイヤーカード（大学生やサラリーマンなど）のロールプレイとストーリーテリングをしてしまうのです。プレイヤーカードに合う買い物をしたくなったり、あるいは買ったものにストーリーを載せて語りたくなったりします。
例えば下のような状態（「年末年始」に、スニーカーを購入して、バスケットボールを出品している）になったら、「大学卒業も近くなってきたし、バスケも卒業しようと思うんですよねー」みたいな語りをしちゃいます。逆にスニーカーを買った時は「運動不足に備えてランニングでも始めようと思って」とか言ってるかもしれません。
そしてたまに他プレイヤーとの会話で勢い余って、合理的でない買い物をしてしまったりも。でも、僕はそれがこのゲームのとっても良いところだと思いました。
もちろんゲームは勝ったら嬉しいものですが、上記のような体験ができると、たとえ勝たなくても「いいプレイができた」と思えるんですよね。ゲームの終わりに自分がしてきた買い物を振り返って、「変な買い物しちゃったな〜」なんて話すのも楽しいです。それが"買い物"という、人の人生をかたち作る体験を見事にゲームに落とし込んだ『ウリカイ』ならではのおもしろさになります。ぜひとも、もっと多くの人に遊んでもらいたいと思いました。
実際に、オリジナル版をプレイされた方はそういう体験をされていますね。
ウリカイ プレイ中
— ゆい⛅寺ボド (@you_i7676) May 26, 2019
部屋の中に木琴しか置いてない星野源です。 pic.twitter.com/hhozRkJwKc
『ウリカイ』
— 田邉安彦 (@nyapolon) May 31, 2019
流行りのフリマアプリ的なゲーム。買って売って楽しんだもの勝ちw
時間足りなかったけど異様に楽しかったぞこれ…！割と自由に値切ったり、まとめ売りしたり。
これがまた説明書に書いてない予想だにしない展開やドラマが生まれる！
売り飛ばした｢はにわ｣がなぜかまた欲しくなって笑う pic.twitter.com/QP24C9J7Vw
同じく #ゲームマーケット2019春 の #ウリカイ 💰 人生はお金じゃない、楽しんだもの勝ちだというフレーバーが好き✨ 自然とおじいちゃんや学生的なロールプレイも生まれて楽しかった〜👴 おじいちゃんがダンベルに挫折しては買いなおす流れ好きｗ pic.twitter.com/DkV5IJlJwg
— 浦野 昌平 (@s_runoa) June 2, 2019
行動を喚起する、ちょっと珍しいデザイン
では、なぜこうなるのか。それはゲーム中の場に秘密があると僕は思っています。たとえば『ウリカイ』ではゲームのはじめに下記の画像のように場を作ります。
画像でみるとあまり感じないかもしれませんが、実際に場に作ってみると結構すごいことになります。20枚のユニークなカードがずらりと並ぶのです。これ、あんまりこのタイプの他のゲームではないデザインな気がします（THE カードゲームな感じのデッキ構築系っぽい）。
セットアップもちょっと大変だし、プレイヤーがゲームの始まりで目にする情報量がかなり多くなります。ゲームが進むと新しい品物が補充されたり、各プレイヤーが出品している品物もあって、もっと多くなることも。
ゲームデザインのセオリー的には避けたくなるところですが、しかしそれが逆にプレイヤーがつい語りたくなる材料になっていると思います。
一般的なゲームの適度に絞られた選択肢よりも、ある種やりすぎている『ウリカイ』の選択肢の示し方は、プレイヤーに「こんなたくさんの中から自分が選んだ」という自覚をもたらしているのではないかなと。
だから今回のリメイクにあたってルールの見直しをしていた時、マーケットに並ぶカードを減らすのも検討したのですが、結果的にはオリジナル版と同じ数にしました。それでよかったと思います。リメイク全体を通しても、遊びやすくするための細かい調整（カードの効果いじるとか）はしましたが、オリジナルの体験を損ねないようにしました。
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ルールブックには、カードの動かしかたや、どうすれば勝ちかというオペレーションは書けるのですが、こういう風にできると楽しいよみたいな話は載せられない、というか書いてもわかってもらいにくいんですよね（わざとらしいし）。
でもいちばん遊んだ人に体験してほしいのはそこです。それが説明せずとも、遊べば自然とわかるようになっている『ウリカイ』は素晴らしいゲームだと思います。
というわけで『ウリカイ』、そんな最高なボードゲームなのでぜひ遊んでみてください！！ご予約いただくと送料が無料になります。
ナイスプレー！