サラダマスターの「気になる」デザイン
先日、発売した新作ボードゲーム『サラダマスター』が、ありがたいことに多くの方から大変好評いただいています。
"野菜で遊ぶ"というお勉強チックなテーマなのですが、「ゲームとして普通に面白い」「運と駆け引きのバランスがある」などお声いただいています。これ、実は狙い通りです。
本noteでは、そんな遊んだ人をいい意味で裏切るために『サラダマスター』に組み込んだ「気になる」をつくるゲームデザインについてお話しします。
※4月24日に開催した「noteボドゲメイカーズフェス」でお話しした内容のnote版です。
そもそもサラダマスターってどんなゲーム?
『サラダマスター』は”野菜不足な現代人のためのボードゲーム”です。
ルールは、もっともお題に合う成分をもった野菜カードを手札から出していくだけ。ただし、スタンドに立てた自分の手札の野菜は名前しか見えないので、知ってるつもりには注意が必要になります。
野菜や果物、穀物などが描かれたカードは全部で60種類。成分のデータは文部科学省が発表した日本食品標準成分表2020年版から引用しています。ちなみにイラストも全部、100gあたりの量です。
『サラダマスター』は、遊べば遊ぶほど野菜の「知識」不足と野菜への「興味」不足が解消され、野菜を食べるきっかけになるヘルシーなゲームになっています。
サラダマスターが生まれたきっかけ
こう言うと真面目っぽいゲームに見えるかもしれないんですが、生まれたきっかけは僕自身の不真面目な生活です。
みなさんにも少し身に覚えがあると思うんですが、こういうご時世ですから身体を動かす機会が減って、なんとなく体調が悪いなという日が多くなりました。
そこで僕は運動を始めよう!という体育会系なアプローチでなく、せめて野菜を食べようという草食系な方向に舵を切りました。
それですこし野菜に興味が向いて、調べたりしているうちに日本食品標準成分表にいきあたり、豊富すぎるデータを眺めていて面白いなーと思い、その数字を使ってゲームを作ろうかなという気になりました。
※日本食品標準成分表2020年版より
それからいろいろ試行錯誤してできたのが、『サラダマスター』です。野菜自体は食べたことがあっても、その成分までは知らない人が多いので、プレイすると驚きながら自然と野菜に興味をもてるゲームになりました。
サラダマスターの「気になる」デザイン
『サラダマスター』はそういう経緯でできたゲームです。だけど「野菜のデータに触れてもらう」が目的というだけなら、先に説明したように自分の手札が見えない必要は別にありません。手札の野菜の成分は全部見えていて、お題に沿ってカードを出すだけでも、いちおう成立します。
だけど、インディアンポーカーみたいに自分のカードは見えないルールにしました。そのほうが、野菜のことが気になるし、面白いからです。
仮に全ての数値が見えていたとしたら、お題に対して手札の最適解はひとつです。それだと、野菜が「気になる」タイミングがありません。淡々と大きな、あるいは小さな数字を出すだけです。
だから自分の手札から一番いいものを出したいけど、どれがいいのか分からない、ならちょっと頭を使って考えてみるしかない…そんな「野菜が気になる」体験をしてもらいたくて、『サラダマスター』はこのルールになりました。
自分の手札の野菜について想像力をはたらかせ、他の人の手札から推理をする必要があるデザインです。
そしてそういう過程を経るからこそ、負けた時に悔しいし、勝った時により嬉しいです。自分の頭を使ってうまくいった!という経験ができるゲームになっています。
上記は、『サラダマスター』に限らずミヤザキがゲームを作るときに意識しているポイントでもあります。セオリーはあっても、最適解がないからこそ、プレイヤーが自分の頭で考えて取り組む価値のある課題(ゲーム)になりうるのです。最適解があったら、誰がやっても同じ(=自分がやる必要がない)ゲームになってしまいます。
だから僕はそういうゲームが自分で遊ぶ時でも好きですし、もっと増えたらいいなと思ってます。
というわけで『サラダマスター』は、「気になる」デザインと、栄養たっぷりのゲームになってます。お見かけの際はぜひ、遊んでもらえたらうれしいです。
ナイスプレー!