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きみのおめめ 黄色い恐竜 #1

くしゃくしゃになったスモックを広げると、あたらしく黄色い勲章が増えていた。
はじめて右そでに赤色の絵具を付けて帰った日、何を使ったら取れるのやらと慌てたけれど、持ち帰るたびにあるどこか艶やかなそれは、夢中で色と遊んだ時間が垣間みえた。

今日は何をかいたのかを聞くと、
「かいてないよ、つくったんだよ」
と、首を傾げて思わせぶりな顔をする。ひとつに結んだ髪の毛が揺れる。肩より数センチのびた髪は、結ぶと毛先がゆるく流れる。
何を作ったかたずねると、つま先で跳ねながら「恐竜!」と答えた。
頬にかかったままの細い1本を、ちいさな耳にかけながら、どんな恐竜?と聞く。
あのね、たくさん段ボール貼って、ローラーでころころ黄色くして、と、止まらない言葉を拾う。

右そでの赤い絵の具は、水色のスモックにうすく残っている。
肩に付いていた黄色い絵具は、水につけるとふわりと表面が溶けて水面に霧の幕がかかる。すぐに消えたそれを指で追いかけながら、明日、牛乳パックと段ボールで今日より大きくなるらしい黄色い恐竜はどんな姿をしているのかと思いを馳せた。

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